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そら汰★

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 森永と別れ中庭から校門を抜け坂道を下っていると、珍しい人物に声を掛けられた。

「こんにちは。棉紅利尚雪君」
「げっ! チェリーじゃん」
「チェリー? それ、どういう意味なの? いくら根暗な僕でも、名前ぐらいあるんだけど」
「ああ、悪い……蒼海。まさかお前に声掛けられるとは思っていなくて……思わず?」

 テヘッと舌を出し悪戯っ子のようにチェリーボーイ発言を有耶無耶にさせると、蒼海佳月は首を傾げていた。
 前髪とメガネで隠れた表情は相変わらず読み取れない。

「てか、なにしてんの? もしかして待ち伏せ? 告白なら受付中よ♡」
「へぇ、それは是非立候補したいね。君、彼女居なかったけ?」
「居たら告白の受付なんてしないだろ。振られたんだよ」
「ああ、それはお気の毒さま。けど納得した。最近の棉紅利尚雪君は、今日の放課後までどんよりしていたのに、ずいぶんスッキリ顔だから、どうしたのかなって興味が湧いていたんだ」

 先ほどまで落ち込んでいた気分が、蒼海に抉られてもなんとも思わない。どうやら俺は完全に復活できたようだ。
 それよりも蒼海の観察眼に驚いてしまう。なにも見ていないようで、意外とクラスを傍観しているらしい。

「お前って他人に興味なさそうなのに……てか、俺そんな酷かった?」
「まぁ人に関わるの面倒だし。棉紅利尚雪君はそんな僕が見ても、梅雨の湿気みたいにジメジメな空気だった」
「なんだよその表現。まぁ、吹っ切れたっていうかさぁ。森永って知ってるか? さっきたまたま会って励まされて。けど、その森永陽向が原因だったんだけど……」

 経緯を聞いた蒼海は、お腹を抱えてプルプルと震えていた。
 せめて声を上げて大笑いして欲しいところだ。

「……本命に励まされて元気出るって、棉紅利尚雪君はドMなの?」
「ち、ちげーよっ! てかさ、フルネームで呼ぶなよ。尚雪でいいし……」
「恥ずかしいし、雪ちゃんって呼ぶ。女装癖あるしお似合いだよ」
「雪ちゃんのが恥ずいわっ! 女装癖もねぇよ!」

 あれ……? こいつ滅茶苦茶ノリいいじゃん。
 自然と会話をしていることに驚く。自分の周りには絶対に居ないタイプの人間だ。

「落ち込んでる雪ちゃんも儚くて良かったけどな。折角慰めようと思ったのに。そっか、森永陽向にね……残念」
「残念って。なんだぁ~? また熱烈なキスでもして慰めてくれたのか?」
「して欲しいの?」

 そう言うと、蒼海は自身の唇を舐め口角を上げた。
 艶かしく濡る肉厚の唇。外見とはそぐわない野性味を帯びた口付け。
 フラッシュバックする濃厚なキスに、ズクッと下肢に重みを受けた。
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