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第9幕 王子と王子
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紙の束とかファイルじゃないの?
とても軽いよ?
それに……とても長いしサラサラ……。
「先輩……これ紙違いでは……」
「うんうん。かみはかみでも、髪違い!」
「なんだよ! 親父ギャグ? てか、嫌だよ!」
「えーー酷い! なんでもしてくれるって言ってたじゃん! ほら、隣の会長部屋使っていいから早く早く~♪」
先輩は俺を無理矢理隣の部屋に押し込み「十分して出てこなかったら、僕は痴漢になる」と、メールの文面以上に気持ちの悪いことを言っていた。
渡されたのは女子の制服と、黒髪ロングのウイッグ、それからまたもや女性用の清楚な下着。
俺、女装は封印したんだけどな……。
着替えをするまで返してもらえそうにない。
深いため息を漏らし部屋を見渡す。この部屋には入ったことがない。生徒会長専用というだけあって、重圧な木製のデスクと豪華な革張りの椅子が鎮座している。その横にはコート掛けがあり、閉められたブラインドから薄っすらと昼の日差しが差し込んでいる。
着替えをしながら、なんとなく視界に入ってきたブルー色。久しぶりの青い色。瞳を広げその深い青い毛糸を見つめ固まってしまう。
ブルーマリーヌ……。
なんでここにあるんだ。
間違えるはずがない。それは俺が悠斗に贈った誕生日プレゼント。そういえば、事故に遭ってから、悠斗がしているのを見たことがなかった。そっと触れ胸に抱きしめ顔を埋める。
お前も俺と同じだな……。
悠斗のところへ行けないんだな……。
自分と同じように置き去りにされた持ち主不在のマフラー。青い色が涙を流しているように、悲しい色に見えてしまう。悠斗の首に巻かれて初めてその色は輝くのだ。急いで着替えを済ませ、マフラーを片手に部屋を出る。
「先輩……これ……!」
「わぁ~、姫乃ちゃん可愛い~♡ あ、それね? 生徒会室にずっと置かれていて、誰のか分からないから預かっていたんだよ」
生徒会に保管されていたのは幸運だ。
ほかで行方不明になっていたら、二度とこうして戻って来なかったかもしれない。
「コレ、悠斗のなんだ。俺持って帰っていい?」
「一応みんなに確認したんだけどな。それも覚えていないのか……。綺麗な青色だよね。鑑賞用に掛けておいたんだ。そっか王子のか……なら僕にくれない?」
「これは流石にダメ! ラビたんだって本当は返して欲しいんだ!」
「えーー! まぁ、いっか……それよりも、その格好似合ってるね♪ 折角だしお化粧もちょっとしよう」
先輩の好きなようにされながら、女子高生に変身していく。
てか、制服どこで入手したんだよ……。
俺にこれさせてなんの意味が?
疑問が増えるが突っ込むのが面倒で、眉間にシワを寄せながら大人しくしていると、リップを塗り終えた先輩は満足気に自画自賛していた。
「うんうん。僕、手先も器用♪ 自分色に仕上げるのもまた一興だねぇ~♪」
「はぁ……楽しそうでなによりです」
「ほらほら、ちょっと立ってみて?」
言われた通りにする。
悠斗とは少し違うが、先輩も言ったら聞かない相手だ。
「いいね~クルってしてみて。うんうん、姫乃ちゃん再来~♪ 可愛い~♪」
パシャパシャと、何度かカメラを向けられ楽しそうにはしゃぐ先輩の姿が可笑しくて、こんな格好だが俺も久々にお腹を抱えて笑うことになった。
とても軽いよ?
それに……とても長いしサラサラ……。
「先輩……これ紙違いでは……」
「うんうん。かみはかみでも、髪違い!」
「なんだよ! 親父ギャグ? てか、嫌だよ!」
「えーー酷い! なんでもしてくれるって言ってたじゃん! ほら、隣の会長部屋使っていいから早く早く~♪」
先輩は俺を無理矢理隣の部屋に押し込み「十分して出てこなかったら、僕は痴漢になる」と、メールの文面以上に気持ちの悪いことを言っていた。
渡されたのは女子の制服と、黒髪ロングのウイッグ、それからまたもや女性用の清楚な下着。
俺、女装は封印したんだけどな……。
着替えをするまで返してもらえそうにない。
深いため息を漏らし部屋を見渡す。この部屋には入ったことがない。生徒会長専用というだけあって、重圧な木製のデスクと豪華な革張りの椅子が鎮座している。その横にはコート掛けがあり、閉められたブラインドから薄っすらと昼の日差しが差し込んでいる。
着替えをしながら、なんとなく視界に入ってきたブルー色。久しぶりの青い色。瞳を広げその深い青い毛糸を見つめ固まってしまう。
ブルーマリーヌ……。
なんでここにあるんだ。
間違えるはずがない。それは俺が悠斗に贈った誕生日プレゼント。そういえば、事故に遭ってから、悠斗がしているのを見たことがなかった。そっと触れ胸に抱きしめ顔を埋める。
お前も俺と同じだな……。
悠斗のところへ行けないんだな……。
自分と同じように置き去りにされた持ち主不在のマフラー。青い色が涙を流しているように、悲しい色に見えてしまう。悠斗の首に巻かれて初めてその色は輝くのだ。急いで着替えを済ませ、マフラーを片手に部屋を出る。
「先輩……これ……!」
「わぁ~、姫乃ちゃん可愛い~♡ あ、それね? 生徒会室にずっと置かれていて、誰のか分からないから預かっていたんだよ」
生徒会に保管されていたのは幸運だ。
ほかで行方不明になっていたら、二度とこうして戻って来なかったかもしれない。
「コレ、悠斗のなんだ。俺持って帰っていい?」
「一応みんなに確認したんだけどな。それも覚えていないのか……。綺麗な青色だよね。鑑賞用に掛けておいたんだ。そっか王子のか……なら僕にくれない?」
「これは流石にダメ! ラビたんだって本当は返して欲しいんだ!」
「えーー! まぁ、いっか……それよりも、その格好似合ってるね♪ 折角だしお化粧もちょっとしよう」
先輩の好きなようにされながら、女子高生に変身していく。
てか、制服どこで入手したんだよ……。
俺にこれさせてなんの意味が?
疑問が増えるが突っ込むのが面倒で、眉間にシワを寄せながら大人しくしていると、リップを塗り終えた先輩は満足気に自画自賛していた。
「うんうん。僕、手先も器用♪ 自分色に仕上げるのもまた一興だねぇ~♪」
「はぁ……楽しそうでなによりです」
「ほらほら、ちょっと立ってみて?」
言われた通りにする。
悠斗とは少し違うが、先輩も言ったら聞かない相手だ。
「いいね~クルってしてみて。うんうん、姫乃ちゃん再来~♪ 可愛い~♪」
パシャパシャと、何度かカメラを向けられ楽しそうにはしゃぐ先輩の姿が可笑しくて、こんな格好だが俺も久々にお腹を抱えて笑うことになった。
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