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第1幕 物知り王子と無知な俺 〜高校一年生編〜
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いつものように玄関を開け、今日も誰も居ない家の中に声を掛ける。普段と異なるのは、背後からお帰りの声がすること。振り向き俺も悠斗へお帰りと声を掛ける。
ただちょっとしたことなのに気持ちが浮上する。この歳だ。流石に泣くほど淋しいと思うことはなくなったが、誰かが居るのはやはり心強い。
「夕飯は俺が作るから、瀬菜はお風呂掃除と洗濯物取り込んできたら?」
「へーい」
本気でお前ってばおふくろだな!
学校ではそつなくなんでもできる爽やか王子だけれど、小さい頃から俺の身の回りを世話してくれる。だからなのか母親みたいな兄のような、家庭的なイメージのほうが強い。
どちらかというと、俺が王子で悠斗が執事みたいなほうがしっくりくる。見た目とか振る舞いとかは置いておいて……。
風呂掃除を鼻歌交じりで終え、取り込んだ洗濯物を自室で畳みながら考えていると、お米の炊けた匂いと醤油やだしのいい香りがしてきた。
おぉ!
いい匂いー♪
和食って言っていたけど、献立なににしたんだろ?
俺、手伝わなくてもいいのかな?
洗濯物を猛ダッシュで畳み、クローゼットやらバスルームに片付ける。気になる献立を聞こうと手伝いを口実にキッチンへと急いで向かった。
「すげーいい匂い! 二階まで漂ってきた! なにか手伝う?」
「もうすぐできあがるから、お箸とか用意してご飯よそってくれる?」
「了解~♪ 献立ナニナニ?」
「スズキの塩焼きと、シジミの味噌汁それから肉じゃがと、きんぴらごぼうと小松菜の胡麻和え」
「うそっ‼︎ こんな短時間で? そんな何品も作ったの⁉︎」
「簡単なものばかりだよ?」
「マジで料理の神様!」
「言い過ぎだよ。……はい、それじゃ冷めない内に食べよ」
悠斗が作った料理はどれも美味しく、口に入れる度美味い美味いと連呼していた。
「今日は俺、滅茶苦茶幸せ~♪」
「良かった」
「まぁ、村上にはちょっとムカついたけど!」
一日を振り返り、ワックで会ったクラスメイトを思い出しフツフツとする。けれど悠斗に使用方法をレクチャーしてくれたのは正直助かった。
……あれ?
俺が今食べたものはなんなんだ?
「あのさ悠斗、村上といえば……皮剥き器渡すの忘れていたんだけど……」
きんぴらごぼうをぼんやりと見つめ言う。
「……あぁ、あれは明日の下ごしらえに使うよ」
目の前にあるのはきんぴらごぼうのはずだ。
俺は首を傾げ、悠斗の意図に疑問を抱く。
「……きんぴらごぼう作っちゃったのに?」
「うん、すっかり忘れてて……ゴボウ以外にも使い道あるみたいだし」
「ふーん。そうなんだ。ならあとで持って来るな?」
悠斗の回答は良く分からなかったが、明日も日曜日でお休みだ。今日は泊まって行くと言う悠斗に先に風呂を勧める。
皮剥き器とドレッシングをほかに使うと言うので、忘れないうちにキッチンのテーブルの上に置いておくことにした。
ただちょっとしたことなのに気持ちが浮上する。この歳だ。流石に泣くほど淋しいと思うことはなくなったが、誰かが居るのはやはり心強い。
「夕飯は俺が作るから、瀬菜はお風呂掃除と洗濯物取り込んできたら?」
「へーい」
本気でお前ってばおふくろだな!
学校ではそつなくなんでもできる爽やか王子だけれど、小さい頃から俺の身の回りを世話してくれる。だからなのか母親みたいな兄のような、家庭的なイメージのほうが強い。
どちらかというと、俺が王子で悠斗が執事みたいなほうがしっくりくる。見た目とか振る舞いとかは置いておいて……。
風呂掃除を鼻歌交じりで終え、取り込んだ洗濯物を自室で畳みながら考えていると、お米の炊けた匂いと醤油やだしのいい香りがしてきた。
おぉ!
いい匂いー♪
和食って言っていたけど、献立なににしたんだろ?
俺、手伝わなくてもいいのかな?
洗濯物を猛ダッシュで畳み、クローゼットやらバスルームに片付ける。気になる献立を聞こうと手伝いを口実にキッチンへと急いで向かった。
「すげーいい匂い! 二階まで漂ってきた! なにか手伝う?」
「もうすぐできあがるから、お箸とか用意してご飯よそってくれる?」
「了解~♪ 献立ナニナニ?」
「スズキの塩焼きと、シジミの味噌汁それから肉じゃがと、きんぴらごぼうと小松菜の胡麻和え」
「うそっ‼︎ こんな短時間で? そんな何品も作ったの⁉︎」
「簡単なものばかりだよ?」
「マジで料理の神様!」
「言い過ぎだよ。……はい、それじゃ冷めない内に食べよ」
悠斗が作った料理はどれも美味しく、口に入れる度美味い美味いと連呼していた。
「今日は俺、滅茶苦茶幸せ~♪」
「良かった」
「まぁ、村上にはちょっとムカついたけど!」
一日を振り返り、ワックで会ったクラスメイトを思い出しフツフツとする。けれど悠斗に使用方法をレクチャーしてくれたのは正直助かった。
……あれ?
俺が今食べたものはなんなんだ?
「あのさ悠斗、村上といえば……皮剥き器渡すの忘れていたんだけど……」
きんぴらごぼうをぼんやりと見つめ言う。
「……あぁ、あれは明日の下ごしらえに使うよ」
目の前にあるのはきんぴらごぼうのはずだ。
俺は首を傾げ、悠斗の意図に疑問を抱く。
「……きんぴらごぼう作っちゃったのに?」
「うん、すっかり忘れてて……ゴボウ以外にも使い道あるみたいだし」
「ふーん。そうなんだ。ならあとで持って来るな?」
悠斗の回答は良く分からなかったが、明日も日曜日でお休みだ。今日は泊まって行くと言う悠斗に先に風呂を勧める。
皮剥き器とドレッシングをほかに使うと言うので、忘れないうちにキッチンのテーブルの上に置いておくことにした。
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