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おまけ 三年後
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晴れ渡る青空のもと、家族や友人達に祝福され一つの結婚式が行われようとしている。
「いい加減、機嫌をなおせ、ユーナ」
「……誰のせいよ」
真っ白のウエディングドレスを身に纏う今日の主役の花嫁は不機嫌な表情で、黒のタキシードを着た花婿が苦笑いを浮かべている。
「私のせいか?」
「そうよ!もう信じられない!」
ユーナはハリスの顔を睨みながら、メイク道具を広げる。
「仕方ないだろう。お前に触れないと魔力切れで倒れてしまうのだから」
「それとこれとは別!痕をつけるな!」
ブツブツと文句を言いながら、彼女がドレスの隙間から覗く赤い痕を隠す。何度も鏡で確認する姿を後ろから眺めているハリスは、彼女には見えない首の後ろにも痕をつけていた。
「印をつけないと、要らん奴らが寄って来るだろう?」
「私はアンタの物じゃ無いの!誰も寄って来ないわよ、もう!」
ユーナが見逃している赤い痕を触りながら、ハリスはご機嫌な笑顔で髪型を整えている。
「お前の支度なら、私がやるぞ?」
「……ちょっと外で待っててくれる?」
かなり機嫌の悪いユーナに、ハリスは肩を竦めると部屋の外へと出た。ドア越しに彼女がブツブツと文句を言いながら、侍女に指示を出して衣装の乱れを直しているようだ。意志の強さが垣間見える燃える様なルビーの瞳。怒りで更に深みが増すその色は、ハリスを虜にして離さない。その瞳が見たくて自分だけを見て欲しくて、つい怒らせてしまう。そんな自分にハリスは苦笑いを浮かべた。
「ハリス様、ご報告です」
誰も居ない廊下に突然、現れたのは人形の魔族。魔族は勇者の攻撃で散り散りになったが、今でも生き残っている。しかし、大昔の様に人間に攻撃的な態度は無く、共存を目指していた。
「何だ」
「ユーナ様を狙う不届き者がおります」
ユーナの名前が出た途端、片方の眉がピクリと動き眼光が鋭くなる。報告にきた魔族の身体は、ハリスの怒りに当てられて震えていた。
「……ナイトメア、聞こえるか?」
何も無い壁に向かってハリスが話しかけると、黒いシミが広がり一人の魔族が顔を出した。
『何の様だ』
「我が花嫁を狙う不届き者がいるようだ。夢で思う存分、暴れて欲しいがどうする?」
『……報酬は?』
ハリスが舌打ちしてから考える。その姿をナイトメアは、ニタニタと嫌な笑みで見ている。
「ユーナの手作りケーキ」
『勿論、彼女がお茶をいれてくれるんだろうな?』
「クソ!ユーナは私の花嫁だぞ!」
『王よ、諦めろ。彼女は生まれ変わって、更に魅力が増し魔族を惹き付ける。独り占めしようしても無駄だ』
ハリスは苦虫を10匹ほど噛み潰したよう顔をしたが、ナイトメアは楽しみだと一言だけ残して消えた。
「ハリス、準備出来たわよ……何よ」
支度が済んで廊下に顔を出すと、ハリスが大きなため息を吐いた。
「ナイトメアがユーナの手作りケーキが食べたいと言ってる」
「そうなんだ。何時来るか決まったら教えてね」
あっさり承諾するユーナに、ハリスは更に機嫌が悪くなる。そんな彼を気にせず、ユーナはどんなケーキを作るか考えていた。
「お前、夢魔が怖くないのか?」
「え?貴方の友達でしょう。貴方の親しい人だもの仲良くしたいわ」
ハリスの言葉にあっさりとそう言い返したユーナは、ドレスの裾を気にして彼の顔を見ていなかった。
「っ~この小悪魔」
「はぁ!?急に何よ!喧嘩……顔、赤いけど熱あるの?」
赤い顔を片手で隠して呻くハリスを心配するユーナ。そんな二人をナイトメアは壁の向こうから覗いて笑い声を上げると、報告に来ていた魔族から不届き者の情報を受け取り闇に溶けて消えた。
『こんな生活も悪くないな、王よ』
「いい加減、機嫌をなおせ、ユーナ」
「……誰のせいよ」
真っ白のウエディングドレスを身に纏う今日の主役の花嫁は不機嫌な表情で、黒のタキシードを着た花婿が苦笑いを浮かべている。
「私のせいか?」
「そうよ!もう信じられない!」
ユーナはハリスの顔を睨みながら、メイク道具を広げる。
「仕方ないだろう。お前に触れないと魔力切れで倒れてしまうのだから」
「それとこれとは別!痕をつけるな!」
ブツブツと文句を言いながら、彼女がドレスの隙間から覗く赤い痕を隠す。何度も鏡で確認する姿を後ろから眺めているハリスは、彼女には見えない首の後ろにも痕をつけていた。
「印をつけないと、要らん奴らが寄って来るだろう?」
「私はアンタの物じゃ無いの!誰も寄って来ないわよ、もう!」
ユーナが見逃している赤い痕を触りながら、ハリスはご機嫌な笑顔で髪型を整えている。
「お前の支度なら、私がやるぞ?」
「……ちょっと外で待っててくれる?」
かなり機嫌の悪いユーナに、ハリスは肩を竦めると部屋の外へと出た。ドア越しに彼女がブツブツと文句を言いながら、侍女に指示を出して衣装の乱れを直しているようだ。意志の強さが垣間見える燃える様なルビーの瞳。怒りで更に深みが増すその色は、ハリスを虜にして離さない。その瞳が見たくて自分だけを見て欲しくて、つい怒らせてしまう。そんな自分にハリスは苦笑いを浮かべた。
「ハリス様、ご報告です」
誰も居ない廊下に突然、現れたのは人形の魔族。魔族は勇者の攻撃で散り散りになったが、今でも生き残っている。しかし、大昔の様に人間に攻撃的な態度は無く、共存を目指していた。
「何だ」
「ユーナ様を狙う不届き者がおります」
ユーナの名前が出た途端、片方の眉がピクリと動き眼光が鋭くなる。報告にきた魔族の身体は、ハリスの怒りに当てられて震えていた。
「……ナイトメア、聞こえるか?」
何も無い壁に向かってハリスが話しかけると、黒いシミが広がり一人の魔族が顔を出した。
『何の様だ』
「我が花嫁を狙う不届き者がいるようだ。夢で思う存分、暴れて欲しいがどうする?」
『……報酬は?』
ハリスが舌打ちしてから考える。その姿をナイトメアは、ニタニタと嫌な笑みで見ている。
「ユーナの手作りケーキ」
『勿論、彼女がお茶をいれてくれるんだろうな?』
「クソ!ユーナは私の花嫁だぞ!」
『王よ、諦めろ。彼女は生まれ変わって、更に魅力が増し魔族を惹き付ける。独り占めしようしても無駄だ』
ハリスは苦虫を10匹ほど噛み潰したよう顔をしたが、ナイトメアは楽しみだと一言だけ残して消えた。
「ハリス、準備出来たわよ……何よ」
支度が済んで廊下に顔を出すと、ハリスが大きなため息を吐いた。
「ナイトメアがユーナの手作りケーキが食べたいと言ってる」
「そうなんだ。何時来るか決まったら教えてね」
あっさり承諾するユーナに、ハリスは更に機嫌が悪くなる。そんな彼を気にせず、ユーナはどんなケーキを作るか考えていた。
「お前、夢魔が怖くないのか?」
「え?貴方の友達でしょう。貴方の親しい人だもの仲良くしたいわ」
ハリスの言葉にあっさりとそう言い返したユーナは、ドレスの裾を気にして彼の顔を見ていなかった。
「っ~この小悪魔」
「はぁ!?急に何よ!喧嘩……顔、赤いけど熱あるの?」
赤い顔を片手で隠して呻くハリスを心配するユーナ。そんな二人をナイトメアは壁の向こうから覗いて笑い声を上げると、報告に来ていた魔族から不届き者の情報を受け取り闇に溶けて消えた。
『こんな生活も悪くないな、王よ』
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