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聖騎士の仕事

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まさか、アリアさんに限って……?
いや、でも、アリアさんがそんなことをするはずがない。
俺の脳裏を嫌な予感がよぎる。
俺は宿屋を出た。
どこだ……どこにいるんだアリアさん!!
見渡してみても道にはいない。
露店のほうも探したけど見当たらない。
路地裏は……いた!
そこにいたのは、グリムを必死で壊そうとしているアリアさんだった……。

「アリアさん!」

俺は慌ててアリアさんの元へ駆け寄った。

「どうしてこんな事をしているんですか!」

カナヅチで叩き割ろうとしている。
聖騎士なら剣で破壊してそうなものだけど。

「だって、魔剣は危険な物です」
「いや、大丈夫ですから! むしろ、直してくれないと困りますから!」
「そんなはずはありません!」
「あるんですよ!! 聖騎士として見過ごせませんね!! 絶対に!」

ダメだ、話が通じない。
どうしよう……。

「私は魔剣を……壊します!」

アリアさんが自分の剣の柄を握りしめた!

「ホーリーソード!!」

アリアさんの剣が眩しく光った!
攻撃するんだな!?

「壊れろ魔剣!!」

俺はグリムを手に取り、ホーリーソードから回避させた。

「何やってるんですか!」
「あなたこそ何してるんですか! その剣を渡しなさい!」
「それはできないです!」
「なぜですか!」
「俺の命を守ってくれる大切な相棒です!」
「嘘つき! 魔剣はそんなものじゃありません! さっきまで嬉しそうに独り言に没頭してましたよね? 魔剣と喋っていたんじゃないですか!? きっと、洗脳されているんですね……」
「違いますよ!」
「私が必ず救ってみせます。覚悟していて下さい……」

アリアさんが俺に斬りかかってきた。
速い! 避けきれない! 俺はグリムで受け止めるが、押し切られて後ろに吹っ飛んだ。
強いな、アリアさん。

「くっ……」

俺は立ち上がって構えた。

『主、私を使って戦ってください』

また話しかけてきた。

「グリム、お前、起きていたのか?」
『はい。なんかヤバいのに絡まれてましたよね。私』
「抵抗しろよ!」
『いや、主がいないと何もできないんですよ。私』
「そうか……」

アリアさんが近づいてくる。

「また独り言……魔剣と話していますね?」

彼女との会話は意味を成さない。

「やるぞ! 破壊のスキル! 手加減で!」
「きゃあっ……!?」

黒い衝撃波によりアリアさんが道のほうまで吹っ飛んだ。
けっこう派手に吹っ飛んだぞ!?

「グリム、手加減……した?」
『しましたよ。血は出てないはずです」

血が出てなければ大丈夫ってわけじゃないよ……。
さてはカナヅチでガンガン叩かれて怒ってるね?

『あのヤバい人間を気遣ってないで、私を気遣ってください、主』 
 「ごめんごめん! でもさ、聖騎士が魔剣を壊したい存在なのであれば教えてくれよ。この世界のそういう設定というか因縁みたいのは知らないからさ、俺は」
『主、ひどい……。私だって完璧ではない』

え……グリムはポンコツなところがあるのかもしれない。

『主こそ色気に引っかかって、終始デレデレで求婚までしてフラれて騙されて情けない……』

え、スリープモードじゃなかったの?

「グリム……お、起きてたな!?」
『早く仲間の魔剣シャルルリープを探しましょう』

スルーされた。
グリム……そういうところがあるぞ。
あれ?
グリムが眠ってないと、俺の魔力が吸い取られてるんじゃなかったっけ?
早くシャットダウンしてもらおう……。
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