【完結】夜を舞う〜捕物帳、秘密の裏家業〜

トト

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義賊

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 今江戸の瓦版をにぎわしているのは二人の義賊。

 一人は昨晩犬飼が取り逃がしたネズミ小僧。
 大名屋敷のみを狙って盗みに入り、貧困街の人達に盗んだお金を配ってまわるという貧困街の義賊。
 毎回予告状を出したうえでの犯行なのに、役人たちの目を潜り抜け、成功させるその華麗な様は江戸の瓦版の売り上げを倍増させた。
 それに大名屋敷の金はみな不正な出所なものばかり、その証拠もちゃんとお上にあげているので、人気が上がるのは当たり前だった。

 もう一人はネコ娘。人さらいや奴隷商人、いかさま賭博の借金のかたに身売りされた娘たちや子供たちを救うこちらは町娘たちにとっての義賊。
 その人物は猫の仮面を被った女性であるということ、そして迫りくる用心棒たちの刀をサッとかわすと、目にもとまらぬ速さで次の瞬間には、用心棒たちを気絶させるその動きは、とても人間技とは思えない。本当に猫のようにしなやかで無駄のない鮮やかな動作は、ダンスをみているようだったと助けられた娘たちは口々に語った。

 世の中は義賊だの英雄だと騒ぎ立てているが。犬飼たち町の治安を守る同心にとっては、犯罪者にはかわらない。瓦版を読むたびに毎日胃がキリキリさせられる。

「次こそは……」

 眉間に皺がよらないように気を付けながら、犬飼は自分に喝を入れる。
 自分の信じる正義のために。

 犬飼は蕎麦をズズっとすすると、「お勘定」と声をかけた。
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