Sugar & Cacao〜甘さの比率〜

そら汰★

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第6章 積もる砂糖は雪のよう88%

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 細い小道を進む車の窓から景色を眺めると、郁哉が去年訪れたときよりも田畑が減り、分譲住宅が増えたような気がする。幼い頃から過ごしてきた故郷も、時間と共に変わるのだな……と、もの寂しさを覚える。
 曲がりくねった坂道を登ると雑木林が脇に控え、目前に周囲とは異なり変わらず佇む古い民家が見えてきた。
 瓦屋根の平屋は広い敷地にどんと腰を据えている。物置小屋には農作業用の軽トラックとトラクターが並び、壁に鍬やシャベルなどが出番を待ち侘びひっそりと陳列している。
 祖父が健在の頃は農家で、今は家族が食べられる分だけ兼業で農作業をしている。

「こんな田舎で驚いた?」

 車から降り辺りを見渡している尾鷹に、育った場所を見られ少し恥ずかしさを感じる。
 東京のように利便性とは掛け離れ、時代遅れだときっと思われているはずだ。

「ああ、想像とは違った。けど、郁哉が真面目で天然なのは、綺麗な場所と空気で育ったからなんだなって。気持ちがいいな~。俺の療養にはもって来いだね」

 まさかそんな風に言われるとは思わず、郁哉は驚きに目を拡げてしまう。白い息を吐きながらニコリと微笑まれると、この場所を気に入ってくれたことに、嬉しさと照れ臭さに顔が熱くなる。

「あ~いらっしゃい! 遠くからようこそ~」

 陽気な明るい声で出迎える母の姿に自然と笑みが零れる。
 東京に出る前までは、母の小言が煩わしくて堪らなかった。なにか言われる度に腹を立てていたはずなのに、今は優しくしようと心から思う。
 それは実家から離れ苦労を知り、両親のありがたみを嫌というほど実感したからだ。

「初めまして。ご迷惑お掛けしますが、暫くお世話になります」
「気にしないでゆっくりしてって! へぇ~東京は凄いねぇ~。こんな俳優さんみたいな人、ここらじゃ見ないよ~」

 乙女のようにはしゃぐ母に、尾鷹は普段見せない礼儀正しさでキラキラとした紳士的なオーラを放っている。

「か、母さん! 浮かれ過ぎだよ!」
「だってさぁ、郁ちゃんとはどうにもねぇ」
「はぁ……平凡ですけど貴方の息子です。こちらが……あっ……えっと……」

 紹介しようとして言葉に詰まる。

(友達でいいのか? 同居人? ……セフレ……ぐはっ! 言えねぇじゃんかぁ~~!!)

 しっくりする表現にひとり慌てふためいていると、尾鷹が郁哉に代わり自己紹介を始めた。

「尾鷹那津です。先日は突然七瀬が押し掛けて驚かせました。本来なら自分が来るべきでしたが……」
「いえいえ、もしろこっちがお礼しなきゃねぇ。七瀬さんもその説はありがとうね」
「とんでもないですよ。しかし……私までお世話になって本当によろしいので?」
「構いやしませんよ。部屋だけはたんとあるんで。それに娘も帰って来ているんで、色々教えてやってください」

 母の最後の言葉に郁哉は硬直した。
 なるべく鉢合わせになることを避けていたが、確認しそびれていたのだ。
 青ざめる郁哉に追い打ちを掛けるように、それは嵐のようにやって来た。
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