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第13話 あの塔はいずれ
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今日は、金曜日です。
待ちに待った遠足の日。
昨日は、律さん達とお菓子を買いに行って準備は万端です。
万端でした。
しかし――
「まーだ外の見てんの」
「律さん……」
「しょうがないよ。雨じゃ」
今日は、雨です。
しんしんとした冷たい空気が窓を打ち付けて濡らしていきます。
私のテンションも冷え切っています。
「降水確率三十パーセントだったのに」
「しかたないですよー」
「でもー」
「まぁ、雨天時は学校内でのレクリエーションだから、楽しもうよ。学年ごとだから、夕奈もいるし」
「……はい」
行きたかったなー。あそこ
私は、今日行くはずだった場所をみつめため息を漏らします。
「……今度みんなで行けばいいんじゃない」
「夕奈さん」
気づいたら、夕奈さんも来ていました。
「そうですね」
せっかくの時間ですしみんなと楽しく過ごしたいし
「珍しいな夕奈。お前は遠足反対派だろ。てっきり喜んでいるのかと」
「遠足は嫌い。疲れるし。団体行動自体が嫌いだし。でも――」
「でも?」
「あんな顔されるのも嫌」
「夕奈ちゃーん」
「ちがっ、辛気臭い顔した奴が近くにいると目障りなだけ」
「そうですかー?」
「もういい」
窓から離れて皆さんが集まっているところに行くと、顔をほのかに赤くした夕奈さんが丁度教室を出て行っていました。
「あれ、夕奈さんどこかに行ったんですか」
「「さぁ」」
「?」
律さんと柚季さんはにこやかに答えました。
レクリエーションは、学年で二時間ごとに交代で体育館を使用し、後は自由行動です。
「疲れましたー」
私達一年生は、各クラス男女別でドッヂボールのトーナメント戦をしました。
と言っても、私たちのクラスは一回戦で負けてしまって、後は見学するだけです。
「まぁ、一回戦だけだからまだマシじゃない」
「私ー、運動はあまり得意ではないんですよねー」
「……駄肉の付いた乳牛だから。仕方ない」
「夕奈さん! いつの間に」
気づくと夕奈さんが隣に座っていました。
「もう! それやめてくださいってば!」
「夕奈さんのクラスも終わったんですか?」
「終わった」
夕奈さんは、嬉しそうに言います。
「嬉しそうに。そりゃあんだけやる気のない奴がいたら負けるでしょ」
「律さんは夕奈さん達の試合を見たんですか」
「まぁ、すぐに見るのやめたけどね。こいつ試合開始から一歩も動かずぼけーっと立っているだけだったんだから」
うわっ、容易に想像できる
「何よ春、その眼は」
「いえー、何でも」
「疲れるから仕方ないでしょ。汗かくの嫌いだし」
「そんなことばっかりやってるから、白い目で見られるんだろ」
「うるさいっ」
「まぁまぁ、二人とも。……それより、質問良いですか」
「どうしたんですかー」
「あの今日の遠足に行く場所になんですけど」
「まだ気にしてたの?」
「この町に来てからずっと見えてて、何だか気づけばいつも視界に入っちゃってる感じがして」
「つってもなー。何も特別いい場所ってわけじゃないと思うけど」
「でもー、確かにこの町では一番目立つっと言えば目立ちますからねー」
「唯一の観光スポットではある」
「唯一ではないだろ。さすがに」
律さんも夕奈さんも柚季さんも、あの場所がどんな場所か良く知っているようでした。
「皆さんはあそこに言ったことは――」
「「「何度も」」」
「小学校の遠足の定番だったし」
「私たちのー、家からなら頑張れば歩いてでも行けますしねー」
「そうなんですか? どんな場所かって言うのは」
「……そりゃぁ、行ってからのお楽しみだよ」
「秘密」
「内緒ですー」
「そうですか……そうですね。いつか絶対に皆さんと一緒に行きたいです」
律さん達は、ニッコリ微笑んで応じてくれました。
「……まぁ、ネタバレNGなだけだけどね」
「えっ?」
「さて、そろそろ終わりだな」
夕奈さんの気になる言葉に疑問をぶつける前に律さんは立ち上がりました。
気づけば、最後の試合も終わり私たちの体育館使用時間も終わろうとしていました。
「この後は自由行動ですねー」
「あぁ、クラス別じゃないみたいだから夕奈も一緒に来るだろ」
「……どうしてもって言うなら」
「じゃぁ、今日はもっとたくさんお話を聞かせてください」
この後、自由時間もお昼ご飯も四人で一緒に過ごしました。
普段こんなにお話をする機会はないので、貴重な時間でした
4月28日 雨
今日は、雨でした。
おかげで、遠足も中止ですごく、すごーく残念でした。
折角あそこに行けると思たのに。
律さん達からはあそこについて聞けませんでしたが、いつかあそこに行く約束をしたので楽しみ です。
絶対、絶対にあの塔にいずれ行きたいです。
待ちに待った遠足の日。
昨日は、律さん達とお菓子を買いに行って準備は万端です。
万端でした。
しかし――
「まーだ外の見てんの」
「律さん……」
「しょうがないよ。雨じゃ」
今日は、雨です。
しんしんとした冷たい空気が窓を打ち付けて濡らしていきます。
私のテンションも冷え切っています。
「降水確率三十パーセントだったのに」
「しかたないですよー」
「でもー」
「まぁ、雨天時は学校内でのレクリエーションだから、楽しもうよ。学年ごとだから、夕奈もいるし」
「……はい」
行きたかったなー。あそこ
私は、今日行くはずだった場所をみつめため息を漏らします。
「……今度みんなで行けばいいんじゃない」
「夕奈さん」
気づいたら、夕奈さんも来ていました。
「そうですね」
せっかくの時間ですしみんなと楽しく過ごしたいし
「珍しいな夕奈。お前は遠足反対派だろ。てっきり喜んでいるのかと」
「遠足は嫌い。疲れるし。団体行動自体が嫌いだし。でも――」
「でも?」
「あんな顔されるのも嫌」
「夕奈ちゃーん」
「ちがっ、辛気臭い顔した奴が近くにいると目障りなだけ」
「そうですかー?」
「もういい」
窓から離れて皆さんが集まっているところに行くと、顔をほのかに赤くした夕奈さんが丁度教室を出て行っていました。
「あれ、夕奈さんどこかに行ったんですか」
「「さぁ」」
「?」
律さんと柚季さんはにこやかに答えました。
レクリエーションは、学年で二時間ごとに交代で体育館を使用し、後は自由行動です。
「疲れましたー」
私達一年生は、各クラス男女別でドッヂボールのトーナメント戦をしました。
と言っても、私たちのクラスは一回戦で負けてしまって、後は見学するだけです。
「まぁ、一回戦だけだからまだマシじゃない」
「私ー、運動はあまり得意ではないんですよねー」
「……駄肉の付いた乳牛だから。仕方ない」
「夕奈さん! いつの間に」
気づくと夕奈さんが隣に座っていました。
「もう! それやめてくださいってば!」
「夕奈さんのクラスも終わったんですか?」
「終わった」
夕奈さんは、嬉しそうに言います。
「嬉しそうに。そりゃあんだけやる気のない奴がいたら負けるでしょ」
「律さんは夕奈さん達の試合を見たんですか」
「まぁ、すぐに見るのやめたけどね。こいつ試合開始から一歩も動かずぼけーっと立っているだけだったんだから」
うわっ、容易に想像できる
「何よ春、その眼は」
「いえー、何でも」
「疲れるから仕方ないでしょ。汗かくの嫌いだし」
「そんなことばっかりやってるから、白い目で見られるんだろ」
「うるさいっ」
「まぁまぁ、二人とも。……それより、質問良いですか」
「どうしたんですかー」
「あの今日の遠足に行く場所になんですけど」
「まだ気にしてたの?」
「この町に来てからずっと見えてて、何だか気づけばいつも視界に入っちゃってる感じがして」
「つってもなー。何も特別いい場所ってわけじゃないと思うけど」
「でもー、確かにこの町では一番目立つっと言えば目立ちますからねー」
「唯一の観光スポットではある」
「唯一ではないだろ。さすがに」
律さんも夕奈さんも柚季さんも、あの場所がどんな場所か良く知っているようでした。
「皆さんはあそこに言ったことは――」
「「「何度も」」」
「小学校の遠足の定番だったし」
「私たちのー、家からなら頑張れば歩いてでも行けますしねー」
「そうなんですか? どんな場所かって言うのは」
「……そりゃぁ、行ってからのお楽しみだよ」
「秘密」
「内緒ですー」
「そうですか……そうですね。いつか絶対に皆さんと一緒に行きたいです」
律さん達は、ニッコリ微笑んで応じてくれました。
「……まぁ、ネタバレNGなだけだけどね」
「えっ?」
「さて、そろそろ終わりだな」
夕奈さんの気になる言葉に疑問をぶつける前に律さんは立ち上がりました。
気づけば、最後の試合も終わり私たちの体育館使用時間も終わろうとしていました。
「この後は自由行動ですねー」
「あぁ、クラス別じゃないみたいだから夕奈も一緒に来るだろ」
「……どうしてもって言うなら」
「じゃぁ、今日はもっとたくさんお話を聞かせてください」
この後、自由時間もお昼ご飯も四人で一緒に過ごしました。
普段こんなにお話をする機会はないので、貴重な時間でした
4月28日 雨
今日は、雨でした。
おかげで、遠足も中止ですごく、すごーく残念でした。
折角あそこに行けると思たのに。
律さん達からはあそこについて聞けませんでしたが、いつかあそこに行く約束をしたので楽しみ です。
絶対、絶対にあの塔にいずれ行きたいです。
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