最弱にして最強となる冒険者〜龍神の恩恵を授かりし最弱ランクの闘い〜

uyosiの脳内は茜色

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二章 授かりし恩恵

戦場の鐘

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 同時刻。
 ──ギルド本部最上階ギルドマスターの使用する一室。
 選抜された優れた者達が集う。

 とは言っても、特別な教育を受けたわけでもなく冒険者として活動していた者や魔法探求に勤しんでいた者。
 ──ギルドマスターに腕を見込まれた事がきっかけに上位ある地位に君臨。

 その者達の声は室内に響き渡る。

「確たる確信は持てませんが、やはり、あの青年の仕業かと思えてなりません」
「青年って倒れてた奴か?」

 会話を遮り間に入った子供のような無邪気な面影が見える青年。
 短髪ヘアーに薄い緑色が瞳の色と綺麗に重なる。
 対して肌白い腕をちらつかせ、長髪の髪を掻き分ける仕草に加え、整った顔立ちはまるで美顔とも言うべきか類を見ない美しさがそこにある、が、報告を遮られた事に対しやや怒りを見せる。

「ブルトン会話に入って来ないでくれる?」
「別に良いだろ! その為に俺達が集まってるんだからよ。親父さんに付け入ろうとする思考、だだ漏れだぜ──イザベラ」
「何言ってるわけ? あるわけないでしょ──報告してるにすぎないから!」
「ほら、赤いぜ頬! ハハッ。 ってのは良いが、脱線し過ぎるのも親父さんの機嫌を損ねてならん。イザベラ確信はないのだろ? 何故青年だと思った?」
「魔法痕を辿ったからよ! でも、確信が持てないのは……魔力の構造が遥上級レベルなのよ。正直、マスターでも扱う事の出来ない程よ。そんな事、青年に出来る? ってのが私の見解。新人冒険者が扱えるとは到底思えない……そもそもあり得ない」

 すると、黙って椅子に座っていた闘志剥き出しのガレオンが話に加わる。

「ほぉーそんなに強いのか? 俺が相手してやりたいってもんだな。何処にいんだ? その、噂の青年とやらは?」
「話ややこしくなるから、黙って座っててくれないかな?」
「同感だ!」

 イザベラ、ブルトンは口を揃えガレオンを追いやる。

「イザベラ」
「はい、マスター!」
「痕跡は青年に結び付くのだろ?」
「はい、痕跡は青年にしっかりと結び付きます。かと言って……先ほどもブルトンには言いましたが、新人に扱える代物ではありませんし……私が知る限り誰も使う事が出来ないと思います。いくら魔法に精通していようとも……」
「そうか。イザベラが言うのであればそれも真実だろな。…………一度話が聞けたら良いのだが」
「そんなに難しい事なんすか? 話を聞く事が?」
「今はそっとしといてくれと言うのが向こうのお願いでな!」

 意味不明な発言に首を傾げる(何を言っているのか?)面々の心の内の声はギルドマスターに届いたのか、再度口を開くギルドマスター。

「青年の両親とな、ちと面識が合ってな! 昔の戦友とも言うべきか腐れ縁でな……落ち着けばこちらから連れて行くと聞かないもんでな」

 話を聞いたブルトンは目をキラキラ輝かせる。

「親父さんと腐れ縁、それに戦友! 会ってみたい、そして握手したい、拝みたい」
「ブルトン邪魔だから。拝むなら勝手に拝んでくれる。今はそんな話してないし、さりげなく話逸らすのやめてくれる。時間の無駄」
 辛辣な追撃にブルトンは縮こまりイザベラの話を黙って聞く事に転換した。

「マスター、それでは来訪されるのを待ち続けると言う事でしょうか?」
「致し方ないが!」
「そうですか……。わかりました、マスターがそう言われるのであれば納得するしかありません」
「すまぬな。だがっ引き続き調査には当たってくれ」


 会話の切れ目に面々が動き出そうとした最中、勢いよく扉が開放される。

「すみません緊急です。緊急です…………」

 無礼を働いた兵士にブルトンが怒り狂う。

「おい、ノックもなしに、何入って来てんだ! あっー。脳味噌働いてんのか? 一度やり直せ──そしたらリセットしてやる」

 一連の会話に素直に従い、慌てる兵士はやり直し扉を叩く。

 黙る面々の元にノック音が響き「入れ!」とブルトンが告げる。
 何故ブルトンがって思ってしまうが、その変はギルドマスター自身も突っ込みを入れず、ただ、なりゆきを見守っていた

「っでだ、緊急って何だ? つまらない事だったら知らねぇーぞ」
「はっ。万を超える魔獣の群れがビルディスタに押し寄せています、直ちに手を打たなければ」
「確かに緊急だな…………ま、まん? 馬鹿か!」
 
 内容が遅れ脳に届いたのか、その数に驚きブルトンの声が響く。
 話を聞いていたギルドマスターも座っていた椅子から腰を浮かし、兵士の元に近づく。

「詳しく話せ!」

「円環の門が姿を見せました。」
 ギルドマスターは驚愕する。
「まさかっ!」
「はいそのまさかでございます。そして出現した魔獣供は統率を取りこの地に集っております──我らも半信半疑でしだか、遭遇した冒険者が強く訴える物ですので、勝手ながら調査隊を送った所、肉眼で確認出来た数おおよそ数万……それ以上の数が列を作りこちらに迫っております」

 有無言わず、ギルドマスターは面々に指示を飛ばす。

「イザベラ確認できるか?」
「はい………………」

 イザベラはギルドマスターの指示に従い、得意とする遠距離感知を行使する為魔法詠唱を始め、一節を口走る。
 とたん、地面には魔法陣が浮かび上がり神秘的な光が周囲を輝かせ、魔法展開された事が見てわかる。

「…………数、十五万……まだ増え続けています…………上位個体、数千…………。すみません一個体だけ特殊変異体ヴァイスカンド級を遥かに超える存在がいます。私で測る事できません」

 迫り来る戦力の報告を受けたギルドマスターは慌てる素振りも見せず、坦々と指示を飛ばす(流石ギルドマスターと言うべきか冷静な対応が素晴らしくもある)

「緊急ビルディスタに滞在する全ての冒険者を集め、戦闘に参加させろ。──どのぐらいで目視できる距離に入る?」
「数時間後には。マスターどうなさるおつもりで?」
「流石に黙って見ておくわけには行かぬだろ! わし直々に指揮を取り迎え打つ。そこの兵士、緊急放送を即刻鳴らせ、東門に皆を集めよ!」

 指示を受けた兵士は「かしこまりました」と体を回転させ全速力で走りさった。

「イザベラ! お前には集まった冒険者の中から魔法力に長けた者を集め高台に配置させるが良い──後は追って指示する」
「かしこまりました」

「ブルトン! 新人冒険者、低ランクの者達を集め後衛としてビルディスタに侵入しようとする魔獣を討伐させろ、見逃した魔獣をな」
「親父さん……まっ、了解っす」

「ガレオン! お前は前衛、わし含め高ランクの冒険者と結託し、迫り来る魔獣を殲滅するぞ!」
「強い者とやりあうなら文句なしだ。まかせろ」



 兵士が鳴らす緊急放送がビルディスタに響く

)低く唸るような音。
 
『ビルディスタ冒険者に告ぐ。即座に東門に行き魔獣の群れを阻止、もしくは撃滅して下さい──繰り返します。即座に東門に行き魔獣の群れを阻止、もしくは撃滅して下さい。これはビルディスタ直の依頼の為拒否は認められません──即座に向かい殲滅して下さい──東門にて待つギルドマスター・アーメスト・ジュピタと合流して下さい』
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