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その五
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帰宅後、ユーナは図書室の蔵書を読み漁っていた。先祖が遺した蔵書や手記には手掛かりは無く、宝石の華がなんなのか全く分からなかった。
宝石の華は家族にも話していない。不思議と誰にも教えてはいけない気がして、ハンカチに包んだまま常に持ち歩いていた。
顔合わせから三日後の夜、今日も寝る前に先祖の手記を読んでいると、窓際から小さな物音がした。顔を上げたが風のせいかと気にせず、本に視線を戻すと再び物音がした。
続けて聞こえた物音が気になってカーテンを少し開けると、ベランダの手摺に座るハリスが手を振っていた。
「……なにやってんの?」
「つれない花嫁だな。また会おうと言っただろ?」
ユーナはカーテンを閉めようとしたが、ハリスの顔色が悪い事に気付いて止めた。
「具合が悪いの?」
「あぁ、魔力切れだ」
彼女は大きなため息を吐くと、窓を開けハリスを中に招き入れた。
「こんな寒い夜に来るなんて、常識がないのね」
「言ってくれるな。これでも昼間は仕事で忙しいのだ」
小さく笑うハリスは顔色は悪いが楽しそうだ。ユーナがムッとした表情で睨み付けるが、反省する様子も帰る素振りも無い。
「何のよう?」
ユーナが諦めてハリスに問えば、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべて近付いてきた。
「魔力を寄越せ」
「はあ?なに言ってんの?」
ユーナがハリスに抱き締めらたと思った時には唇を奪われた。驚いて離れようと踠いても、ハリスの腕は緩む事無く痛いくらいの強さで離さなかった。
息が苦しくなる程の長いキスから解放されると、ユーナは息も絶え絶えで肩を揺らしていた。
フラリと揺れたユーナの身体を難なく支えたハリスが、真っ赤になった彼女の顔を覗き込むと口の端を上げて笑う。
「ごちそうさま。これで暫くは問題ないな」
「っ~殺す!」
ユーナが怒りに任せてアイスニードルを放つと、ハリスは笑顔のまま受け止めて氷を砕いた。怖い怖いと呟くが、顔は笑顔のまま余裕がある。
「ムカツク!何なのよ、その余裕は!魔力なんか要らないじゃない!」
「それがお前の素か?」
ユーナは令嬢らしい丁寧な話し方から、子供の頃の様な素の話し方に戻ってしまったことに気付いて、慌てて口元を押さえた。ユーナの焦った姿に気を良くしたハリスが、微かに笑った。
「気取った話し方より、今の方がずっと良い」
「へ?」
ハリスの笑顔に驚いているユーナの顎を掴んで上げると、再び唇を奪った。
「おやすみ、ユーナ」
「っ……に……二度と来るなぁぁ!」
夜にも関わらずユーナが大声で叫んだが、家の者には気付かれる事無くハリスは夜の闇に溶ける様に消えた。
「ムカツク!弱点を調べて消し炭にしてやる!!」
まだ彼女は知らない。
宝石の華の持つ意味が『愛の結晶』だと言う事を。
そして、本格的な魔力の譲渡には、身体を繋げないといけない事を。
その事実を知った彼女が魔王ハリスに向かって叫ぶまで、あと半年
「ハリスのバカ!変態!アンタなんか魔力切れで死んじゃえ!」
「つれないなぁ、ユーナ。そろそろ諦めたらどうだ?」
「イーヤーでーす!私は普通の人と結婚したいの!!」
宝石の華は家族にも話していない。不思議と誰にも教えてはいけない気がして、ハンカチに包んだまま常に持ち歩いていた。
顔合わせから三日後の夜、今日も寝る前に先祖の手記を読んでいると、窓際から小さな物音がした。顔を上げたが風のせいかと気にせず、本に視線を戻すと再び物音がした。
続けて聞こえた物音が気になってカーテンを少し開けると、ベランダの手摺に座るハリスが手を振っていた。
「……なにやってんの?」
「つれない花嫁だな。また会おうと言っただろ?」
ユーナはカーテンを閉めようとしたが、ハリスの顔色が悪い事に気付いて止めた。
「具合が悪いの?」
「あぁ、魔力切れだ」
彼女は大きなため息を吐くと、窓を開けハリスを中に招き入れた。
「こんな寒い夜に来るなんて、常識がないのね」
「言ってくれるな。これでも昼間は仕事で忙しいのだ」
小さく笑うハリスは顔色は悪いが楽しそうだ。ユーナがムッとした表情で睨み付けるが、反省する様子も帰る素振りも無い。
「何のよう?」
ユーナが諦めてハリスに問えば、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべて近付いてきた。
「魔力を寄越せ」
「はあ?なに言ってんの?」
ユーナがハリスに抱き締めらたと思った時には唇を奪われた。驚いて離れようと踠いても、ハリスの腕は緩む事無く痛いくらいの強さで離さなかった。
息が苦しくなる程の長いキスから解放されると、ユーナは息も絶え絶えで肩を揺らしていた。
フラリと揺れたユーナの身体を難なく支えたハリスが、真っ赤になった彼女の顔を覗き込むと口の端を上げて笑う。
「ごちそうさま。これで暫くは問題ないな」
「っ~殺す!」
ユーナが怒りに任せてアイスニードルを放つと、ハリスは笑顔のまま受け止めて氷を砕いた。怖い怖いと呟くが、顔は笑顔のまま余裕がある。
「ムカツク!何なのよ、その余裕は!魔力なんか要らないじゃない!」
「それがお前の素か?」
ユーナは令嬢らしい丁寧な話し方から、子供の頃の様な素の話し方に戻ってしまったことに気付いて、慌てて口元を押さえた。ユーナの焦った姿に気を良くしたハリスが、微かに笑った。
「気取った話し方より、今の方がずっと良い」
「へ?」
ハリスの笑顔に驚いているユーナの顎を掴んで上げると、再び唇を奪った。
「おやすみ、ユーナ」
「っ……に……二度と来るなぁぁ!」
夜にも関わらずユーナが大声で叫んだが、家の者には気付かれる事無くハリスは夜の闇に溶ける様に消えた。
「ムカツク!弱点を調べて消し炭にしてやる!!」
まだ彼女は知らない。
宝石の華の持つ意味が『愛の結晶』だと言う事を。
そして、本格的な魔力の譲渡には、身体を繋げないといけない事を。
その事実を知った彼女が魔王ハリスに向かって叫ぶまで、あと半年
「ハリスのバカ!変態!アンタなんか魔力切れで死んじゃえ!」
「つれないなぁ、ユーナ。そろそろ諦めたらどうだ?」
「イーヤーでーす!私は普通の人と結婚したいの!!」
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