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第18幕 vert olive
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パンッ──!
……っと、突然の破裂音。部屋の中は薄暗く、尻もちをついた俺にカラフルなテープとキラキラのラメが降り注ぐ。今日は色々なものが降ってくる日なのだろうか。
呆然とする俺に手を差し伸べ、悠斗は悪巧みが成功したと悪戯っ子の面差しでクスクスと笑いながら俺を引き起こした。
「瀬菜、十八歳……おめでとう」
そう甘い囁き声で言い、惚ける俺をそっと優しく抱きしめてくれた。
「クスッ、驚いた?」
「……うん。お尻が痛いよ……」
「ふふっ、ごめん……驚かせたくて。今日が誕生日だってこと忘れていたでしょ?」
「あはは……実は……」
目の前のことに一生懸命になり過ぎて、すっかりそんな行事を忘れていたのだ。
「本当はバイト休みたかったけど、マスターのところも大変だから断れなくて……。ごめんね?」
「いや、その……いいんだ。俺こそなんか、色々とその……気が利かなくて……ごめん……」
悠斗が怒っていたのも今なら頷ける。恋人の誕生日に主役が女の子とイチャイチャ……はしているつもりはないが、そんな場面を目撃すれば腹は立つ。
少ない時間を悠斗なりに調整してくれたに違いない。俺を祝うためにサプライズで図書館まで迎えに来たのかもしれないし、迎えに来る前には食事の下ごしらえをしていたのかもしれない。
俺の知らない数多くの『かもしれない』が、頭をよぎっていく。
「瀬菜の好きな食べもの用意したよ。ケーキは出来合いになっちゃったけど」
「こんなに⁉ ありがとう。滅茶苦茶……嬉しい」
悠斗の料理が冷めないうちに、口いっぱい頬を膨らませながら食べていった。温かな料理と他愛のない会話が幸せで堪らない。互いの近況を事細かく話すと、ケーキに蝋燭を歳の数だけ立て恒例の願いごとをした。
いつまでも二人で過ごせますように……と。
歳を重ねる度に毎年思うありきたりなこと。簡単なようで難しい。互いの歩み寄りがなければ壊れてしまう。適度な喧嘩と適度な我慢。それと飛び切りの愛情。
「悠斗、俺、たまには怒ることもあるけど、多分明日もきっと怒るかもしれない……けど、なんでってさ、やっぱお前のことが好きだからなんだ」
「うん。俺も多分ヤキモチ妬いて怒るかも。それは、瀬菜のこと気になって大好きで、感情止められないから」
「へへっ……なら、そのときはお互い謝ろうな?」
「ふふっ、そうだね」
傍から見れば馬鹿みたいなカップルだろう。でも、俺たちはいつだって真剣に恋愛している。喧嘩してもこうして笑い合えればすぐにラブラブになれるのだ。
「これプレゼント。キモイとか言わないでね?」
「キモイもこなら遠慮なく言わせてもらうぞ。けど、先にありがとうって言っておく」
俺も毎年悩むが、そろそろお互いネタ切れだ。アダルトグッツでないことだけを願いつつ、ラッピングを開封していく。
「わぁ~、かっけ~……パスケース?」
「うん。これから使う機会増えると思って」
「へへへっ、超~嬉しい! 受験もあるし、これから電車に乗る機会も増えるもんな~。しかもこれ超便利じゃん!」
……っと、突然の破裂音。部屋の中は薄暗く、尻もちをついた俺にカラフルなテープとキラキラのラメが降り注ぐ。今日は色々なものが降ってくる日なのだろうか。
呆然とする俺に手を差し伸べ、悠斗は悪巧みが成功したと悪戯っ子の面差しでクスクスと笑いながら俺を引き起こした。
「瀬菜、十八歳……おめでとう」
そう甘い囁き声で言い、惚ける俺をそっと優しく抱きしめてくれた。
「クスッ、驚いた?」
「……うん。お尻が痛いよ……」
「ふふっ、ごめん……驚かせたくて。今日が誕生日だってこと忘れていたでしょ?」
「あはは……実は……」
目の前のことに一生懸命になり過ぎて、すっかりそんな行事を忘れていたのだ。
「本当はバイト休みたかったけど、マスターのところも大変だから断れなくて……。ごめんね?」
「いや、その……いいんだ。俺こそなんか、色々とその……気が利かなくて……ごめん……」
悠斗が怒っていたのも今なら頷ける。恋人の誕生日に主役が女の子とイチャイチャ……はしているつもりはないが、そんな場面を目撃すれば腹は立つ。
少ない時間を悠斗なりに調整してくれたに違いない。俺を祝うためにサプライズで図書館まで迎えに来たのかもしれないし、迎えに来る前には食事の下ごしらえをしていたのかもしれない。
俺の知らない数多くの『かもしれない』が、頭をよぎっていく。
「瀬菜の好きな食べもの用意したよ。ケーキは出来合いになっちゃったけど」
「こんなに⁉ ありがとう。滅茶苦茶……嬉しい」
悠斗の料理が冷めないうちに、口いっぱい頬を膨らませながら食べていった。温かな料理と他愛のない会話が幸せで堪らない。互いの近況を事細かく話すと、ケーキに蝋燭を歳の数だけ立て恒例の願いごとをした。
いつまでも二人で過ごせますように……と。
歳を重ねる度に毎年思うありきたりなこと。簡単なようで難しい。互いの歩み寄りがなければ壊れてしまう。適度な喧嘩と適度な我慢。それと飛び切りの愛情。
「悠斗、俺、たまには怒ることもあるけど、多分明日もきっと怒るかもしれない……けど、なんでってさ、やっぱお前のことが好きだからなんだ」
「うん。俺も多分ヤキモチ妬いて怒るかも。それは、瀬菜のこと気になって大好きで、感情止められないから」
「へへっ……なら、そのときはお互い謝ろうな?」
「ふふっ、そうだね」
傍から見れば馬鹿みたいなカップルだろう。でも、俺たちはいつだって真剣に恋愛している。喧嘩してもこうして笑い合えればすぐにラブラブになれるのだ。
「これプレゼント。キモイとか言わないでね?」
「キモイもこなら遠慮なく言わせてもらうぞ。けど、先にありがとうって言っておく」
俺も毎年悩むが、そろそろお互いネタ切れだ。アダルトグッツでないことだけを願いつつ、ラッピングを開封していく。
「わぁ~、かっけ~……パスケース?」
「うん。これから使う機会増えると思って」
「へへへっ、超~嬉しい! 受験もあるし、これから電車に乗る機会も増えるもんな~。しかもこれ超便利じゃん!」
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