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第26幕 iの意味
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ふわふわな悠斗の髪がユウのふさふさな毛並みに似ていて、やっぱり似ているなと可笑しくなる。
「悠斗はちょっと泣き虫になったよな」
「……瀬菜に泣き虫なんて言われたくない」
「へへっ……ほら、イケメンが台無しだぞ? みんなの王子イメージ崩れるよ」
「いいの、瀬菜が好きでいてくれるだけで」
目尻を拭い悠斗はヘラリと俺に笑いかける。擦った目尻は少し紅くなり、大人っぽい雰囲気が薄れ年相応だ。
「俺も練習いっぱいして、瀬菜の色んな姿を撮りたい。ねっ、サークル一緒の入ろうって、前に瀬菜も言っていたでしょ?」
「うん、まぁ……言ってたな。けどさ悠斗、玉夫も居るけどいいのか?」
「もちろん。だからこそ余計に入って、瀬菜を助けないと!」
「あー……お前たち意外と気が合うかもな……ははは」
嫌そうな顔をする悠斗に「カメラ買いに行こうな」と言うと、すぐに気分をよくして楽しそうにしていた。俺もそんなに詳しくはないが、同じ趣味を持つことに喜びを感じる。
先ずはサークル申請からだと、その日のうちに研究会の部室へ案内した。そして俺は部長から「でかした!」と意味不明に褒められ、玉夫は悠斗に「金魚の糞かよ……」と、嫌味交じりな言葉を投げつけていた。
その後、写真研究会にあんなに集まらなかった女子メンバーが一気に増えたことは言うまでもない。
こうしてまた自ら悩みの種を撒き、悠斗も俺も互いに嫉妬心を募らせることになるのだった──。
***
大学やサークル活動は、最初こそ悠斗と玉夫の間に挟まれ揉みくちゃにされることもあったが、今では二人の扱いにも慣れたものだ。
休日は新居に不足しているものや悠斗のカメラを選びに出掛け、時間があればユウの散歩のついでに二人で写真を撮ったりと充実した日々を過ごしていた。部屋の片付けもある程度終わり、引っ越しをしてニヶ月ほど経った頃、俺たちは迷惑をかけてしまったお詫びに、みんなを新居に招きホームパーティーを催そうと計画していた。
ピンポーン……ピンポーン……。
悠斗がキッチンからリビングの時計を見て首を傾げている。ユウはインターフォンの音に、ウーウーと唸り落ち着きがない様子だ。
「もうそんな時間?」
「あっ、俺出るよ」
手を止めインターフォンのパネルに向かおうとする悠斗に、ユウを宥めつつ自分が出ると伝えた。きっと実千流あたりが手伝いついでに早目に来たのだろう。
最新型のオートロックシステムにドキドキしながら通話ボタンを押すと、大きな画面に人物が映し出される。
「わっ、えっ? あ、開けますね!」
手を振る人物に会話もそこそこに解錠ボタンを押す。しばらくすると画面は消えるが、俺はじっとそこを見つめたままだった。
「瀬菜? 誰だったの?」
「祐一さん」
「……祐一さん? 急にどうしたんだろ」
「悠斗が呼んだんじゃないの?」
「いや、都合がつかないって断られて、まだ新居の場所伝えていないんだ」
訝しむ悠斗に俺も首を傾げてしまう。
祐一さんには何年も会っていない。画面越しでは昔のままだったが、なんとなく落ち着きがない様子だった。
「瀬菜はお茶の準備してて?」
「あっ、うん……」
なにかを感じ取ったのか、悠斗は真剣な顔つきで俺に来客の準備を促すと玄関へと向かって行った。
「悠斗はちょっと泣き虫になったよな」
「……瀬菜に泣き虫なんて言われたくない」
「へへっ……ほら、イケメンが台無しだぞ? みんなの王子イメージ崩れるよ」
「いいの、瀬菜が好きでいてくれるだけで」
目尻を拭い悠斗はヘラリと俺に笑いかける。擦った目尻は少し紅くなり、大人っぽい雰囲気が薄れ年相応だ。
「俺も練習いっぱいして、瀬菜の色んな姿を撮りたい。ねっ、サークル一緒の入ろうって、前に瀬菜も言っていたでしょ?」
「うん、まぁ……言ってたな。けどさ悠斗、玉夫も居るけどいいのか?」
「もちろん。だからこそ余計に入って、瀬菜を助けないと!」
「あー……お前たち意外と気が合うかもな……ははは」
嫌そうな顔をする悠斗に「カメラ買いに行こうな」と言うと、すぐに気分をよくして楽しそうにしていた。俺もそんなに詳しくはないが、同じ趣味を持つことに喜びを感じる。
先ずはサークル申請からだと、その日のうちに研究会の部室へ案内した。そして俺は部長から「でかした!」と意味不明に褒められ、玉夫は悠斗に「金魚の糞かよ……」と、嫌味交じりな言葉を投げつけていた。
その後、写真研究会にあんなに集まらなかった女子メンバーが一気に増えたことは言うまでもない。
こうしてまた自ら悩みの種を撒き、悠斗も俺も互いに嫉妬心を募らせることになるのだった──。
***
大学やサークル活動は、最初こそ悠斗と玉夫の間に挟まれ揉みくちゃにされることもあったが、今では二人の扱いにも慣れたものだ。
休日は新居に不足しているものや悠斗のカメラを選びに出掛け、時間があればユウの散歩のついでに二人で写真を撮ったりと充実した日々を過ごしていた。部屋の片付けもある程度終わり、引っ越しをしてニヶ月ほど経った頃、俺たちは迷惑をかけてしまったお詫びに、みんなを新居に招きホームパーティーを催そうと計画していた。
ピンポーン……ピンポーン……。
悠斗がキッチンからリビングの時計を見て首を傾げている。ユウはインターフォンの音に、ウーウーと唸り落ち着きがない様子だ。
「もうそんな時間?」
「あっ、俺出るよ」
手を止めインターフォンのパネルに向かおうとする悠斗に、ユウを宥めつつ自分が出ると伝えた。きっと実千流あたりが手伝いついでに早目に来たのだろう。
最新型のオートロックシステムにドキドキしながら通話ボタンを押すと、大きな画面に人物が映し出される。
「わっ、えっ? あ、開けますね!」
手を振る人物に会話もそこそこに解錠ボタンを押す。しばらくすると画面は消えるが、俺はじっとそこを見つめたままだった。
「瀬菜? 誰だったの?」
「祐一さん」
「……祐一さん? 急にどうしたんだろ」
「悠斗が呼んだんじゃないの?」
「いや、都合がつかないって断られて、まだ新居の場所伝えていないんだ」
訝しむ悠斗に俺も首を傾げてしまう。
祐一さんには何年も会っていない。画面越しでは昔のままだったが、なんとなく落ち着きがない様子だった。
「瀬菜はお茶の準備してて?」
「あっ、うん……」
なにかを感じ取ったのか、悠斗は真剣な顔つきで俺に来客の準備を促すと玄関へと向かって行った。
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