8 / 11
サディスト
しおりを挟む
「さて、娘たちの様子は」
地下に掘られた秘密の通路で男はふと足をとめた。そしてあたりを警戒するようにキョロキョロと見渡す。
「おかしい、今朝様子を見に来た時と何かが違う」
野生の勘に近い何かを感じながら、それでも奥へと足早に進む。
「なに!」
そしてもぬけの殻になっている牢獄を見て男は今度こそ本当に驚きの声をあげた。
「ネズミ小僧の奴は、金だけ盗むんじゃなかったのか」
聞いてないと言わんがりにグッとこぶしを握り締めながら文句を吐く。その時男は背後に気配を感じハッと腰の刀を抜きながら反対側に飛びのいた。
「本当はここには用事はなかったんだけど、今回は可愛い子猫の頼みでね」
いつからそこにいたのか、ここまで一方通行のはずの出口側に、目元だけ面で隠している男が立っていた。
「お前がネズミ小僧か!?」
男の問いに、冷笑で答える。
ギリリと殺気を放つ男を前に、すました様子でネズミ小僧が話を続ける。
「娘たちと子供たちはかえしてもらうよ。それと、この帳簿。これは偽物だね。本物と女たちの借用書はどこだい」
「いうわけないだろ」
不敵に笑う。先ほど屋敷でやられていた部下たちは、みな麻酔のようなもので眠らされているだけのようだった。
彼らが目を覚ましここに来るまで時間を稼ぐか、または、ジリジリと少しづつ男は壁際に下がる。
ネズミ小僧は出口を塞いでいるつもりだろうが、こんなこともあろうかと、実は外に出れる隠し通路がもう一か所あるのだ、もし飛び掛かってきたら、罠を発動してその間に自分はそこから逃げ出せば済むことだ、そして二か所の出入り口をふさいでしまえばネズミ小僧はまさに袋のネズミ。
「それは困った」
お手上げというように、ネズミ小僧が肩をすくめる。
刹那。ドクンと男の心臓が突然悲鳴を上げた。
「貴様何をした」
胸を押さえながら男が怒鳴った。
「ちょっと毒を入れただけさ」
地下に掘られた秘密の通路で男はふと足をとめた。そしてあたりを警戒するようにキョロキョロと見渡す。
「おかしい、今朝様子を見に来た時と何かが違う」
野生の勘に近い何かを感じながら、それでも奥へと足早に進む。
「なに!」
そしてもぬけの殻になっている牢獄を見て男は今度こそ本当に驚きの声をあげた。
「ネズミ小僧の奴は、金だけ盗むんじゃなかったのか」
聞いてないと言わんがりにグッとこぶしを握り締めながら文句を吐く。その時男は背後に気配を感じハッと腰の刀を抜きながら反対側に飛びのいた。
「本当はここには用事はなかったんだけど、今回は可愛い子猫の頼みでね」
いつからそこにいたのか、ここまで一方通行のはずの出口側に、目元だけ面で隠している男が立っていた。
「お前がネズミ小僧か!?」
男の問いに、冷笑で答える。
ギリリと殺気を放つ男を前に、すました様子でネズミ小僧が話を続ける。
「娘たちと子供たちはかえしてもらうよ。それと、この帳簿。これは偽物だね。本物と女たちの借用書はどこだい」
「いうわけないだろ」
不敵に笑う。先ほど屋敷でやられていた部下たちは、みな麻酔のようなもので眠らされているだけのようだった。
彼らが目を覚ましここに来るまで時間を稼ぐか、または、ジリジリと少しづつ男は壁際に下がる。
ネズミ小僧は出口を塞いでいるつもりだろうが、こんなこともあろうかと、実は外に出れる隠し通路がもう一か所あるのだ、もし飛び掛かってきたら、罠を発動してその間に自分はそこから逃げ出せば済むことだ、そして二か所の出入り口をふさいでしまえばネズミ小僧はまさに袋のネズミ。
「それは困った」
お手上げというように、ネズミ小僧が肩をすくめる。
刹那。ドクンと男の心臓が突然悲鳴を上げた。
「貴様何をした」
胸を押さえながら男が怒鳴った。
「ちょっと毒を入れただけさ」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
花嫁
一ノ瀬亮太郎
歴史・時代
征之進は小さい頃から市松人形が欲しかった。しかし大身旗本の嫡男が女の子のように人形遊びをするなど許されるはずもない。他人からも自分からもそんな気持を隠すように征之進は武芸に励み、今では道場の師範代を務めるまでになっていた。そんな征之進に結婚話が持ち込まれる。
【読者賞】江戸の飯屋『やわらぎ亭』〜元武家娘が一膳でほぐす人と心〜
旅する書斎(☆ほしい)
歴史・時代
【第11回歴史・時代小説大賞 読者賞(読者投票1位)受賞】
文化文政の江戸・深川。
人知れず佇む一軒の飯屋――『やわらぎ亭』。
暖簾を掲げるのは、元武家の娘・おし乃。
家も家族も失い、父の形見の包丁一つで町に飛び込んだ彼女は、
「旨い飯で人の心をほどく」を信条に、今日も竈に火を入れる。
常連は、職人、火消し、子どもたち、そして──町奉行・遠山金四郎!?
変装してまで通い詰めるその理由は、一膳に込められた想いと味。
鯛茶漬け、芋がらの煮物、あんこう鍋……
その料理の奥に、江戸の暮らしと誇りが宿る。
涙も笑いも、湯気とともに立ち上る。
これは、舌と心を温める、江戸人情グルメ劇。
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
花嫁御寮 ―江戸の妻たちの陰影― :【第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞】
naomikoryo
歴史・時代
名家に嫁いだ若き妻が、夫の失踪をきっかけに、江戸の奥向きに潜む権力、謀略、女たちの思惑に巻き込まれてゆく――。
舞台は江戸中期。表には見えぬ女の戦(いくさ)が、美しく、そして静かに燃え広がる。
結城澪は、武家の「御寮人様」として嫁いだ先で、愛と誇りのはざまで揺れることになる。
失踪した夫・宗真が追っていたのは、幕府中枢を揺るがす不正金の記録。
やがて、志を同じくする同心・坂東伊織、かつて宗真の婚約者だった篠原志乃らとの交錯の中で、澪は“妻”から“女”へと目覚めてゆく。
男たちの義、女たちの誇り、名家のしがらみの中で、澪が最後に選んだのは――“名を捨てて生きること”。
これは、名もなき光の中で、真実を守り抜いたひと組の夫婦の物語。
静謐な筆致で描く、江戸奥向きの愛と覚悟の長編時代小説。
全20話、読み終えた先に見えるのは、声高でない確かな「生」の姿。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる