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第26幕 iの意味
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平常心を保ちつつ悠斗に笑顔を向けると、机の上に視線を移した悠斗が口元を緩めクスッと笑った。
先ほどまでの冷たいオーラがどういう訳か和らいでいる。小首を傾げ窺っていた俺の上半身を玉夫のほうへと押し倒した悠斗は、あろうことか俺の唇を塞いできた。
「──んッ……ば……ッ、やっめ……ふ……ぅ」
段々畑のように高いひな壇タイプ教室。長い机にすっぽり隠れるのをいいことに、悠斗は躊躇なく俺の口腔を貪ると合間に呟いた。
「まだ使ってくれていたんだね……」
「……えっ……なに……ッ、ふぅ……んッ」
「ん? このシャープペン」
「……ぅっ……んッ?」
チュックチュ……と静かに柔らかな唇が俺を追い詰めていく。散々堪能したとでも言いたそうに唇が離れると、悠斗は機嫌がよさそうに起き上がった。
硬い椅子のはずなのに頭は弾力のある玉夫の太腿。頬を熱くさせ潤んだ瞳で見上げる天井と、俺を呆れた顔で見下ろす玉夫が映り込む。
一体なにを言われたのかぼんやりと思考を巡らせる。俺のスマホにはもう存在しない画像。けれどよく記憶に残っている愉快な遊園地。ウサギーランドのラビたんシャープペン。悠斗が昔俺にプレゼントしてくれた文房具だ。所々色が剥げてしまっているが、お気に入りのシャープペンは今なお現役。たった一本の文房具を使っていただけで機嫌が直るとは本当に現金だ。
「ったく……お前たち人の股間でナニしてくれてんの」
「ああ、瀬菜のクッションになってくれて、どうもありがとう」
講義が始まったというのに、俺たちはなにをしているのやら。力が抜け切った身体を起こせずもがいている俺の頭上で、攻防戦が繰り広げられている。
「あーあ、なんなん……このエロイ顔」
「君じゃこんな可愛い蕩けた顔にすることはできないよ」
「どうだか。今度三人でセックスしねぇ?」
「……いいね? なんて言う訳ないでしょ」
「ちっせぇ男だな」
「そう? これでも瀬菜には満足してもらえる大きさだけど?」
「瀬菜ちゃん俺のも美味そうに食べてたよね? いつも同じモノじゃ飽きるっしょ?」
玉夫がニヤニヤしながら俺を見下ろし、俺の唇に触れようとすると、悠斗が目を細め殺気を漂わせていた。
スッポリ机の間と玉夫に嵌り、身を捩る俺の腕を掴んで自身のほうへ悠斗が引き寄せる。
「ふふっ、君どうやら懲りてないみたいだね? 瀬菜、彼の横に座ってたら危ないから場所変えよ?」
「今から移動なんてできない! ほら、もうどこまで進んだか分からないじゃん! レポート提出できなくなるだろ!」
俺が静止させなければ講義が終わるまで言い合いをしそうな二人に仲裁を入れる。話している内容は卑猥だが、まるで小学生の喧嘩のようだ。
ため息を吐き出し、俺がピリピリし始めるのを感じ取ってか、互いに舌打ちをし、講義に専念してくれた。
一難去ってまた一難。今後の大学生活が不安で堪らない幕開けになってしまった。
先ほどまでの冷たいオーラがどういう訳か和らいでいる。小首を傾げ窺っていた俺の上半身を玉夫のほうへと押し倒した悠斗は、あろうことか俺の唇を塞いできた。
「──んッ……ば……ッ、やっめ……ふ……ぅ」
段々畑のように高いひな壇タイプ教室。長い机にすっぽり隠れるのをいいことに、悠斗は躊躇なく俺の口腔を貪ると合間に呟いた。
「まだ使ってくれていたんだね……」
「……えっ……なに……ッ、ふぅ……んッ」
「ん? このシャープペン」
「……ぅっ……んッ?」
チュックチュ……と静かに柔らかな唇が俺を追い詰めていく。散々堪能したとでも言いたそうに唇が離れると、悠斗は機嫌がよさそうに起き上がった。
硬い椅子のはずなのに頭は弾力のある玉夫の太腿。頬を熱くさせ潤んだ瞳で見上げる天井と、俺を呆れた顔で見下ろす玉夫が映り込む。
一体なにを言われたのかぼんやりと思考を巡らせる。俺のスマホにはもう存在しない画像。けれどよく記憶に残っている愉快な遊園地。ウサギーランドのラビたんシャープペン。悠斗が昔俺にプレゼントしてくれた文房具だ。所々色が剥げてしまっているが、お気に入りのシャープペンは今なお現役。たった一本の文房具を使っていただけで機嫌が直るとは本当に現金だ。
「ったく……お前たち人の股間でナニしてくれてんの」
「ああ、瀬菜のクッションになってくれて、どうもありがとう」
講義が始まったというのに、俺たちはなにをしているのやら。力が抜け切った身体を起こせずもがいている俺の頭上で、攻防戦が繰り広げられている。
「あーあ、なんなん……このエロイ顔」
「君じゃこんな可愛い蕩けた顔にすることはできないよ」
「どうだか。今度三人でセックスしねぇ?」
「……いいね? なんて言う訳ないでしょ」
「ちっせぇ男だな」
「そう? これでも瀬菜には満足してもらえる大きさだけど?」
「瀬菜ちゃん俺のも美味そうに食べてたよね? いつも同じモノじゃ飽きるっしょ?」
玉夫がニヤニヤしながら俺を見下ろし、俺の唇に触れようとすると、悠斗が目を細め殺気を漂わせていた。
スッポリ机の間と玉夫に嵌り、身を捩る俺の腕を掴んで自身のほうへ悠斗が引き寄せる。
「ふふっ、君どうやら懲りてないみたいだね? 瀬菜、彼の横に座ってたら危ないから場所変えよ?」
「今から移動なんてできない! ほら、もうどこまで進んだか分からないじゃん! レポート提出できなくなるだろ!」
俺が静止させなければ講義が終わるまで言い合いをしそうな二人に仲裁を入れる。話している内容は卑猥だが、まるで小学生の喧嘩のようだ。
ため息を吐き出し、俺がピリピリし始めるのを感じ取ってか、互いに舌打ちをし、講義に専念してくれた。
一難去ってまた一難。今後の大学生活が不安で堪らない幕開けになってしまった。
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※主人公はメガネキャラですが、純粋に視力が悪くてメガネ着用というわけではないので、メガネ属性好きで読み始められる方はご注意ください。
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