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第3章 砂糖を湯煎で溶かしたら55%
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しおりを挟む治療は順調に進んでいる。尾鷹の家に来てから二週間が経過していた。
ひとりで挑んでいたときよりも明らかに調子が良く、肌ツヤもいい。質の良い料理や睡眠、無理のない制限が郁哉には合っていたようだ。
なにより甘いものを無闇に摂取しようと思わなくなっていた。
依存症の完治は人によって様々だが、尾鷹に提示された目安は約八週間。自主的に行なっていた分も合わせ、四週目が過ぎていた。丁度折り返し地点といったところだろう。
(あと四週間も世話になってていいのかな……)
互いにひとりで外出することも増えたが、尾鷹のプライベートを奪ってしまっているようで、郁哉は申し訳なく思っていた。
毎日ソファーで眠る尾鷹が逆に身体を壊してしまうのではと心配にもなってしまう。
「那津、話があるんだけどいい?」
昼間出掛けていた尾鷹が戻ると、郁哉は今後の相談をするために声を掛けた。
疲れたような顔をする尾鷹を見て、やはりそろそろ自宅に戻ろうと考えていた。
「話? 嫌だ」
「ちょっ! まだなにも言ってないじゃん!」
「まだ駄目。油断は禁物って言葉知らないの?」
まるで郁哉の考えなどお見通しだと、先手先手で言われてしまう。
「知ってるよ! レシピも大分溜まったし、中毒症状も今なら抑えられてる」
「それが油断だって言ってるの。折角時間掛けて治療しているのに、ぶり返したらもっと大変でしょ。俺に任せたのならいうこと聞いて」
話は終わりと尾鷹は背を向ける。
「だって……心配なんだ。那津のほうが倒れるかもって……」
一度背を向けた尾鷹が振り返る。その面差しは驚きに満ちている。
「俺の心配?」
「いやほら、那津のベッド俺が使ってるし、ちゃんと寝れてないのかなって……」
ソファーは確かに大き目だが、座るために特化したものだ。寝るには些か硬過ぎる。クッション性の優れたベッドで眠るのとは訳が違う。
「ふ~ん。じゃあ俺も今日からベッドで寝る」
「ええっ!?」
「問題でもある?」
問題はない。あるのは心配事だ。
俺も……ということは一緒にベッドを使うということだ。
尾鷹のマンションに来てから二度キスをした。一度目は郁哉から、二度目は尾鷹から。それ以外は触れることもなく過ごしている。
今は尾鷹を信用している郁哉だが、心配なのは郁哉のほうかもしれない。
心身共に安定しているからこそ、今まで目を向けられなかったことができるようになる。身体も脳も正常に戻ってきている証拠だ。
それは嬉しい兆候だが、最近どうにも下半身事情が活発で困っていた。
ここ三日ほど人様の家だというのに、寝る前に声を殺し立て続けに処理を行なっていたのは、尾鷹に絶対知られてはならない営みだ。
「郁哉、問題あるの?」
怪訝な顔で郁哉に問い掛ける尾鷹に「いえ、ないです……広いですし……」と返すのがやっとの郁哉だった。
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