[完結]貴方なんか、要りません

シマ

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大公様の話

 殿下の突然の来訪は驚いたけど魔獣の世話を終えた私は、大公様がくる前に汚れを落として支度を済ませる。準備が終わると何となく落ち着かなくて、本を取り窓際の椅子に座って読書を始めた。
 暫くして、ネロがピクッと耳を動かす音に気付いた私が、顔を上げるのと同時にドアがノックされた。

「ロゼッタ、入っても良いかな?」

 ドアの向こう側から聞こえた声は大公様の声。慌てて返事をする前にドアを開けてしまい、驚いた大公様と目が合った。

「ど、どうぞ」

 気不味いけど部屋の中に入って貰って椅子を勧めた。

「えっと、お茶いれますね」

「いや、お茶はいいから君も座ってくれ。話を聞いて欲しい」

 珍しい態度に気圧けおされて黙って頷くと、向かい側の椅子に座ろうとしてネロに邪魔された。

「ネロ……そこ退いて」

 ジッと私を見詰めるネロと、笑いを堪える大公様。気不味い雰囲気は消えたけど、座る場所に困ってしまった。

「私の隣は嫌かい?」

「っ……嫌では無いですが……」

 おいでと大公様手を差し出され、渋々隣に座る。少し動いただけで身体が触れそうな距離に目眩がした。

「ロゼッタ、私と婚約してくれないか?」

「は?……え?……えっと、私とですか?え?婚約?え?えぇぇ!?」

 大公様を見るとその瞳の中に目を丸くする自分の姿が映る。さっきまで浮かべていた笑みが消えた大公様が、私の手を両手で包み込む様に握る。咄嗟に手を引こうとしたけど、強い力で止められてしまった。

「ロゼッタ、逃げないで聞いて欲しい」

 そう言った大公様の話は、信じられないものだった。

 小さな頃から私を大切な家族の様に思っていてくれた事。
 婚約者が出来て初めて、私の事が好きだと気づいた事。
 私を取り戻したくて部下の方々まで使って、婚約破棄に必要な証拠を集めていてくれた事。

 何も知らなかった私は、ただ茫然と話を聞いていた。
 そんな私を見た大公様は、笑いながら片手を私の頬に添えて顔を近付けたかと思うと耳元に唇を寄せた。

「真っ赤な顔の君も可愛いよ」

「あ、あの!ち、ち、近い!近い!」

 婚約者が出来てから気を付けていた言葉使いが無意識に素に戻る程驚いて、私は逃げようと立ち上がったら腕を引かれて大公様の上に倒れ込んだ。

「やっと捕まえた」

「あ、あ、あの!大公様、離して!お願いだから!!!!」

「私の名前を呼ぶまで離さない」

 触れる身体から伝わる熱と、私を離さない逞しい腕に頭がクラクラしてくる。ネロに助けを求めようと視線を向けると、ニヤリと笑った気がした。絶対に楽しんでる!!ちょっと、ネロ!貴方のご主人のピンチよ!!!!

「ほら、ネロも私を認めてくれている。さぁ、昔の様に言ってごらん」

「っ……あ、アレク様」

 目尻を下げて甘く優しいその声に促され、名前を呼ぶと苦しいくらいの力で抱き締められた。

「頼む……ずっと私の側に居てくれ」

「は……はい……一生、側に居させて下さい」

 

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