悪役令嬢の弟は姉を溺愛している

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姉と昔話

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わたくしが5歳のとき、王妃様のお茶会に呼ばれライアン殿下に見初められた、と言うのは知っているかしら?」

夜、夕食を取ったあと姉上と勉強をしているいつもの時間。
ふと姉上は思い出したかのように話し始めた。

「はい。一応…その5歳のときに仮の婚約者となり、学園入学前日に正式に婚約がなされたのですよね」
「えぇ…そうよ」
「姉上がその次の日からあらゆる勉強を始めたと父上に聴きました」

姉上は、ふぅと息を吐き僕が知らないことを話してくれた。

𓏸𓈒⊹ ◌

「おはつにおめにかかります。グレース・レオンバルドでございます!ほんじつは このようなステキなおちゃかいに よんでくださり ありがとうございます」

習ったばかりのカーテシーを取って、王妃様とライアン殿下に挨拶をする。
少し赤い顔をした殿下はボーッと私の顔を見ている。

「あら?ライアン?」
「ははうえ!ぼくは、このことけっこんする!!!!」
「まあまあ!!ふふふ、この子ったら一目惚れしちゃったのね」
「ほう…?私の娘に惚れるとは殿下も見る目がありますな」
「でも、この子達には婚約はまだ早いんじゃないかしら?」

頬に手を当て困ったように微笑む王妃様。

「私もまだ娘をやるつもりはありませんよ、ははは」

少し怖いお父様。

「この件は陛下とも相談しましょう」
「そうですね。グレース、殿下と向こうへ行っていなさい」

促されて、庭園の方へ殿下と向かう

「おまえ!ぼくのものになれ!!」
「…?わたしは ものじゃないです」
「うるさい!ぼくにさからうな!」

そう言って私の髪を引っ張る殿下。

「ひっ…ふぇええん…」
「な、なくなよ!ぼくがわるいみたいじゃないか!」

お父様はお母様にこんなことしない。国王陛下も王妃様にしない。

幼くても婚約者の意味くらいわかる。いつかは結婚する仲だ。それなのに、痛いことをされる。それがわからなかった。

「わたしは こんやくしゃ、いや!なりたくないっ!」
「なっ!?なんだと!!!ぼくのいうことがきけないのか!!ぼくはこのくにの おうになるんだぞ!!」

こんな人と結婚するなんて地獄だ。
でもこの人が王様になったらこの国はどうなってしまうのだろう…私が頑張ったらいいのかな。王妃様みたいに王様を支えたら国を守れるかな。

お父様はいつも言っていた。
「まず始めにこの国のことを考えなさい。次に自分の愛する人。最後が自分だ。私達は貴族だ。人の上に立つ立場の人間だ。愚かな者が上に立てば国は滅び、賢い者が上に立てば国は豊かになる。賢い者でありなさい。国を愛し、家族を愛し、己を愛しなさい。愛する者を守れるくらい力をつけなさい。力は武力だけではない。知識も力となる。それは必ず己の助けになる。なんでもいい。できることをしなさい」

父の言葉で私の目指すべきところが見つかった。
正直殿下のことは嫌いだ。でも、この国を滅ぼさない為には力をつけるしかない。この国が大好きだ。だからその為に。

「グレース!」
「っ!!お父様」

考えに夢中になりすぎて周りが見えなくなっていた。お父様の横には殿下がいる。殿下がお父様を呼んできたようだ。

「大丈夫か?殿下が、話しかけても反応しなくなったといっていたが」
「だいじょうぶです!しんぱいしないで!」

抱き上げられお父様の腕の中にすっぽりとおさまる。

「きゅうにだまりこんでしまって、しんぱいしたよ」

どの口が言っているのか。失礼だろうが無視させてもらう。

「おとうさま、わたし、ちょっとつかれちゃいました」
「ああ、そうか。じゃあ今日は帰ろう。王妃様にもそう言っておくよ」
「ありがとうございます」

少しはしたないがお父様に抱きついたまま家に帰った。

「おかーなしゃ!ねぇね!」
「おかえりなさい。グレース、旦那様」

出迎えてくれたウィルとお母様にハグをする。

「ただいまもどりました!ウィル!」

ウィルはぎゅーっと抱きしめ、私は決めた。

(ウィルが誇れるような姉になる。可愛い可愛い私の弟。将来、父のあとを継ぎ公爵になり宰相になるだろう。そんなとき、あのままの王子が国王になれば一番苦労するのは宰相だ。ウィルの為に頑張ろう。)

「おとうさま。おはなしがあります。」
「なんだい?」

幼いウィルは何でも私の真似をしようとする。流石に、これから私がしようとしていることはウィルには早すぎる。

ウィルはお母様に任せて、お父様の書斎へ二人で向かう。

「それでどうしたんだ?グレース」
「わたし、べんきょうがしたいです」
「なんの?」
「あらゆることです。私にできること。いまの私は、なにを学べばいいのかもわかりません」
「そうか。じゃあまずは淑女教育から始めようか。今までは基本的なマナーしか教えていなかったが本格的に始めていこう。それはお母様が教えてくださるから頑張りなさい。あと並行して、歴史をやるかい?」
「はい!!ありがとうございます!おとうさま!」
「お母様にはお父様から話しておくよ。今日は疲れただろう。ゆっくり休んで明日から頑張るんだぞ」

大きな手で頭をなでてくれる。



次の日からお母様のスパルタなマナーレッスンが始まった。

「グレース、背筋が曲がっているわ」
「カチャカチャと音を立ててはいけません」
「今の喋り方とっても可愛らしいけれど、はっきりと発音なさい。」
「腕の角度はこう、お母様を真似て、そう上手よ」

やっぱりお母様なので所々甘やかされた。



そして、自国だけではなく近隣諸国の歴史、言語を学び帝王学を学んでいった。


𓏸𓈒⊹ ◌

「お父様とお母様にはやりすぎて幾度となく止められたわ」

クスクスと笑うお姉様。

「やっぱり姉上はすごいです…」

改めて尊敬した。そして、ライアン殿下の愚かさにため息が出る。

「殿下は…何も変わらなかったのですね」
「えぇ…流石にあのままでは駄目だわ…」
「どうにかしないと、ですね」

頭が痛くなってきた。
明日からの学園生活不安だ……




⋈ ・・・・・・・・・・・・・・✶・・・・・・・・・・・・・・ ⋈
読んでくださりありがとうございます。
グレースの話す昔話で()の部分がありますが、その部分はウィルには言っていません。わかりにくくてすみません…
今後とも、頑張りますのでよろしくお願いします。








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