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1.転生って言ったよねぇ?これは転移って言うんじゃぃぃぃいいい!!
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(ん…あれぇ、体が動かない…)
「新城さ‥‥だ‥‥‥ぶです‥?」
(え?なんだって?よく聞こえないよ…)
誰かが俺に話かけているような気がするが、水の中で聞く音のようにボアボアしてよく聞き取れない。
どこからか落下するような、浮遊感に襲われるが…一時するとそれもなくなった。
最後に目の中に飛び込んできた光景は、暗闇の中で光るデスクライトとパソコンのディスプレイの青い光だった。
「んだぁぁぁぁぁぁぁー!!!!」
寝坊した時のように、勢いよく飛び起きた。
「ん??あれ???体動くぞ!!え、じゃあ…さっきのアレはなんだったんだ?」
顎に手を触れながら物思いに耽りそうに――――
「ちょっと、いいかな?」
(うぇ!?あぁぁぁぁ!?)
と声は上げないが、再び飛び上がりそうになりながら、瞬発的に顔を腕で隠してしまう。
「そんなにびっくりしなくていいじゃない。」
そんなことを言われて、眼前にまで上げた腕の隙間から、声のする方を見た。
人なのかよくわからない、ヒトガタ??はしてる…ような気がする。
二度も声をかけられたというのに、姿を見ても男なのか女なのかもわからない。
しかし、何故かはわからない癖に…これみよがしに、1対の天使の翼らしきものを携えているのは認識できる。
「はじめまして、新城タケルさん。私は神です。」
「は?」
訳のわからない、胡散臭いセリフを吐かれてしまったので、反射的に失礼な返答をしてしまった。
「すみません。もう一度お伺いしてもよろしいでしょうか…」
「ですから、私は”あなたたち”人間の言うところの神です。」
は?ブラック企業勤務よろしく、
誰にも失礼にならない言葉で聞き返したのにも関わらず、やっぱりわからなかった。
しかし、そんな現状とはうらはらに…体は伸身で指先はまっすぐ伸ばした綺麗なフォームで、
45°~90°のお辞儀をしながら自己紹介をしてしまうのであった。
「本日はお世話になります。はじめまして!新城 猛と申します。」
内心やってしまったと思った時には”後の祭り”。
「ご丁寧にありがとうございます。
でもそんなにきれいにキメても、あなたフルチンですよ。」
そう、お辞儀を深くすればするほど気づいてしまったのだ…
My Jr.が目の前に広がるのだから。
「のぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
と奇声を上げるのと同時に、体をよじり…
どこかのお笑い芸人と同じく、片足で立ちながら、もう片方の足のふとももで隠した。続いて、変な空気になりかける事を危惧して
「いやん/////」 と照れ顔をしてみた。
「‥‥‥‥」
数秒間待っても、返ってきたのは無言でした。
表情がわからないから、返答あると思って待ったのに…
「新城タケルさん、あなたは…」
あれ?と思ってそちらを向くと…
「あんたは、ブラック企業で働きすぎて過労で死んだんだよ。」
「は?」
また失礼な返答を返してしまった。
「だから死んだんだって、何回言わせるの?」
「あ、いや…そちらにでは、なくて…
あのぉ、いきなり物言いが変わりましたので…」
「こんな変なやつに、まともに対応しててもバカらしいじゃん。」
…どうやら、“自称”神の地雷をぶち抜いてしまったらしい。
「だから最初から、こうすればよかったんだよ…」
声色を抑揚を定かではないが、きっと心底呆れてるように、
こちらに片方の翼の先端を向けた。
すると動作と不釣り合いな、風圧のようなものを受け…
目の前が真っ暗になった。
(ん?あれは…俺だ。)
目の前に広がるは、俺の…
―新城タケルーのアルバム写真のスライドショーというべきか…
父親も母親も…名前はおろか、顔だって知らない。
物心がつくときには、児童養護施設にいた。
児童養護施設だって、完全に親がいないのはごく少数で…
たいがい、親の生活能力に問題があったり、何かしらの不都合があって預けられることが多いようだ。
ドラマにも、そういう設定があったりして…
家族がいないにしても、施設のみんなは家族同然の絆で結ばれている…
なんてのは幻想だ。
現実は親の愛を知らずに育ってきて、施設の年長者にパシリにされたりで…
だいたいグレる。うん、これガチで…
まぁそんな環境の中でも、勉強はできなかったけど、
こんなんでも、まともに育った方だと自負している。
高校を卒業した後は、自力で奨学金を借りて、3流大学に合格。
3流大学だから、就職には苦労したけど…なんとか今の会社に拾ってもらった。
だから、後にブラック企業なんだな…と知っても、
拾ってもらった恩でなんとか頑張って来た…
正直、給料は安いから、そこからやりくりして奨学金の返済をした。
それでも朝仕事に行って、何を言っているのかわからない、唾をまき散らす上司に連れまわされて、お得意先に頭を下げ続ける日々。
営業周りが終わったら、会社に帰って…
押し付けられた、見積もり書の作成や…次のプレゼンの資料作成、別の案件の打ち合わせのやりとり。
しまいには他部署のヘルプ等…仕事は多岐にわたるが、ヘトヘトになるまで働いて、何とか終電までに終わるように仕事を終わらせる。
終わらなければ、自宅には帰れず、会社に泊まる羽目になる。
給料も少なければ、休みなんてものはないし、残業代も出ない。
だから彼女なんて出来たこともないし、作る余裕もない。
そんな自分の癒しといば、たまに見る異世界転生もの小説…なんてことはない。
大人なお店の口コミ掲示板で、行ってもないのに
動画や修正された写真、写メ日記と呼ばれるブログなどを眺めて
ああだこうだ…同じ穴の貉同士で言い合うのが楽しみだった。
体力の限界で、居眠りなんてした日には…目が回るほどの仕事を上司から押し付けられる事になりかねないので、エナジードリンクとカフェインは御用達。
会社で受けさせられる健康診断も、要再検査の嵐で真赤一色だったから…
やばいやばい、とは思ってたけど。
やっぱり、ぽっくり逝っちゃたんだ…そっか死んだのか、俺。
意識を失って、ビジネスチェアから転がり落ち床に倒れる自分を見て、
隣から、駆け寄ってきてくれる…後輩の山口。
人の心配なんてしてる場合じゃないだろうに、心配そうな表情を向けてくれた彼に
面倒かけてごめん。と申し訳ない気持ちになった。
「ってことで、わかってもらえた?」
「はい…どうやらホントの事のようですね。」
「さっきとは違って、物分かりいいじゃん。」
「流石に、自分で目の当たりにすれば理解しますし…
人にそんな映像見せるのなんて、人間じゃできないですから…
理解をせざるを負えないといいますか…」
「じゃ、ちゃちゃっと本題も理解してもらおっか!」
「え?」
疑問の声を上げたの束の間、さっきとは逆の翼の先端をこちらに向けた。
同じように風圧のようなものを受けるが、次は視界が変わることはなかった。
その代わり、バチバチと火花のような光が目の前にチラついたと思うと、
脳内に知らない知識がダムの水門を開け放った奔流のように流れこんできた。
矢継ぎ早に、今までの通常の感覚が戻ってくる。
「わかった?」
「はい。びっくりはしてますけど…わかります。」
「へぇー次は変な声あげないんだ?」
案の定確証はないが、こちらを下からのぞき込むような素振りをして試すような…
物言いをしている、気がする。
しかし、脳内にぶち込まれた知識を要約すると…こうだ。
目の前にいる神とやらは、どうやら地球の担当らしいのだが…
どうやら、ほかの世界?というのも存在している…らしい。
“異世界”にも担当している神が存在し、
細かいことはわからないが、この地球担当の神は異世界の神と契約があるから
地球の人間の魂を定期的に送って、支援しなくちゃいけない…と
目的は“文化の促進”。
地球の文化レベルは異世界と比べると結構進んでいるらしく、
異世界の文化レベルを盛り上げるための、カンフル剤になれという事だ。
しかし、異世界には、魔力という力があり、魔物というモンスターがいる…
地球人をそのまま送りこんでも、
結構な確率で、目的半ばで死んでしまうらしい。
そんな現状だったため、送り込む魂には生き残れるように
神からの祝福ギフトとして、本人が望むスキルを与えるようになったのだとか…
魂のそれぞれの素養はあるらしいけれども…
ある程度の希望は叶うらしい…まぁご都合主義ってやつだ。
そのギフトは、異世界にいるヒトガタの種族であれば誰もが持っていて、
スキルの強さにはランクが存在するらしい。
コモン>レア>スーパーレア>ユニーク の順で希少性が上がり、
効果も強力になっていく。ゲームとか漫画っぽいな…
定期的に支援していると言っても、あんまり頻繁には送ってはいけないらしい…
なんでか、わからんけれども。
とにかく人が一般的に生きる60年ぐらいの間隔を空けているようだ。
異世界は地球でいうところの中世ヨーロッパぐらいを基本に
いままで渡ったであろう、地球人が広めた文化が進んでいるらしい。
少し馴染んでもらうのにも、時間が必要だろう…という事で、
向こうの人間として生まれ変わる“転生”をさせて頂きますよウンタラカンタラ…
「って事ですよね?」
「だいたいそんな感じ、やっぱり口で説明するよりコッチのがはやいわ。」
齟齬があってはいけないと、復唱したのだが…
もはや、返事をするときに…コッチを見てないような気がする。
なんやこいつ。
「んで、地球でうまくいかなかった、
可哀そうなアンタを選んでやったんだ。感謝しろよ?」
尊大な物言いをされつつ、こっちの初期対応のミスが原因なので…我慢、我慢。
ってか、めっちゃ足元見られてるな…
「あと、さっきの補足をするなら…
ギフトとは別に、ステータスと異世界言語はつくからなー」
「言語違うんですものね。ありがとうごz—」
「欲しいギフト、さっさと選んでくれる?
この説明してる間、神力使わないといけないんだわ。はやくしてー」
どんどん対応適当になってきてるな…ちょっと腹立ってきた。
「どんなのでもいける?」
「はぁ?いきなりタメ語とか、フルチンのくせに調子こいてんな?」
ちょっとイラっとしてしまったせいか、口調にでてしまった。
でもその言いぐさ…昭和のヤンキーなん?
「すみません。失言しました。
どんな能力でもいいんですか?」
「チッ、魂の素養はあるってぶち込んだろ?
めんどくせぇが決まりだから、ある程度は受け入れてやるよ。」
「モテる能力で!」
即答だった。前世では縁がなかった、
しかし異世界でなら!!!と願わずにはいられなかった…
「はははははっ!!!!」
と自称神は大爆笑したかと思えば、ひとしきり笑ったあと…
ニチャァと嫌な笑みを浮かべた気がした。
「ごほんっ、では地球では“愛”に恵まれなかった、
新城タケルの願いを叶え…
このスキルを授けよう!」
自称神が、そう言い終わると…
上方に人の頭よりも少しばかり大きいシャボン玉のようなものが浮かびあがった。
それはみるみるうちに下降してきて、俺の顔に当たるとはじけ飛んだ。
「うぉ!!!え、これで終わりですか?」
「んじゃ、異世界に送るねー」
「え!ちょっと待ってくだs—」
「あ、与えたスキルは(ステータス)って唱えれば、出るからー」
「え?んおぉぉぉぉぉぉぉおー!!」
質問をしようと思ってたのも束の間…
再びここに辿りついた時のように、落下するような浮遊感に襲われ、
いつの間にか意識を手放していた。
―――――チュンチュン…
(んぁ、いてててて…)
鳥のさえずりのような音で目をさます。
これが伝説に聞く―朝チュン…
目を開くと、そこには可憐な女性などおらず…
ずっと苦楽をともにしてきた、My Jr.が…
「おはよう、二度目だね////」
なんて、ひとりごとを呟き…体を起こす。
どうやら生まれたままの姿で、恥ずかしい場所をお天道様に広げながら、
丸くなる態勢で…この世界に送られたらしい。
でも、そっか服すら着てないのか…転生だもんね。
ん?転生?おん?見慣れたMy Jr.??
「うぉぉぉぉぉぉぉぉい!!!!!ハメやがったなぁ!!!!!」
異世界人顔負け、育ったらイケメンな外人顔になるんだろ?キリッ
っと思っていた時期もありました。
手のひらで、顔や体を触りまくる…
長年触りなれた感触に、急にどこからともなく走り出す。
見慣れない木や植物が生い茂る中、その奥には青空が広がっている。
遠目に見える野鳥の類も、今は気にならない…
獣道と呼べるかどうかの場所をひたすらに走り抜ける。
どれだけ走ったのか、体感でもわからないが…
遠くの方に水の音が聞こえた気がして、そっちに向かって方向転換をした。
走っていくと、水の音がだんだん大きくなっていき…
木々の隙間に、川の水のきらめきを発見すると、更に速度があがった。
川面にたどりつき、水面で自分の顔を確認した。
見慣れた、新城猛の…30歳、男、日本人の…顔がそこにはあった。
「転生って言ったよなぁぁぁぁぁ!これは転移だろぉぉぉぉぉぉ!」
異世界に転移した、元ブラック企業の社畜
新城猛の魂の叫びはどこまでも響くのだった。
「新城さ‥‥だ‥‥‥ぶです‥?」
(え?なんだって?よく聞こえないよ…)
誰かが俺に話かけているような気がするが、水の中で聞く音のようにボアボアしてよく聞き取れない。
どこからか落下するような、浮遊感に襲われるが…一時するとそれもなくなった。
最後に目の中に飛び込んできた光景は、暗闇の中で光るデスクライトとパソコンのディスプレイの青い光だった。
「んだぁぁぁぁぁぁぁー!!!!」
寝坊した時のように、勢いよく飛び起きた。
「ん??あれ???体動くぞ!!え、じゃあ…さっきのアレはなんだったんだ?」
顎に手を触れながら物思いに耽りそうに――――
「ちょっと、いいかな?」
(うぇ!?あぁぁぁぁ!?)
と声は上げないが、再び飛び上がりそうになりながら、瞬発的に顔を腕で隠してしまう。
「そんなにびっくりしなくていいじゃない。」
そんなことを言われて、眼前にまで上げた腕の隙間から、声のする方を見た。
人なのかよくわからない、ヒトガタ??はしてる…ような気がする。
二度も声をかけられたというのに、姿を見ても男なのか女なのかもわからない。
しかし、何故かはわからない癖に…これみよがしに、1対の天使の翼らしきものを携えているのは認識できる。
「はじめまして、新城タケルさん。私は神です。」
「は?」
訳のわからない、胡散臭いセリフを吐かれてしまったので、反射的に失礼な返答をしてしまった。
「すみません。もう一度お伺いしてもよろしいでしょうか…」
「ですから、私は”あなたたち”人間の言うところの神です。」
は?ブラック企業勤務よろしく、
誰にも失礼にならない言葉で聞き返したのにも関わらず、やっぱりわからなかった。
しかし、そんな現状とはうらはらに…体は伸身で指先はまっすぐ伸ばした綺麗なフォームで、
45°~90°のお辞儀をしながら自己紹介をしてしまうのであった。
「本日はお世話になります。はじめまして!新城 猛と申します。」
内心やってしまったと思った時には”後の祭り”。
「ご丁寧にありがとうございます。
でもそんなにきれいにキメても、あなたフルチンですよ。」
そう、お辞儀を深くすればするほど気づいてしまったのだ…
My Jr.が目の前に広がるのだから。
「のぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
と奇声を上げるのと同時に、体をよじり…
どこかのお笑い芸人と同じく、片足で立ちながら、もう片方の足のふとももで隠した。続いて、変な空気になりかける事を危惧して
「いやん/////」 と照れ顔をしてみた。
「‥‥‥‥」
数秒間待っても、返ってきたのは無言でした。
表情がわからないから、返答あると思って待ったのに…
「新城タケルさん、あなたは…」
あれ?と思ってそちらを向くと…
「あんたは、ブラック企業で働きすぎて過労で死んだんだよ。」
「は?」
また失礼な返答を返してしまった。
「だから死んだんだって、何回言わせるの?」
「あ、いや…そちらにでは、なくて…
あのぉ、いきなり物言いが変わりましたので…」
「こんな変なやつに、まともに対応しててもバカらしいじゃん。」
…どうやら、“自称”神の地雷をぶち抜いてしまったらしい。
「だから最初から、こうすればよかったんだよ…」
声色を抑揚を定かではないが、きっと心底呆れてるように、
こちらに片方の翼の先端を向けた。
すると動作と不釣り合いな、風圧のようなものを受け…
目の前が真っ暗になった。
(ん?あれは…俺だ。)
目の前に広がるは、俺の…
―新城タケルーのアルバム写真のスライドショーというべきか…
父親も母親も…名前はおろか、顔だって知らない。
物心がつくときには、児童養護施設にいた。
児童養護施設だって、完全に親がいないのはごく少数で…
たいがい、親の生活能力に問題があったり、何かしらの不都合があって預けられることが多いようだ。
ドラマにも、そういう設定があったりして…
家族がいないにしても、施設のみんなは家族同然の絆で結ばれている…
なんてのは幻想だ。
現実は親の愛を知らずに育ってきて、施設の年長者にパシリにされたりで…
だいたいグレる。うん、これガチで…
まぁそんな環境の中でも、勉強はできなかったけど、
こんなんでも、まともに育った方だと自負している。
高校を卒業した後は、自力で奨学金を借りて、3流大学に合格。
3流大学だから、就職には苦労したけど…なんとか今の会社に拾ってもらった。
だから、後にブラック企業なんだな…と知っても、
拾ってもらった恩でなんとか頑張って来た…
正直、給料は安いから、そこからやりくりして奨学金の返済をした。
それでも朝仕事に行って、何を言っているのかわからない、唾をまき散らす上司に連れまわされて、お得意先に頭を下げ続ける日々。
営業周りが終わったら、会社に帰って…
押し付けられた、見積もり書の作成や…次のプレゼンの資料作成、別の案件の打ち合わせのやりとり。
しまいには他部署のヘルプ等…仕事は多岐にわたるが、ヘトヘトになるまで働いて、何とか終電までに終わるように仕事を終わらせる。
終わらなければ、自宅には帰れず、会社に泊まる羽目になる。
給料も少なければ、休みなんてものはないし、残業代も出ない。
だから彼女なんて出来たこともないし、作る余裕もない。
そんな自分の癒しといば、たまに見る異世界転生もの小説…なんてことはない。
大人なお店の口コミ掲示板で、行ってもないのに
動画や修正された写真、写メ日記と呼ばれるブログなどを眺めて
ああだこうだ…同じ穴の貉同士で言い合うのが楽しみだった。
体力の限界で、居眠りなんてした日には…目が回るほどの仕事を上司から押し付けられる事になりかねないので、エナジードリンクとカフェインは御用達。
会社で受けさせられる健康診断も、要再検査の嵐で真赤一色だったから…
やばいやばい、とは思ってたけど。
やっぱり、ぽっくり逝っちゃたんだ…そっか死んだのか、俺。
意識を失って、ビジネスチェアから転がり落ち床に倒れる自分を見て、
隣から、駆け寄ってきてくれる…後輩の山口。
人の心配なんてしてる場合じゃないだろうに、心配そうな表情を向けてくれた彼に
面倒かけてごめん。と申し訳ない気持ちになった。
「ってことで、わかってもらえた?」
「はい…どうやらホントの事のようですね。」
「さっきとは違って、物分かりいいじゃん。」
「流石に、自分で目の当たりにすれば理解しますし…
人にそんな映像見せるのなんて、人間じゃできないですから…
理解をせざるを負えないといいますか…」
「じゃ、ちゃちゃっと本題も理解してもらおっか!」
「え?」
疑問の声を上げたの束の間、さっきとは逆の翼の先端をこちらに向けた。
同じように風圧のようなものを受けるが、次は視界が変わることはなかった。
その代わり、バチバチと火花のような光が目の前にチラついたと思うと、
脳内に知らない知識がダムの水門を開け放った奔流のように流れこんできた。
矢継ぎ早に、今までの通常の感覚が戻ってくる。
「わかった?」
「はい。びっくりはしてますけど…わかります。」
「へぇー次は変な声あげないんだ?」
案の定確証はないが、こちらを下からのぞき込むような素振りをして試すような…
物言いをしている、気がする。
しかし、脳内にぶち込まれた知識を要約すると…こうだ。
目の前にいる神とやらは、どうやら地球の担当らしいのだが…
どうやら、ほかの世界?というのも存在している…らしい。
“異世界”にも担当している神が存在し、
細かいことはわからないが、この地球担当の神は異世界の神と契約があるから
地球の人間の魂を定期的に送って、支援しなくちゃいけない…と
目的は“文化の促進”。
地球の文化レベルは異世界と比べると結構進んでいるらしく、
異世界の文化レベルを盛り上げるための、カンフル剤になれという事だ。
しかし、異世界には、魔力という力があり、魔物というモンスターがいる…
地球人をそのまま送りこんでも、
結構な確率で、目的半ばで死んでしまうらしい。
そんな現状だったため、送り込む魂には生き残れるように
神からの祝福ギフトとして、本人が望むスキルを与えるようになったのだとか…
魂のそれぞれの素養はあるらしいけれども…
ある程度の希望は叶うらしい…まぁご都合主義ってやつだ。
そのギフトは、異世界にいるヒトガタの種族であれば誰もが持っていて、
スキルの強さにはランクが存在するらしい。
コモン>レア>スーパーレア>ユニーク の順で希少性が上がり、
効果も強力になっていく。ゲームとか漫画っぽいな…
定期的に支援していると言っても、あんまり頻繁には送ってはいけないらしい…
なんでか、わからんけれども。
とにかく人が一般的に生きる60年ぐらいの間隔を空けているようだ。
異世界は地球でいうところの中世ヨーロッパぐらいを基本に
いままで渡ったであろう、地球人が広めた文化が進んでいるらしい。
少し馴染んでもらうのにも、時間が必要だろう…という事で、
向こうの人間として生まれ変わる“転生”をさせて頂きますよウンタラカンタラ…
「って事ですよね?」
「だいたいそんな感じ、やっぱり口で説明するよりコッチのがはやいわ。」
齟齬があってはいけないと、復唱したのだが…
もはや、返事をするときに…コッチを見てないような気がする。
なんやこいつ。
「んで、地球でうまくいかなかった、
可哀そうなアンタを選んでやったんだ。感謝しろよ?」
尊大な物言いをされつつ、こっちの初期対応のミスが原因なので…我慢、我慢。
ってか、めっちゃ足元見られてるな…
「あと、さっきの補足をするなら…
ギフトとは別に、ステータスと異世界言語はつくからなー」
「言語違うんですものね。ありがとうごz—」
「欲しいギフト、さっさと選んでくれる?
この説明してる間、神力使わないといけないんだわ。はやくしてー」
どんどん対応適当になってきてるな…ちょっと腹立ってきた。
「どんなのでもいける?」
「はぁ?いきなりタメ語とか、フルチンのくせに調子こいてんな?」
ちょっとイラっとしてしまったせいか、口調にでてしまった。
でもその言いぐさ…昭和のヤンキーなん?
「すみません。失言しました。
どんな能力でもいいんですか?」
「チッ、魂の素養はあるってぶち込んだろ?
めんどくせぇが決まりだから、ある程度は受け入れてやるよ。」
「モテる能力で!」
即答だった。前世では縁がなかった、
しかし異世界でなら!!!と願わずにはいられなかった…
「はははははっ!!!!」
と自称神は大爆笑したかと思えば、ひとしきり笑ったあと…
ニチャァと嫌な笑みを浮かべた気がした。
「ごほんっ、では地球では“愛”に恵まれなかった、
新城タケルの願いを叶え…
このスキルを授けよう!」
自称神が、そう言い終わると…
上方に人の頭よりも少しばかり大きいシャボン玉のようなものが浮かびあがった。
それはみるみるうちに下降してきて、俺の顔に当たるとはじけ飛んだ。
「うぉ!!!え、これで終わりですか?」
「んじゃ、異世界に送るねー」
「え!ちょっと待ってくだs—」
「あ、与えたスキルは(ステータス)って唱えれば、出るからー」
「え?んおぉぉぉぉぉぉぉおー!!」
質問をしようと思ってたのも束の間…
再びここに辿りついた時のように、落下するような浮遊感に襲われ、
いつの間にか意識を手放していた。
―――――チュンチュン…
(んぁ、いてててて…)
鳥のさえずりのような音で目をさます。
これが伝説に聞く―朝チュン…
目を開くと、そこには可憐な女性などおらず…
ずっと苦楽をともにしてきた、My Jr.が…
「おはよう、二度目だね////」
なんて、ひとりごとを呟き…体を起こす。
どうやら生まれたままの姿で、恥ずかしい場所をお天道様に広げながら、
丸くなる態勢で…この世界に送られたらしい。
でも、そっか服すら着てないのか…転生だもんね。
ん?転生?おん?見慣れたMy Jr.??
「うぉぉぉぉぉぉぉぉい!!!!!ハメやがったなぁ!!!!!」
異世界人顔負け、育ったらイケメンな外人顔になるんだろ?キリッ
っと思っていた時期もありました。
手のひらで、顔や体を触りまくる…
長年触りなれた感触に、急にどこからともなく走り出す。
見慣れない木や植物が生い茂る中、その奥には青空が広がっている。
遠目に見える野鳥の類も、今は気にならない…
獣道と呼べるかどうかの場所をひたすらに走り抜ける。
どれだけ走ったのか、体感でもわからないが…
遠くの方に水の音が聞こえた気がして、そっちに向かって方向転換をした。
走っていくと、水の音がだんだん大きくなっていき…
木々の隙間に、川の水のきらめきを発見すると、更に速度があがった。
川面にたどりつき、水面で自分の顔を確認した。
見慣れた、新城猛の…30歳、男、日本人の…顔がそこにはあった。
「転生って言ったよなぁぁぁぁぁ!これは転移だろぉぉぉぉぉぉ!」
異世界に転移した、元ブラック企業の社畜
新城猛の魂の叫びはどこまでも響くのだった。
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そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。
理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。
王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー!
HOT男性49位(2025年9月3日0時47分)
→37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)
『25歳独身、マイホームのクローゼットが異世界に繋がってた件』 ──†黒翼の夜叉†、異世界で伝説(レジェンド)になる!
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ある日、自宅のクローゼットを開けた瞬間、突如現れた異世界へのゲートに吸い込まれてしまう。
そこで彼は、伝説の職業《深淵の支配者(アビスロード)》として召喚され、
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さらにはなぜか「女子からの好感度+999」まで付与されて――
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