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第17幕 上級生と下級生 〜高校三年生編〜
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なにを驚いたかといえば、にょろりと下駄箱の端から光る青白い手が伸びてきたからだ。
けれど叫び声は自分とは別にもうひとつ。俺の下敷きになっている恋人のものではなく、聞いたことのないものだった。
「……いたた……、ああ……そういうことか。瀬菜、お化けではないみたいだよ?」
「……へっ……?」
恐る恐る見上げると、スマホの灯りを携えた人物が心配そうに覗いていた。
「おおおおっお前! スマホ消せよ! 怖いわ!」
「あっ、あぁ……の、ご、ごめんなさい!」
「見事な転び具合ですね」
「ふふっ、おかげさまで」
言っておくがホラーは好きなのだ。凄く好きなのだ。お腹がピクピクと痙攣するほどに。
けれど実際体験すると恐怖を覚えるし、こんなみっともない姿を晒してしまうのもまた仕方のないことだ。
はぁー……ビックリした。
悠斗が下敷きになってくれて助かった。
やっぱりこいつの胸の中は落ちつくよなぁ~。
…………って、違うだろ! 俺!
「……悠斗くん、いつまでこうしているの?」
「いつまででもこうしていたい♡」
お尻のあたりがどうにも騒がしい。最初はマッサージみたいで気持ちがよかったが、段々怪しい動きになってきている。
人様の前でなにをやっているのだと、悠斗のこめかみを両手でグリグリしてやめさせた。
「それはそうとお前達、こんな時間までなにしていたんだ?」
悠斗の上に乗りながら、ふと思ったことを口にする。仲があまりよくないと思っていた二人がこんな時間まで一緒に居たからだ。
ギクッと身体をすくませ顔を赤らめる森山君に、通川君が眼鏡を直しフッと笑った気がした。
「いえ、実は……生徒会室に伺うはずだったんです。少々予想外の事態が起こりまして……柳先輩のお茶もいただきたかったのですが、時間が足りず伺えませんでした」
生徒会室に来るはずだったということは、了承の返事と受け止めていいのだろうか。
二人の顔を交互に窺うと、通川君は森山君の肩を引き寄せ「二人で話し合ったんだよな」と親密そうな様子でそう言った。
「えっと、それって引き受けてくれるってこと?」
「ええ、休み明け改めて伺いますが……そういうことです」
「うそ……マジで? や、やったーー!」
「わっ! 柳先輩!」
ぴょんと跳ねて森山君に「でかしたー!」と抱きつくと、真っ赤になりながら森山君が支えてくれる。頬を染め眉根を下げる優しい笑顔に、後輩って可愛いなと満面の笑みで返す。
控え目な森山君が俺達を気遣って、一生懸命通川君を説得してくれたのかと思うと、余計に愛着が沸いてしまう。
「……先輩の役に立つなら……嬉しいです……」
「いやぁ~、二人の仲を疑ってたんだけどそうでもなくて安心したよ。俺達のために森山も頑張ってくれたんだな! へへへっ、愛してるぞ! 森山~♡」
森山君の胸にスリスリと頭を擦りつけ全身で感謝を伝える。ここ数日足しげく通い両断され実千流と奮闘したのも救われるというものだ。
実千流が聞いたらどんなに喜ぶだろうか。月曜日の生徒会にワクワクしてしまう。
そんな俺の喜びを遮るように、首根っこをぐいっと引き寄せる魔の手が……。それはそれは綺麗な笑顔を携えながら、お化けも逃げ出すほどの冷気を漂わせて……。
「瀬菜? 誰を愛しているって?」
「──はうっ‼︎」
「帰ってからゆっくり聞こうかな」
「うっ、ん? ソダネ……」
つい嬉しさのあまりまたやってしまった自分を呪う。いい加減下校しろと巡回の先生に怒られ、二人に聞きたいことはまだあったが話はまた来週ということで学校をあとにした。
けれど叫び声は自分とは別にもうひとつ。俺の下敷きになっている恋人のものではなく、聞いたことのないものだった。
「……いたた……、ああ……そういうことか。瀬菜、お化けではないみたいだよ?」
「……へっ……?」
恐る恐る見上げると、スマホの灯りを携えた人物が心配そうに覗いていた。
「おおおおっお前! スマホ消せよ! 怖いわ!」
「あっ、あぁ……の、ご、ごめんなさい!」
「見事な転び具合ですね」
「ふふっ、おかげさまで」
言っておくがホラーは好きなのだ。凄く好きなのだ。お腹がピクピクと痙攣するほどに。
けれど実際体験すると恐怖を覚えるし、こんなみっともない姿を晒してしまうのもまた仕方のないことだ。
はぁー……ビックリした。
悠斗が下敷きになってくれて助かった。
やっぱりこいつの胸の中は落ちつくよなぁ~。
…………って、違うだろ! 俺!
「……悠斗くん、いつまでこうしているの?」
「いつまででもこうしていたい♡」
お尻のあたりがどうにも騒がしい。最初はマッサージみたいで気持ちがよかったが、段々怪しい動きになってきている。
人様の前でなにをやっているのだと、悠斗のこめかみを両手でグリグリしてやめさせた。
「それはそうとお前達、こんな時間までなにしていたんだ?」
悠斗の上に乗りながら、ふと思ったことを口にする。仲があまりよくないと思っていた二人がこんな時間まで一緒に居たからだ。
ギクッと身体をすくませ顔を赤らめる森山君に、通川君が眼鏡を直しフッと笑った気がした。
「いえ、実は……生徒会室に伺うはずだったんです。少々予想外の事態が起こりまして……柳先輩のお茶もいただきたかったのですが、時間が足りず伺えませんでした」
生徒会室に来るはずだったということは、了承の返事と受け止めていいのだろうか。
二人の顔を交互に窺うと、通川君は森山君の肩を引き寄せ「二人で話し合ったんだよな」と親密そうな様子でそう言った。
「えっと、それって引き受けてくれるってこと?」
「ええ、休み明け改めて伺いますが……そういうことです」
「うそ……マジで? や、やったーー!」
「わっ! 柳先輩!」
ぴょんと跳ねて森山君に「でかしたー!」と抱きつくと、真っ赤になりながら森山君が支えてくれる。頬を染め眉根を下げる優しい笑顔に、後輩って可愛いなと満面の笑みで返す。
控え目な森山君が俺達を気遣って、一生懸命通川君を説得してくれたのかと思うと、余計に愛着が沸いてしまう。
「……先輩の役に立つなら……嬉しいです……」
「いやぁ~、二人の仲を疑ってたんだけどそうでもなくて安心したよ。俺達のために森山も頑張ってくれたんだな! へへへっ、愛してるぞ! 森山~♡」
森山君の胸にスリスリと頭を擦りつけ全身で感謝を伝える。ここ数日足しげく通い両断され実千流と奮闘したのも救われるというものだ。
実千流が聞いたらどんなに喜ぶだろうか。月曜日の生徒会にワクワクしてしまう。
そんな俺の喜びを遮るように、首根っこをぐいっと引き寄せる魔の手が……。それはそれは綺麗な笑顔を携えながら、お化けも逃げ出すほどの冷気を漂わせて……。
「瀬菜? 誰を愛しているって?」
「──はうっ‼︎」
「帰ってからゆっくり聞こうかな」
「うっ、ん? ソダネ……」
つい嬉しさのあまりまたやってしまった自分を呪う。いい加減下校しろと巡回の先生に怒られ、二人に聞きたいことはまだあったが話はまた来週ということで学校をあとにした。
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