君と初恋をもう一度

さとのいなほ

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初めての夜

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「わあぁあああ!」

 酔っ払った瑞月に振り回された翌朝。空が白んできた頃にようやくうとうとと眠りについた朝陽は瑞月の悲鳴で起こされた。

「朝陽、俺どうして……いたたたた……」

 頭を押さえる瑞月に毛布をかけてやる。瑞月はこの状況に困惑している様子だ。

「……覚えてないのか?」
「なにを? くしゅっ……」
「とりあえずこれ着て」

 くしゃみをする瑞月に下着で寝せるんじゃなかったと後悔する。朝陽はスウェットの上を脱いで瑞月に被せ、自分は代わりにTシャツを着た。きょとんとしている瑞月は本当に覚えていないんだろう。

「水持ってくるから待ってろ」
「うん……」

 散々人を振り回して覚えていないとはどういう了見だ、と呆れ半分に部屋を出ると味噌汁のいい香りがする。キッチンで珍しく父親が料理をしていた。

「おはよう。 なにしてんの?」
「おはよう。 しじみの味噌汁を作ってるんだよ。 二日酔いにはこれが効くからね」
「ふうん」
「瑞月、随分酔って帰ってきたみたいだからなあ」
「まあ……」

 あれだけ大声を出したんだから父親の部屋まで聞こえていて当然だ。昨夜のことを思い返す。

(そういえば玄関でキス……)

 見られてはいないだろうが、瑞月の声が聞こえていたならバレているのかもしれない。しかし父親はいつもと変わらない様子だ。よかった、と朝陽は胸を撫で下ろす。

「テーブルに二日酔いに効く錠剤も出してあるから水と一緒に持っていってあげなさい」
「ありがとう」

 水と薬を持って自分の部屋に戻ると瑞月はまだ布団にくるまったままだった。

「瑞月、これ父さんから。 しじみの味噌汁も作ってくれてた」
「……ありがと」

薬を飲んだ瑞月はふうと息をついた。そして気まずそうに訊ねる。

「朝陽、お尻が痛いんだけどその……シちゃった……?」

恐る恐る聞いてくる瑞月に朝陽は溜め息をつく。

「お前が勝手に玄関転んだだけ」
「じゃあ裸なのは?」
「お前がコーヒー溢して勝手に脱いだ」
「朝陽の部屋にいるのは?」
「お前が入ったんだ勝手に」

 そこまで聞いて瑞月は完全に布団にくるまって顔が見えなくなる。布団の中からくぐもった声が聞こえてくる。

「……よかった」

 安心した声音に朝陽もまた昨日の選択は間違いではなかったと安堵する。布団の上から瑞月の頭を撫でて、制服に着替える。

「じゃあ学校行ってくるから」
「うん……」
「瑞月」
「なに……んっ」

 布団から顔を出した瑞月の顎を掬って唇にキスをした。唇を離す直前、ぺろりと瑞月の唇を舐める。まだ少しアルコールの味が残っている。少しキザだったかと思ったが気にしないことにする。散々逃げた上昨夜は振り回してくれたのだ、これぐらいは許されるだろう。瑞月の声にならない悲鳴を聞きながら朝陽は部屋を出た。



 昼休み、購買の惣菜パンやおにぎりを見て洋介が声を上げる。

「今日は愛妻弁当じゃないんだな」
「まあな」
「愛妻否定しないのな」
「……」

 正直悪い気はしなかった。そういえば瑞月はあの後どうしたんだろう。携帯を見るとメッセージが入っていた。

『お弁当作れなくてごめんね』

それに対して朝陽も返信する。

『大丈夫。 それより二日酔いは大丈夫か?』

大学も昼休みなのかすぐに既読がついた。

『おかげさまで』
『よかった』

すると可愛らしいスタンプが返ってきた。携帯でメッセージのやり取りをする朝陽を見て洋介が呆れた声を出した。

「顔緩みすぎだろ」
「……そんなことないだろ」
「昨日の今日でいいことあったのか?」
「別に……」

朝陽もスタンプを返して携帯をしまう。いいことがあったと言えばある。酔っ払いの瑞月は厄介だが、新たな一面が見れて良かったと思う。

「また緩んでるぞ」
「うるさい」



 今日は残っている食材で夕飯を作るから買い物はしないと瑞月から連絡があった。

「おかえり朝陽」
「ただいま」

 家に帰ると瑞月に出迎えられた。瑞月は何か言いたそうに口をぱくぱくさせた後、キッチンに引っ込んでいった。

(なんだ……)

 その後も瑞月の同じような行動は続いた。勉強を見てもらっている時もそんな調子で、痺れを切らした朝陽は瑞月を問いただすことにした。

「なんか言いたいことでもあんの?」
「え?」
「さっきからなんなんだよ。 気になるだろ」

 そう言うと瑞月はあからさまに視線をさまよわせる。そして眉を八の字にして上目遣いでえっと、と口を開いた。

「えっと、その……怒らない?」
「聞いてないうちに怒るもなにもないだろ」

 だから話してみろ、ともじもじしている瑞月を促すと朝陽が想定していなかった言葉が返ってきた。

「その、えっちしませんか……?」

 こそ、と瑞月はスウェットのポケットからコンドームを取り出した。

「は……?」

 瑞月は朝陽の腕を引いてベッドまで誘って押し倒す。瑞月の行動についていけない朝陽はされるがまま、また都合のいい夢でも見ているんじゃないかと考えていたが瑞月がズボンに手をかけたところで現実に戻った。ずらされたズボンを直しながら訊ねる。

「待て、どうしたいきなり」
「……思い出して、昨日のこと」

酔っていた時の事を言っているのだろう。だが突然どうしたのか。瑞月は続ける。

「避けてはのはほんとだし、我慢させてたの悪かったなって……」
「それはもういい。 いくらなんでも急すぎ……んっ」

 瑞月の唇が朝陽のそれに重なり、合わせるだけの軽いキスを繰り返す。ぶわ、と血流が早くなり、体温が上がる。朝陽は瑞月と体勢を入れ替え、瑞月の頬を包み触れるだけのキスから深いキスへと変えていく。

「んんっ、んぅ……ッ」

 瑞月の舌は昨日ほど熱くなかったが、それでも唾液を帯びて湿ったそれはぬるぬるとして気持ちいい。二人の唾液が混ざって、舌を絡ませる度にぐちゅぐちゅと水音を出す。口を離すと二人の間を唾の糸が繋いだ。
 急な誘いであることは確かだが、朝陽は昨日お預けを食らっている。また我慢できるほど朝陽は強い理性を持ち合わせていない。

「……いいんだな」

 もう逃がすつもりも無かったが、低く唸るように念を押す。心臓がうるさいほど強く鼓動している。枕に頭を埋めている瑞月は小さく頷いた。

「うん……」
「脱がせるぞ」
「うん……」

 スウェットを脱がせて白く細い体を露わにする。下着にも手をかけて、控えめに主張していたそこを暴く。まだキスしかしていないのにうっすらと先走りが滲んでいた。

「朝陽も脱いで……?」

 瑞月に乞われるまま朝陽も衣服を脱ぎ捨てる。下着から現れた朝陽の中心を見て瑞月がうわぁ、と声を上げた。

「おっきい……」
「あんま見るな」

 片手で瑞月の視界を塞ぎながらベッド横のチェストからローションを取り出した。瑞月の足を秘部が見えるように広げさせてそこにローションを垂らす。

「ひぅっ……」
「悪い、冷たかったか?」
「ううん、平気。 ……ローション用意してたの?」
「まあ……」

 付き合ってからいざという時のために買っていたのだ。今日ようやく使うことができたが、ずっと前からやりたがっていたようで、そう考えると少し恥ずかしい。瑞月はそんな朝陽を見透かしているようでいつもの調子でからかってくる。

「朝陽、やらしいんだ」
「うるさい」
「ごめん……んっ」

 瑞月の秘部に触れる。穴の周辺をマッサージするようにゆるゆると揉み込んでやり、まずは一本、指を入れ込んだ。

(あれ……)

 思っていたより柔らかい。というよりもすでに解されている。瑞月を見ると、腕で赤くなった顔を隠しながら朝陽を伺っている。

「瑞月?」
「……朝陽も初めてだろうし、あんまり手間かけさせない方がいいかなってお風呂で自分で……」

 最後は声が小さくなって聞き取れなかったが、どうやら瑞月が自分で慣らしたらしい。瑞月は夕食のすぐ後に風呂に入っていたはずだ。

「……やらしいのはどっちだよ」

 指を引き抜いて、代わりにゴムを纏わせた陰茎を秘所に当てがう。瑞月の体がびくりと震えた。

「今度は準備も俺にやらせろよ」
「それはやだ……う、ん……ッ!」

 朝陽はゆっくりと熱い塊を瑞月の中へ進めていく。瑞月は息を荒くしつつ、朝陽を受け入れられるようじっと耐えているようだった。

「痛くないか?」
「だ、い丈夫……」

 目の端からぽろりと大粒の涙を数粒溢しながら瑞月は答えた。ローションを足しながらじわじわと押し進め、ようやく全てを瑞月の中に収める。朝陽は知らない内に息を止めていたらしく、ふう、と大きく呼吸をした。ぴったりと肌がくっつき、瑞月と一つになれたという嬉しさが込み上げてくる。

「朝陽、入った……?」
「うん」

 頬を撫でて、まだ目元に残った涙を指で拭ってやる。瑞月はその手にすりすりと頬擦りをしてよかった、と微笑む。瑞月は挿入の苦しみを逃すために握っていたシーツから手を離して、自分の下腹部に手を置く。

「すごい。 朝陽の、俺のナカでドクドクしてる……」

 愛おしそうに腹を撫でる呟く瑞月を見てぞくぞくと背中が震えた。すぐにでも細い腰を掴んでめちゃくちゃにしてやりたくなった。

「動いていいか?」
「うん。 ゆっくりね」
「……分かった」

 ゆっくり、と自分にも言い聞かせて朝陽は腰を動かし始めた。瑞月の負担が大きいのだからできる限り優しくしたい。衝動を抑えてゆっくりと抽送しているうちに瑞月が引き抜く時に反応が良くなることに気がつく。

「抜く時、気持ちいい?」
「うん……いい、かも……」

 瑞月自身よく分かっていないようだったが、朝陽の陰茎が抜かれようとすると瑞月のナカは追うように絡み付いて、瑞月も気持ちよさそうに息を漏らしている。

「はあ……んぁっ……んん……ぁ……っ」

 息を漏らすだけだった瑞月が段々と声を出すようになってきた。これで合っていたのだ、と朝陽は安心して続ける。

「あっ、ゃ、あぁ……っ」

 瑞月はふるふると頭を振って、何かに耐えるように控えめに声を漏らす。もっとこの鼻に抜ける甘い声が聞きたいと、朝陽は責め方を変えることにした。
 陰茎を引き抜いて腹側を擦るように入れていく。すると周囲とは感触が違う部分があった。ここだろうか、とそこを先端で擦り上げると、瑞月は高い声を上げる。

「ひぁっ!」

 びくんと体を跳ねさせて瑞月は顔の脇に置かれた朝陽の腕にしがみつく。その様子が可愛らしい。

「あ、さひ、そこだめ……」
「気持ち良くない?」
「そういうわけじゃ……」
「ならいいだろ」
「やっ、ぁあ……!」

 いやいやと頭を振る瑞月に構わず抉るように腰を動かす。瑞月は首を仰け反らせて引き攣った声を漏らして、ぎゅう、と朝陽の腕を掴む手に力を入れた。

「ひあっ、んん、やあぁ……」

 瑞月の良い所を朝陽が責める度、ローション混じりの熱い粘膜が朝陽の陰茎を締め付ける。

「すげ、ナカ動く……」
「や、恥ずかし、あっ、ああぁ!」

 朝陽がさらに強く責め立てると瑞月は目を見開いて、悲鳴に似た嬌声を上げる。流石に父親に聞こえてしまいそうだと、朝陽は瑞月の口を塞ぐ。

「静かに」
「んむっ、んんッ!」

 唇を合わせて瑞月の声が響かないように抑える。瑞月は瞳を蕩けさせて、朝陽の首に腕を回す。体が密着して二人の熱い体温と息が交わる。一度口を離して見つめ合い、またどちらともなく唇を合わせる。

「んん、ぁ、はあ……朝陽、気持ちいいね……」
「ああ……」

 うっとりとした表情で瑞月が囁く。瑞月の白い肌は紅潮して胸元まで赤くなっている。朝陽はほんのりと赤く染まった細い首に噛み付いた。

「いっ、た……朝陽、痛い、やだ、痛い……ッ」

 痛いというが朝陽はやめられなかった。瑞月は自分のモノであるという印を残したくて仕方なかったのだ。首や肩口、胸元に噛み付いてはまっさらな肌に跡を残す。痛いと言いつつ、跡をつける度に瑞月のナカはきゅうきゅうと朝陽を締め付けた。

「朝陽……」

 ふるふると涙目で瑞月が朝陽を見つめている。もうやめて、と弱々しく呟かれてしまい、まだ足りないと思っていたのにやめざるを得なかった。

「悪かった」
「朝陽……あぁあン!」

 お詫びと言わんばかりにまた朝陽は瑞月が好きなところを突いてやる。瑞月も朝陽の動きに合わせて腰を揺らしている。

「あ、さひ……あん、そこ、ぁあん!」
「気持ちいい?」
「うん、うん! 好き、朝陽、あぁ……ッ」
「俺も好きだ、瑞月」
「うれし……、あ、さひ、俺、もう……んんッ」
「イきそう?」
「うん、そこぐりぐりされたらイッちゃ……」
「ここ?」
「そ、こォ! あッ、や、あ、あっ、ダメ、イッちゃう……ね、キス、キスしたい……んん!」

 瑞月が強請るままにキスをする。舌を絡めて、唾液を送り込むと瑞月は一瞬驚いた顔をして、しかし恍惚の表情を浮かべて朝陽の唾液を飲み込んだ。
 そして瑞月は腰をベッドから浮かして大きく震えたあと自分の腹部に白濁をぶち撒けた。

「ぁ、ん、ンッ、んんんーーーーッ!」

 絶頂の声は朝陽の口内に消えていった。朝陽もまた瑞月を追いかけるように絶頂に達した。ビクビクと震える瑞月はいつか見た表情よりもっと淫らな表情を浮かべて、焦点の定まらない瞳で朝陽を見つめている。
 汗で張り付いた前髪をよけてやって、その瞳に吸い込まれるように朝陽は瑞月の瞼にキスをする。瞼以外にも頬や額に何度も。そうしている内に瑞月の細腕が朝陽を捉えて、首筋に噛みつかれた。ちくりとした痛みの後にぺろりと熱い舌がそこを撫でた。

「瑞月?」
「……仕返し」

 真っ赤な舌をちらつかせて、瑞月は艶やかに微笑んだ。
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