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私だけのヒーロー
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彼は人前で笑顔を見せたことがない。だから他の騎士たちから氷の騎士と恐れられているけど、彼は決して弱い者いじめをしたり、心の冷たい人物ではないわ。
なぜなら私は知っている、彼が今までどう生きてきたか、そして私に何度も見せた優しい笑みを。
彼との出会いは私が迷って入り込んでしまった王宮の庭だった。兵士にみつかり追いかけられていたところを彼は助けてくれた。
私にとって彼はその時から私だけのヒーローになったわ。
初めて会った時、彼はまだ新米騎士だった。だけどその後すぐにソードマスターとして覚醒して注目を集めたわ。
それと同時に同期や先輩から嫉妬され、嫌味をいわれたり、訓練という名のいじめを受けるようになったわ。
彼はいつも早朝から一人で剣を振っていたわ。私は彼のそんな努力を知っていたわ。
なのに同期も先輩たちも自分では努力もせずに、彼のことを「運がいい」だけだの、「才能がある奴は良いよな」だの、勝手に嫉妬していじめて本当に腹が立ったわ。
そんな人たちやっつけてしまえばいいのに、私は彼にそう言ってやったのに、彼は騒ぐ私に、小さく微笑みかけるだけだった。
彼の代わりに噛みついてやろうかと思ったけど、彼はそんなことをしても喜ぶような人ではないのはわかっていたわ。だから私も仕方なく黙るしかなかった。ただ、早朝のその時間は彼の傍に寄り添うことにしたわ。
私だって愚痴を聞くぐらいなら付き合ってあげれるから。
早朝の稽古から朝食のまでの少しの時間が、私たちには唯一心の安らぎを得られる時間になった。
しばらくすると、彼は隊長補佐になったわ。
前にもまして忙しくなったけど、それでも早朝の訓練は欠かすことはなかったわ。またそのころから、彼は美味しいおやつを持って来てくるようになったわ。
私もお返しに大好きなおやつを持っていったら、驚いた顔をしてから、それからありがとうっていって優しい笑顔を見せてくれたわ。
身分は違うけど私たちはお互い大切な友達だった。
そんなあるとき、彼と私の関係に気がついた男がいたわ。
そいつは彼をいじめていた先輩の一人で、いまでは彼の部下の一人になっている男だった。
彼は自分の上司になってしまった彼を快く思っていなかったの、でも剣の腕では到底彼に敵わないことをわかっていたから、彼と仲の良い、そして彼より弱い私に目をつけたのよ。
そいつは私を薄暗い部屋に放り込むと、剣をちらつかせながらその汚らわし手で私に触れようとしたわ。
私は必死の抵抗で彼をひっかいたけど、とても力で勝てるものではなかったわ。
もう駄目だと思ったその時、再び彼が私を助けに現れたくれたわ。
私はすぐさま彼の胸に飛び込んだ。
彼も私をぎゅっと抱きしめ、そして額にキスをしたわ。
それから私をさらって剣を振りかざした男を一瞬でやっつけたわ。
やっぱり、彼は私だけのヒーローだ。
「ミーコ無事でよかった」
「ニャー」
彼の腕に抱かれながら私はゴロゴロと喉を鳴らし、頬を摺り寄せながら、自慢のふさふさのしっぽで彼の額を撫ぜ返したわ。
なぜなら私は知っている、彼が今までどう生きてきたか、そして私に何度も見せた優しい笑みを。
彼との出会いは私が迷って入り込んでしまった王宮の庭だった。兵士にみつかり追いかけられていたところを彼は助けてくれた。
私にとって彼はその時から私だけのヒーローになったわ。
初めて会った時、彼はまだ新米騎士だった。だけどその後すぐにソードマスターとして覚醒して注目を集めたわ。
それと同時に同期や先輩から嫉妬され、嫌味をいわれたり、訓練という名のいじめを受けるようになったわ。
彼はいつも早朝から一人で剣を振っていたわ。私は彼のそんな努力を知っていたわ。
なのに同期も先輩たちも自分では努力もせずに、彼のことを「運がいい」だけだの、「才能がある奴は良いよな」だの、勝手に嫉妬していじめて本当に腹が立ったわ。
そんな人たちやっつけてしまえばいいのに、私は彼にそう言ってやったのに、彼は騒ぐ私に、小さく微笑みかけるだけだった。
彼の代わりに噛みついてやろうかと思ったけど、彼はそんなことをしても喜ぶような人ではないのはわかっていたわ。だから私も仕方なく黙るしかなかった。ただ、早朝のその時間は彼の傍に寄り添うことにしたわ。
私だって愚痴を聞くぐらいなら付き合ってあげれるから。
早朝の稽古から朝食のまでの少しの時間が、私たちには唯一心の安らぎを得られる時間になった。
しばらくすると、彼は隊長補佐になったわ。
前にもまして忙しくなったけど、それでも早朝の訓練は欠かすことはなかったわ。またそのころから、彼は美味しいおやつを持って来てくるようになったわ。
私もお返しに大好きなおやつを持っていったら、驚いた顔をしてから、それからありがとうっていって優しい笑顔を見せてくれたわ。
身分は違うけど私たちはお互い大切な友達だった。
そんなあるとき、彼と私の関係に気がついた男がいたわ。
そいつは彼をいじめていた先輩の一人で、いまでは彼の部下の一人になっている男だった。
彼は自分の上司になってしまった彼を快く思っていなかったの、でも剣の腕では到底彼に敵わないことをわかっていたから、彼と仲の良い、そして彼より弱い私に目をつけたのよ。
そいつは私を薄暗い部屋に放り込むと、剣をちらつかせながらその汚らわし手で私に触れようとしたわ。
私は必死の抵抗で彼をひっかいたけど、とても力で勝てるものではなかったわ。
もう駄目だと思ったその時、再び彼が私を助けに現れたくれたわ。
私はすぐさま彼の胸に飛び込んだ。
彼も私をぎゅっと抱きしめ、そして額にキスをしたわ。
それから私をさらって剣を振りかざした男を一瞬でやっつけたわ。
やっぱり、彼は私だけのヒーローだ。
「ミーコ無事でよかった」
「ニャー」
彼の腕に抱かれながら私はゴロゴロと喉を鳴らし、頬を摺り寄せながら、自慢のふさふさのしっぽで彼の額を撫ぜ返したわ。
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