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バイトが終わると裏口に出迎えるように双子がいるのが当たり前の日常になっている。
「きっと雪ちゃん、新しいバイト君にイジメられるんだよ」
「僕達も一緒に働こうか?」
「イジメられないし! 一緒に働きたくないし!」
バイト終わりに夕飯を一緒に食べようと相談した訳ではないが、こうして近くのファミレスで過すのが定番だ。
「そういやさ、佐藤がお前らの関係不思議がっていたぞ。バレても知らねぇからな」
今日佐藤が訝しげに双子を見ていたことを伝えるが、動じる様子は見られない。店長はすでに二人のことをある程度知っている様子だったが、佐藤にバレたらややこしくなりそうで冷や冷やしているのだ。
「ふーん。佐藤君って僕達に興味ないし平気だよ。バレるようなことはしていないつもりだし。それより雪ちゃんの浮気が心配で仕方がない」
「目を光らせていないと尚君、予測できないことするからね」
「俺ほど分かりやすい人間居ねぇだろ。一体なにを見て言ってんだ。真面目に働いているだろ。それに……浮気って……」
ブスッとしながら俺に掛かった浮気疑惑を遠回しに否定するように言い、ごまかすようにパスタを口に放り込む。
こういう話は正直あまりしたくはない。俺の空気を感じ取ったのか双子はそれ以上追及してこない。
ただ面白楽しく友人と過ごす日常が心地いい。肌を重ねることもなく、恋愛について考える必要もない。精神的な面でホッコリしてる自分が確かにいるのだ。
気楽で制約のない関係。このままでもいいのでは……と、双子達の変わりない態度に正直思っていた。
***
「初めまして。水河冬馬と言います」
開店前のミーティングで今日から新しく一緒に働くスタッフ紹介があった。フロアーに良く通る声が響いた。
「星条高校の二年生で十七歳です。至らないこともありますがよろしくお願いします」
ハキハキと自己紹介を簡単に済ませた水河冬馬が折目正しくお辞儀をすると、あちこちから拍手が湧いた。
見た目はカッコいいというより華やかで、柔らかな笑顔がどこかほっとする印象を与えてくれる。身長は双子とさほど変わらずスラリとしており、優男でも骨太なのか男らしく見える。
経験者だけあって一度教えたことは卒なくこなしてしまう姿は男の俺でも惚れ惚れする。できる男はなにをしても様になるものだ。水河冬馬の即戦力は今後のことを考えるとありがたい。
店長曰く俺とセットでカフェにマッチするとのことだ。どうマッチするかと問えば「オーナーと新人バイト君みたいで微笑ましいよね」と、どちらをどう指しているのか謎な回答だった。
「棉紅利君教え方上手だし優しいから良かった。来る前まで凄くドキドキだったんだよ」
「褒めてもスパルタでいくぞ? でもすげぇ助かった。最近メチャ忙しくって死にそうだったんだ」
「そうなんだ。今日はまだ落ち着いているほう?」
「流石にこの時間はまだまし。もうちょいしたら……ヤバイよ?」
ウゲーっと顔を歪める俺に冬馬は微笑みを向けてくる。その笑顔は辺り一帯に花びらが舞い散る錯覚と共に、早くも女子のハートを鷲掴みだ。
「なら今のうちに色々教えて? 棉紅利君のことも併せて」
「おう! てか……俺のことはどうでもよくね?」
「きっと雪ちゃん、新しいバイト君にイジメられるんだよ」
「僕達も一緒に働こうか?」
「イジメられないし! 一緒に働きたくないし!」
バイト終わりに夕飯を一緒に食べようと相談した訳ではないが、こうして近くのファミレスで過すのが定番だ。
「そういやさ、佐藤がお前らの関係不思議がっていたぞ。バレても知らねぇからな」
今日佐藤が訝しげに双子を見ていたことを伝えるが、動じる様子は見られない。店長はすでに二人のことをある程度知っている様子だったが、佐藤にバレたらややこしくなりそうで冷や冷やしているのだ。
「ふーん。佐藤君って僕達に興味ないし平気だよ。バレるようなことはしていないつもりだし。それより雪ちゃんの浮気が心配で仕方がない」
「目を光らせていないと尚君、予測できないことするからね」
「俺ほど分かりやすい人間居ねぇだろ。一体なにを見て言ってんだ。真面目に働いているだろ。それに……浮気って……」
ブスッとしながら俺に掛かった浮気疑惑を遠回しに否定するように言い、ごまかすようにパスタを口に放り込む。
こういう話は正直あまりしたくはない。俺の空気を感じ取ったのか双子はそれ以上追及してこない。
ただ面白楽しく友人と過ごす日常が心地いい。肌を重ねることもなく、恋愛について考える必要もない。精神的な面でホッコリしてる自分が確かにいるのだ。
気楽で制約のない関係。このままでもいいのでは……と、双子達の変わりない態度に正直思っていた。
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「初めまして。水河冬馬と言います」
開店前のミーティングで今日から新しく一緒に働くスタッフ紹介があった。フロアーに良く通る声が響いた。
「星条高校の二年生で十七歳です。至らないこともありますがよろしくお願いします」
ハキハキと自己紹介を簡単に済ませた水河冬馬が折目正しくお辞儀をすると、あちこちから拍手が湧いた。
見た目はカッコいいというより華やかで、柔らかな笑顔がどこかほっとする印象を与えてくれる。身長は双子とさほど変わらずスラリとしており、優男でも骨太なのか男らしく見える。
経験者だけあって一度教えたことは卒なくこなしてしまう姿は男の俺でも惚れ惚れする。できる男はなにをしても様になるものだ。水河冬馬の即戦力は今後のことを考えるとありがたい。
店長曰く俺とセットでカフェにマッチするとのことだ。どうマッチするかと問えば「オーナーと新人バイト君みたいで微笑ましいよね」と、どちらをどう指しているのか謎な回答だった。
「棉紅利君教え方上手だし優しいから良かった。来る前まで凄くドキドキだったんだよ」
「褒めてもスパルタでいくぞ? でもすげぇ助かった。最近メチャ忙しくって死にそうだったんだ」
「そうなんだ。今日はまだ落ち着いているほう?」
「流石にこの時間はまだまし。もうちょいしたら……ヤバイよ?」
ウゲーっと顔を歪める俺に冬馬は微笑みを向けてくる。その笑顔は辺り一帯に花びらが舞い散る錯覚と共に、早くも女子のハートを鷲掴みだ。
「なら今のうちに色々教えて? 棉紅利君のことも併せて」
「おう! てか……俺のことはどうでもよくね?」
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