山椒魚

らくがき猫

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フラワーバスケット

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できれば思い出したくない話だ
仕事をはじめある程度慣れてきたとき別の部署で数人が体調を崩しそのフォローで私のいた部署も大忙しとなってしまい1週間ほどとはいえ終電間際の残業続きとなった。
ずっと日中顔を合わせ相談をしていた部署のメンバーは謎の結束感が生まれよく仕事終わりに飲みに行くようになっていった。
そんなある日先輩と飲みに行ったときに先輩の高校の友人も一緒に飲むこととなった。


友人は刑事にあこがれて警察官になった人だ。
ただ正義のためではないと言う、幽霊を見たいからという理由から警察官になったらしい。
話は変わるが私はオカルトがかなり好きだ。とはいえ同時に臆病者でもある。そのためネットや雑誌でそういう情報をみて満足しているという程度のもので実際に肝試しなどはいけない。臆病だからだ。
どのくらい臆病かというと、ここにお化け屋敷があったとしよう、入る、最初のギミックがある、いらっしゃいませーと突然声が出るやつだ。私は悲鳴を上げる。入口から走って逃げてくる。これが私だ。そしてそれが私の初めてで最後の肝試しとなる。違うな、正直に言おう。それが最後の肝試しだった。それ以来お化け屋敷には近づきもしてない。
そんな私から見るとわざわざ本物に会いたくて努力したという友人はとても珍しく、興味をひかれる存在だった。だが友人もそれが世間一般ではあまり理解される趣味ではないことを熟知しているのか先輩には言っておらずそのためはじめは私もオカルトに興味があることを知らなかった。
それを知ったのは少し後のことだ。いつものように3人の飲み会が開かれることとなったが先輩がどうしてもやらなくてはいけない残業ができたため少しいつもより遅めの時間に集合となった。
私も手伝おうとは思ったのだが出先の作業場での残業のため私も行くわけにはいかず集合場所の近くにある本屋で時間をつぶしていた。
店内をふらふらと見て回っていると面白そうなオカルトの特集が表紙にでかでかと書いてある雑誌をみつけて手を伸ばすと同時に伸ばしてきた手があった。
譲ろうと思って手を引っ込めつつどうぞと相手の顔をみたらそれが友人だった。
それ以来先輩そっちのけで二人で飲み会をすることが増えた。先輩の友人が私の友人にもなったのだ。
友人も人と話すことがとても好きだったらしく飲むときはたまに最近担当している事件のことまでうっかりしゃべりだす。
当然周りの人に聞かれるとまずいのだが友人は自分の癖を知っているため飲むときは個室のある居酒屋でなおかつ一番奥の部屋で飲む。
おかげで私も周りに聞かれる心配もないためオカルト談議に花を咲かせるのだ。

そんなある日珍しく沈んだ様子で飲み会に友人が来た。どうしたのかと聞いたら幽霊がな。とだけ言ってまた口を閉じる。
望んでいた幽霊を見れたのになぜか沈んでいるのがわからず場が重くなる。思ったより怖かったとかなら沈まずおびえるだろうしつまらなかったのなら残念そうにしそうなものだが。
うまく声もかけれずしばらくお互いに無言で飲んでいたのだがぽつりと今日見たことを語りだした。



最近このあたりでは猟奇殺人が多発している男女問わず言い方は悪いが醜美も問わずそれこそ手あたり次第に近い選ばれ方で数名の人がなくなっている。新聞で読む限りではバラバラ殺人事件とのことだった。友人はそれを担当しているらしい。
「バラバラ殺人事件って聞くと何を思いつく?」
突然聞かれてとりあえずイメージだけで腕とか足とかがバラバラにされて隠されてと答えると。
「そのぐらいだと思うよな。だけど実はな。」
そのあと聞かされた話は何とももっと細かく裁断され一つ一つがスマホの半分程度の大きさの破片にされていたらしい。
それでも状態を調べないといけないから組み立てるんだけどどうしてもどの遺体も部品が足りないらしい。そのためなにか共通性でもあるんだろうかと確認するとすべて別の部位で重なる場所もなく全く意味が分からない状態だったため頭を抱えていたのだが見回りを強化した結果たまたま直後の現場をパトロールしていた警官が発見して血の跡を追うとある大きな家にたどり着いたそうだ。
応援の警官たちがきたあとその家に事情を聴こうと呼び鈴を鳴らしたが反応がなかったが血の跡がはっきりついていたのでどうしようかと判断を仰ごうとしたときに家の中から悲鳴とも雄たけびとも取れない声が聞こえ慌てて数人が突入したところ奥の部屋に変なものがあった。
ガラスのようなもので四方を囲ってある部屋があったんだけどその中心につぎはぎされた人の形をした首から下の塊。その後ろにもガラスの板。
あまりのことに意味が分からず呆気に取られたら死角にいた血まみれの女がそれに近づいていってガラスの上に首を載せた後ずらして固定してあったガラスが動き出したんだ。
当然ガラスでもその重さがあれば人は死ぬし気づいたときに警官が止めようとしたんだが壁にされているガラスがやたら分厚いガラスでうまく割れなかったから回り込もうとしてる間にもう息絶えてた。

何をしたかったのか知らないけど死んだ以上どうにもならないし現場検証も始まって友人も呼ばれたそうだ。そこで幽霊を見たらしい。
つぎはぎは被害者の体のなくなった部分でその女がほしいと思った部分を持ち帰って、自分を、組み立てていたそうだ。
そしてあの日完成した自分の体に乗るために首をはねたとなったらしい。
どうやって確かめたのか不思議で聞いたら何人かは同じ幽霊を見ていたらしい。
首から上はあの女だがその下が人の形になるように締め付けられた多数の人間で女が、
やっとできた
理想の自分
逃がさない
と言ってたらしい。おそらくは別の理由を付けて事件は処理されるんだろうけど、死んでも生前の苦しみからは逃げれないこともあるんだと思ったらそれも押し付けられた苦しみからでも逃げれないとなったらなんとなくやるせなくなってな。
そういうとまた飲み始めた。

友人とはこの後も何度もよくわからないことにわかりたくないことに一緒に巻き込まれることになる。
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