[完結]私はドラゴンの番らしい

シマ

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消された記憶と魅了

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「魅了?彼女が使っていた?」

 ライオネルの呟きが聞こえたのか、一人が独り言の様に呟いた。

『そうだ。異界の記憶と魅了を共に消した』

「記憶も消したのですか?」

 記憶まで消す必要があったのか疑問に思って尋ねると、答えは簡単な話では無かった。
 それぞれの世界には、その世界にあった記憶や秩序があり、転生者がその記憶で秩序を乱す行為は世界を破壊する可能性があると言った。

『アレは異界の遊戯と現実の区別が出来ておらぬ。あのままでは、この国が崩壊した』

 国の崩壊と聞いて、三人が黙り込んで倒れたマリーナを見詰める。一人が急に首を傾げた。

「あれ?何だろう……今まであった彼女に対する気持ちが……無い?」

 気持ちが無いって、不思議な事を言う。一人が言うと残り二人も同調した。まさかコレが魅了の影響力?

「オリビア!人を呼び出して、一体何事……ど、ドラゴン殿!?」

「学校長、落ち着いて」

「落ち着いていられるか!……で、コヤツらは、何ぞや?」

 シリアスな空気も、さっきまで考えていた思考も、学校長の登場で全て霧散した。

『この学校のおさか?』

「ドラゴン殿、その通りでございます」

  今までの慌てぶりが嘘の様に綺麗な姿勢で頭を下げる学校長を見て、ライオネルは頷くとマリーナの今までの経緯を話始めた。
 学校長も異界の記憶と魅了の話は予想外だった様で、頭を抱えて泣きそうになっていた。

「報告書が……城に連絡が……」

 うわ~。そうだよね。校舎前で問題起こすし、魔法は使うし、ドラゴン来ちゃたし……うん、徹夜で書類作成だね。

「学校長、頑張って」

「お前も手伝え、オリビア」

 泣きそうな学校長に同情はするけど、今は目の前のライオネルとの時間が大事なんですよ。

『そうか……では我も城に向かいて説明しよう』

「「え?」」

『それならばオリビアが、手伝わなくともすむだろう』

 判断基準が私なんだ。少し驚いてライオネルを見詰めていると、彼の手が私の髪に触れる。無造作に下ろしていた髪を一房取ると、柔なか笑みを浮かべる。あの、その笑顔は心臓に悪いです。

『我は、早く二人きりで話したい』

「私もです」

 私の返事に満足そうな表情を見せた彼は、問題児達に手を向けると小さな光が彼らに飛んで触れた。

『ふむ……この娘は……大分、乱れた思考の様だ。男達……オリビアを無きものにする気だったか』

 彼らに関して何も話していなかったのに、一瞬で何があったかを理解したライオネルは彼らを睨む。怯える彼らの前で、私の腰に手を伸ばし引き寄せた。

「一体……何を……した?」

『記憶を視ただけの事』

 誰かの意図もない呟きに、ライオネルの答えは簡単だった。さっきの小さな光は記憶を視る為の魔法らしい。人間には難しくて使えないって残念。

『今から全員で城に行くとするか』

 その一言を言った後、ライオネルの身体が一瞬だけ光ると、次の瞬間には城の門の前に居た。
 え?お城に着いた。普通、転移魔法って自分だけ移動する筈なのに、ちゃんと全員……いる。

「……本当に……飛んだ」

 人の想像を越えるドラゴンの力に、私が要注意人物扱いだった理由を改めて実感した。

 確かに、下手にドラゴンを怒らせちゃいけないわ。
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