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初恋の約束 後編
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(えっ!)
足の先から頭のてっぺんまで電流が駆け巡ったかのように、ビクリと体が跳ねあがる。
(まさか!)
一瞬で朱美の時間は中学時代に戻る。
破裂寸前の心臓を抑えながら、後ろを振り返る。
頭の中ではすでに若かりし姿で見詰め合う二人の姿が思い描かれていた。
「――――!」
一瞬全ての音という音、色という色が消え失せた。
頭の中が真っ白になる。
そこにはリュックを背負いチェックのシャツをジーンズの中にきっちりと収めた「アキバ系の男ってどんな人だと思う?」という質問をする人物がいたら、ズバリ彼ですと指差せるほどの人物が立っていた。
(思い出が! 夢が!)
何かが崩壊していく音を聞いた気がした。
朱美はハッと我にかえるやいなや、自分の鞄の中に手を突っ込み何かを探し当てると言い放った。
「私! 結婚したの」
「ハチ公にはどういけばいいのですか?」
朱美と男の言葉が重なった。
『…………』
見ろといわんばかりに男の前に突きつけた左手を、そのままゆっくり右に向ける。
男は少し怪訝そうに朱美を見詰めながら、それでも軽く会釈するとその方向に歩いていった。
一気に脱力した。
「まぎらわしいんだよ! 大体あんなオタク系が私の初恋の高志くんなわけないじゃない!」
男の姿が見えなくなると、朱美は思わず指差した方角に向かって叫んでいた。
それから一瞬でも勘違いした自分に腹がたって、わけもわからずモヤイ像の周りを歩きまわる。
「あぁ、もう」
いったい何周まわっただろう、ふと自分の指に光る指輪を見て立ちどまる。
「別に隠すつもりだったわけじゃないんだけど……」
なんとなくはずしてしまった結婚指輪。
「罰があたったのかな」
自嘲するように小さく笑う。それから旦那の代わりに指輪に向かって謝罪した。
「これで過去の思い出とはさよならだ」
気合を入れるようにそういうと、顔を上げ胸を張りしっかりした足取りで友達との待ち合わせ場所に向かって一歩を踏み出した、その時だった。
「朱美ちゃん」
聞き覚えのある声が耳に飛び込んだ。
「高志、くん……」
目の前には間違いようもない、中学時代の面影そのままに素敵な男性に成長した彼が立っていた。
「遅れてごめん。覚えていてくれたんだ」
照れくさそうにはにかむ彼を見た瞬間、朱美はとっさに後ろに隠した手から結婚指輪をはずしていた。
足の先から頭のてっぺんまで電流が駆け巡ったかのように、ビクリと体が跳ねあがる。
(まさか!)
一瞬で朱美の時間は中学時代に戻る。
破裂寸前の心臓を抑えながら、後ろを振り返る。
頭の中ではすでに若かりし姿で見詰め合う二人の姿が思い描かれていた。
「――――!」
一瞬全ての音という音、色という色が消え失せた。
頭の中が真っ白になる。
そこにはリュックを背負いチェックのシャツをジーンズの中にきっちりと収めた「アキバ系の男ってどんな人だと思う?」という質問をする人物がいたら、ズバリ彼ですと指差せるほどの人物が立っていた。
(思い出が! 夢が!)
何かが崩壊していく音を聞いた気がした。
朱美はハッと我にかえるやいなや、自分の鞄の中に手を突っ込み何かを探し当てると言い放った。
「私! 結婚したの」
「ハチ公にはどういけばいいのですか?」
朱美と男の言葉が重なった。
『…………』
見ろといわんばかりに男の前に突きつけた左手を、そのままゆっくり右に向ける。
男は少し怪訝そうに朱美を見詰めながら、それでも軽く会釈するとその方向に歩いていった。
一気に脱力した。
「まぎらわしいんだよ! 大体あんなオタク系が私の初恋の高志くんなわけないじゃない!」
男の姿が見えなくなると、朱美は思わず指差した方角に向かって叫んでいた。
それから一瞬でも勘違いした自分に腹がたって、わけもわからずモヤイ像の周りを歩きまわる。
「あぁ、もう」
いったい何周まわっただろう、ふと自分の指に光る指輪を見て立ちどまる。
「別に隠すつもりだったわけじゃないんだけど……」
なんとなくはずしてしまった結婚指輪。
「罰があたったのかな」
自嘲するように小さく笑う。それから旦那の代わりに指輪に向かって謝罪した。
「これで過去の思い出とはさよならだ」
気合を入れるようにそういうと、顔を上げ胸を張りしっかりした足取りで友達との待ち合わせ場所に向かって一歩を踏み出した、その時だった。
「朱美ちゃん」
聞き覚えのある声が耳に飛び込んだ。
「高志、くん……」
目の前には間違いようもない、中学時代の面影そのままに素敵な男性に成長した彼が立っていた。
「遅れてごめん。覚えていてくれたんだ」
照れくさそうにはにかむ彼を見た瞬間、朱美はとっさに後ろに隠した手から結婚指輪をはずしていた。
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