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第17幕 上級生と下級生 〜高校三年生編〜
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実千流を見送り悠斗の隣に腰掛ける。人の気配で起きてしまう悠斗も熟睡しているのか、少し騒がしくしてもやはり起きる気配はない。大人しく残った書類にしばらく目を通していると重みが掛かり、書類から視線を肩口に移した。自然と口元が緩み弧を描く。
普段は自分が寄り掛かることがほとんどで、こんなに珍しいことは中々ないのだ。偶然そうなったにせよ頼られているようで、思わず頬が緩んでしまう。よくよく観察しないでも、相変わらず整った寝顔だ。気持ちよさそうに眠る姿に、悪戯心がムクムクと湧いてきてしまう。目玉でも描いてみようかと、ペンに手を伸ばすとフワリと漂うシャンプーの匂い。悠斗が愛用している香りに悪戯心はすぐに散り散りになる。
肩に触れる体温。うっかりこのまま眠ってしまいそうだ。悠斗もここ数日奮闘していたが、俺自身も学業と生徒会業務、それから勧誘で疲れきっていた。ウトウトとしだす眼を擦り、眠ってしまわないようにしていると、今度は太股に重みが掛かった。
「……あれ……こんなところに、いい枕があった……」
「なんだよ……起きたのか?」
「……うん。寝ちゃってた」
掠れた寝起きの声で、本気で熟睡していたのだろう。けれど起きた傍からドサクサ紛れに俺のお尻をモミモミしているこの悪戯な手は頂けない。
俺が悪戯しようとしていたのがバレたのだろうか。寝ているときでさえ侮れない悠斗なのだ。
「……柔らかくて気持ちい。目が覚めて目の前にある幸せ……」
「……アホなことぬかすな。変態……」
「クスッ……それより……今何時? 森山君に悪いことしちゃったな」
「もうすぐ下校の時間。俺達がこっち来たときには、ほとんど残っていなかった。気持ちよさそうに寝ていたから、森山君も気を遣って先に上がったんだろ」
「うん。久々に熟睡しちゃった」
「家、眠れないのか?」
「眠れないっていうか……勉強してて寝不足気味」
「頑張り過ぎじゃね? 睡眠も大事だぞ?」
そっと頭を撫でると、甘えながら頬擦りする悠斗。
「うん。そうだね。……ねぇ、瀬菜……キスして?」
「調子に乗るな! 家帰ってからな」
「えー、今がいい。頑張ってるご褒美」
起きた早々キスをねだり、催促するように俺の唇に指先を這わせてきた。
実千流に悪戯するなと言われた手前、動揺が隠せないでいると、早く頂戴とばかりに下唇をフニフニと愛撫されてしまう。刺激される唇が熱を持ち、躊躇う態度とはうらはらに妖しい気分にさせられる。
「……目……瞑れ……」
「うん♪」
弾んだ素直な返事をするその唇はしっとりと濡れ、三日月型に弧を描き、まだかまだかと待ち侘びているようにも見える。
ゆっくりと顔を落としチュッと啄むキスをする。座った位置からでは互いの唇は合わず、十字に重なるだけだ。
「……それ、キスじゃない」
「この体勢じゃ無理だ。ちゃんとしたキスがしたいなら帰る支度を早くしろ」
「瀬菜のケチ……」
「ケチで悪かったな。ほら、起きろ」
だるそうに起き上がる悠斗は大きく伸びをすると、帰り支度を始めた。俺も机に広がる書類を片付け、帰り支度をしていると、ソファーの背もたれへ引き寄せられた。
「瀬菜……」
見上げると悠斗がソファーを挟んで上から見下ろしている。なにをしているのかと思っていると、徐々に近付く悠斗の唇に俺の唇はあっという間に塞がれていた。
普段は自分が寄り掛かることがほとんどで、こんなに珍しいことは中々ないのだ。偶然そうなったにせよ頼られているようで、思わず頬が緩んでしまう。よくよく観察しないでも、相変わらず整った寝顔だ。気持ちよさそうに眠る姿に、悪戯心がムクムクと湧いてきてしまう。目玉でも描いてみようかと、ペンに手を伸ばすとフワリと漂うシャンプーの匂い。悠斗が愛用している香りに悪戯心はすぐに散り散りになる。
肩に触れる体温。うっかりこのまま眠ってしまいそうだ。悠斗もここ数日奮闘していたが、俺自身も学業と生徒会業務、それから勧誘で疲れきっていた。ウトウトとしだす眼を擦り、眠ってしまわないようにしていると、今度は太股に重みが掛かった。
「……あれ……こんなところに、いい枕があった……」
「なんだよ……起きたのか?」
「……うん。寝ちゃってた」
掠れた寝起きの声で、本気で熟睡していたのだろう。けれど起きた傍からドサクサ紛れに俺のお尻をモミモミしているこの悪戯な手は頂けない。
俺が悪戯しようとしていたのがバレたのだろうか。寝ているときでさえ侮れない悠斗なのだ。
「……柔らかくて気持ちい。目が覚めて目の前にある幸せ……」
「……アホなことぬかすな。変態……」
「クスッ……それより……今何時? 森山君に悪いことしちゃったな」
「もうすぐ下校の時間。俺達がこっち来たときには、ほとんど残っていなかった。気持ちよさそうに寝ていたから、森山君も気を遣って先に上がったんだろ」
「うん。久々に熟睡しちゃった」
「家、眠れないのか?」
「眠れないっていうか……勉強してて寝不足気味」
「頑張り過ぎじゃね? 睡眠も大事だぞ?」
そっと頭を撫でると、甘えながら頬擦りする悠斗。
「うん。そうだね。……ねぇ、瀬菜……キスして?」
「調子に乗るな! 家帰ってからな」
「えー、今がいい。頑張ってるご褒美」
起きた早々キスをねだり、催促するように俺の唇に指先を這わせてきた。
実千流に悪戯するなと言われた手前、動揺が隠せないでいると、早く頂戴とばかりに下唇をフニフニと愛撫されてしまう。刺激される唇が熱を持ち、躊躇う態度とはうらはらに妖しい気分にさせられる。
「……目……瞑れ……」
「うん♪」
弾んだ素直な返事をするその唇はしっとりと濡れ、三日月型に弧を描き、まだかまだかと待ち侘びているようにも見える。
ゆっくりと顔を落としチュッと啄むキスをする。座った位置からでは互いの唇は合わず、十字に重なるだけだ。
「……それ、キスじゃない」
「この体勢じゃ無理だ。ちゃんとしたキスがしたいなら帰る支度を早くしろ」
「瀬菜のケチ……」
「ケチで悪かったな。ほら、起きろ」
だるそうに起き上がる悠斗は大きく伸びをすると、帰り支度を始めた。俺も机に広がる書類を片付け、帰り支度をしていると、ソファーの背もたれへ引き寄せられた。
「瀬菜……」
見上げると悠斗がソファーを挟んで上から見下ろしている。なにをしているのかと思っていると、徐々に近付く悠斗の唇に俺の唇はあっという間に塞がれていた。
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