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惡友
セブンへの返答を悩んでいる矢先だった。聞き覚えのない声に言葉を掛けられた。
「キミたち。高校生?こんな時間に何してるの」
その声に慌ててセブンから離れる。向かい合った体勢から脇に肩を並べた。
「今、帰ります」
「部活帰り?どこの高校?」
停止した俺をごまかす様にセブンが言葉を発した。
「×××高校」
「学生証ある?」
「俺たちバンド組んでて、いったん家帰ってからここ来てるから、そういうの今は持ってない」
「あぁ、だから私服なのか。住所は?親御さんと連絡取れる?」
バイトをしてて警察に声を掛けられたことはあるけれど、ここまで追及されたことあったっけって、ぼろ出たら困るから脇で黙ってたんだけど。
「キミも持ってないの?財布とかに入れてない?」
「す、まほしか持ってなくて」
「はー、今どきだね。そんなもんかなぁ。一応明日学校に確認しておくから名前聞いていい?」
「×××××と×××××」
完全な偽名。しゃべらないのが吉だって黙ってセブンの後ろに隠れていた。
「じゃあ寄り道しないで帰るんだよ」
「わぁってるよ」
そう、すれ違ったはずだった。腕を掴まれたのは俺で、一瞬何が起きたのかわからなかった。腕を引っ張られて、近距離にいたセブンと距離ができる。警察官の服を着ていたその男は腰から出した銃を向けて、迷いなく撃った。
何もできるわけもなく、警察官の腕で固まっていた。
1発目を避けたセブンは、ぐっと俺のほうに近寄り、脅す様に銃を頭に近づけられたが、銃口をセブンの掌が抑える。ドンッ。
自分の心臓の爆音すら聞こえない、出来事だった。
ぼたぼたと地面に落ちるセブンの血は絵具のようなラベンダー色だった。血のようなグロい色ではない。綺麗な色だった。
「セブンッ……!」
その時初めて喉から声が出る。きっと俺などいなければ怪我なんてしなかったのだろう。あんないいようなのだから人間に負けるわけはないだろう。下心だけで近づくのに、迷いなく助けてくれる理由が、やはりこの瞬間もわからなかった。
助けてほしいなら血を吸わせろと、言えばいいものを。
「ッチ……、気分わりーな」
耳元で低い男の声が鳴る。
「力の使い方を覚える前に殺してやる」
ゴキ、ゴキっと、セブンの首の鳴る音がした。
「セブン。お前の件で被害届が出ている。新宿でホテルに連れ去った女だ。今、どこにいる」
「食った。それ以外ありえないだろ」
「いや、違う。被害者の学校で騒ぎになっている。食えば、本当に近しい人間以外記憶から消えるはずだ。まだ生きている」
「へー……家畜のくせに知恵がある」
「×××悠。彼女が載せた動画がなければ、気が付かなかった。これは予想でしかないが、周りの人間の記憶から消えているのにお前は生きている。つまり、お前は先日まで人間だった。だから、術の使い方を知らず、抵抗のすべを知らない。吸血鬼は本当に人間を吸血鬼にできるのか」
「べらべらうるせーよ」
「ッ……がっ、あっ゛……!」
身体から腕が離れて警察官はその場にうずくまる。その間にセブンに腕をぐっと引かれる。
「セブン、この人。に、せものの警察?」
アホな質問に。
「本物じゃね?ほら、うじゃうじゃ湧く」
「え?」
腰を抱かれたままの態勢。警官の服を着た人物から、私服の人物まで、実に10人ほど、動くなと銃を向けられた。
「今まではニールが側にいて手を出せなかったんだろ。いや、まとめて殺すのが目的か?どうでもいいが、舐められたもんだ」
血だらけの腕が伸びで、肩を通り過ぎた。ぽたぽたと、ラベンダー色の甘い匂いのする血が不安と恐怖を混濁させた。
「本当に。まず、可能性があるなんて思われているのが癪だ」
セブンの血まみれの手がぎゅっと握られる。
「「「がはっ……!あ゛ッ……あ゛」」」
先ほどの警察官のように地面に倒れこみ、もだえ苦しむ。
「冥途の土産にいいことを教えてやろう。お前らが生まれるはるか昔の話だ。俺は、吸血鬼たちの国を作り、この国の人間を家畜として飼おうとしていた。だが、正義ぶったニールというカスがその計画をぶち壊した。わざわざこんなちんけな何もかも遅れた島国にアイツがいるのは俺を監視するためなんだよッ……!!1分1秒でも長く生きたいならな、俺ら吸血鬼に合わないよう、一生家の中で息殺してろ」
ぱらぱらと、死体も残らず、灰のように崩れ落ち、風が吹けば一瞬で消えた。夜の街灯が変わらぬ街を照らしていた。
「セブン、」
俺の方に顔をうずめ、ムカつく、ぶっ殺してやる、と、ぼやいている。このまま血を吸うことだってできそうなのに、怒りに目の前が見えなくなっているようだった。逆の腕でくしゃくしゃっと、セブンの髪を触る。
怒りの声が沈んで、顔が肩から上がる。
「こんなことして好感度上げなおしじゃねーか」
「いや、別に、」
ぐぐっと抱き着いてくるのをやめてほしいけれど。
「下がってないけど」
「……マジで?」
「ウン」
「なんで?」
「助けてくれたから」
興味がないだろう、自分語りをする。
「今まで助けてくれる人とかいなくて、だからニールに惚れてんだろって、セブンに言われて、図星だった。だから、ありがとう、死なないのかもしれないけど、怖かったから、迷いなく助けてくれて本当に嬉しかった。セブンはめちゃくちゃ悪いやつなのかもしれないけど、助けてくれるから嫌いじゃないよ。俺は、自分のこと大切にしてくれる人の側にいるって決めてるから、悪いやつでも俺のこと大事にしてくれるならそれでいい」
痛い、痛い痛い。強く抱きしめられすぎている。痛い!と叫ぶ。
「離せッ!て、てか、セブンお前俺があの時の特異血の人間だって知ってたのかよ」
「えー、なんで?」
「さっき少しもびっくりしてなかった」
「まぁ、偶然悠が来た時に限って学校に顔出すわけないでしょ普通に考えて」
たしかに少し変だとは思ったが。
「ユウ」
「何」
「血は?今日俺頑張った」
「無理」
「セッ」
「ックスもしない!」
一生これなのかなと、ため息が漏れる。漏れるけれども、悪くない一日だった。一緒の電車に乗りながら、俺のが下りるのが先で、声かけて降りる。
「セブン、」
「んー?」
「ありがと。また明日な」
「……なんだその笑顔、エロい事させてくれない理由がわからんのだが?」
勝手にキレていた。慌ただしい一日。玄関を開けるといつもの匂いがした。
「ん。おかえり、うわっ、どした」
ぐわーって抱き着く。疲れた。部屋の匂い落ち着く。ニールの声が聞きたかった。
「ニール」
「どした」
「ただいま」
「はー、なんだそれ。ん、ふっは、おかえり」
何があっても、帰ってくる場所がある。待っててくれる人がいる。今はそれだけで贅沢だ。今日あったことは後で話すとして、今は、ニールに甘やかされるのが最優先で。あ、ぁ、いろいろ考えていたのに、瞼が。
上のほうで笑ってる声がする。
「さすがに寝落ち早すぎん?」
「ゥ……ご、めん、おき」
「22時くらいまで寝な。ちょっと寝たら腹減って目覚めるだろ」
「うん、」
「俺は風呂に入ってくるからベッドに、……ん、あ?ん?ゆー、手、手、離せー、おーい……はぁ、俺今日一日寝てたからミリも眠くねーんだけど」
遠くに、そんな声が聞こえた。
「キミたち。高校生?こんな時間に何してるの」
その声に慌ててセブンから離れる。向かい合った体勢から脇に肩を並べた。
「今、帰ります」
「部活帰り?どこの高校?」
停止した俺をごまかす様にセブンが言葉を発した。
「×××高校」
「学生証ある?」
「俺たちバンド組んでて、いったん家帰ってからここ来てるから、そういうの今は持ってない」
「あぁ、だから私服なのか。住所は?親御さんと連絡取れる?」
バイトをしてて警察に声を掛けられたことはあるけれど、ここまで追及されたことあったっけって、ぼろ出たら困るから脇で黙ってたんだけど。
「キミも持ってないの?財布とかに入れてない?」
「す、まほしか持ってなくて」
「はー、今どきだね。そんなもんかなぁ。一応明日学校に確認しておくから名前聞いていい?」
「×××××と×××××」
完全な偽名。しゃべらないのが吉だって黙ってセブンの後ろに隠れていた。
「じゃあ寄り道しないで帰るんだよ」
「わぁってるよ」
そう、すれ違ったはずだった。腕を掴まれたのは俺で、一瞬何が起きたのかわからなかった。腕を引っ張られて、近距離にいたセブンと距離ができる。警察官の服を着ていたその男は腰から出した銃を向けて、迷いなく撃った。
何もできるわけもなく、警察官の腕で固まっていた。
1発目を避けたセブンは、ぐっと俺のほうに近寄り、脅す様に銃を頭に近づけられたが、銃口をセブンの掌が抑える。ドンッ。
自分の心臓の爆音すら聞こえない、出来事だった。
ぼたぼたと地面に落ちるセブンの血は絵具のようなラベンダー色だった。血のようなグロい色ではない。綺麗な色だった。
「セブンッ……!」
その時初めて喉から声が出る。きっと俺などいなければ怪我なんてしなかったのだろう。あんないいようなのだから人間に負けるわけはないだろう。下心だけで近づくのに、迷いなく助けてくれる理由が、やはりこの瞬間もわからなかった。
助けてほしいなら血を吸わせろと、言えばいいものを。
「ッチ……、気分わりーな」
耳元で低い男の声が鳴る。
「力の使い方を覚える前に殺してやる」
ゴキ、ゴキっと、セブンの首の鳴る音がした。
「セブン。お前の件で被害届が出ている。新宿でホテルに連れ去った女だ。今、どこにいる」
「食った。それ以外ありえないだろ」
「いや、違う。被害者の学校で騒ぎになっている。食えば、本当に近しい人間以外記憶から消えるはずだ。まだ生きている」
「へー……家畜のくせに知恵がある」
「×××悠。彼女が載せた動画がなければ、気が付かなかった。これは予想でしかないが、周りの人間の記憶から消えているのにお前は生きている。つまり、お前は先日まで人間だった。だから、術の使い方を知らず、抵抗のすべを知らない。吸血鬼は本当に人間を吸血鬼にできるのか」
「べらべらうるせーよ」
「ッ……がっ、あっ゛……!」
身体から腕が離れて警察官はその場にうずくまる。その間にセブンに腕をぐっと引かれる。
「セブン、この人。に、せものの警察?」
アホな質問に。
「本物じゃね?ほら、うじゃうじゃ湧く」
「え?」
腰を抱かれたままの態勢。警官の服を着た人物から、私服の人物まで、実に10人ほど、動くなと銃を向けられた。
「今まではニールが側にいて手を出せなかったんだろ。いや、まとめて殺すのが目的か?どうでもいいが、舐められたもんだ」
血だらけの腕が伸びで、肩を通り過ぎた。ぽたぽたと、ラベンダー色の甘い匂いのする血が不安と恐怖を混濁させた。
「本当に。まず、可能性があるなんて思われているのが癪だ」
セブンの血まみれの手がぎゅっと握られる。
「「「がはっ……!あ゛ッ……あ゛」」」
先ほどの警察官のように地面に倒れこみ、もだえ苦しむ。
「冥途の土産にいいことを教えてやろう。お前らが生まれるはるか昔の話だ。俺は、吸血鬼たちの国を作り、この国の人間を家畜として飼おうとしていた。だが、正義ぶったニールというカスがその計画をぶち壊した。わざわざこんなちんけな何もかも遅れた島国にアイツがいるのは俺を監視するためなんだよッ……!!1分1秒でも長く生きたいならな、俺ら吸血鬼に合わないよう、一生家の中で息殺してろ」
ぱらぱらと、死体も残らず、灰のように崩れ落ち、風が吹けば一瞬で消えた。夜の街灯が変わらぬ街を照らしていた。
「セブン、」
俺の方に顔をうずめ、ムカつく、ぶっ殺してやる、と、ぼやいている。このまま血を吸うことだってできそうなのに、怒りに目の前が見えなくなっているようだった。逆の腕でくしゃくしゃっと、セブンの髪を触る。
怒りの声が沈んで、顔が肩から上がる。
「こんなことして好感度上げなおしじゃねーか」
「いや、別に、」
ぐぐっと抱き着いてくるのをやめてほしいけれど。
「下がってないけど」
「……マジで?」
「ウン」
「なんで?」
「助けてくれたから」
興味がないだろう、自分語りをする。
「今まで助けてくれる人とかいなくて、だからニールに惚れてんだろって、セブンに言われて、図星だった。だから、ありがとう、死なないのかもしれないけど、怖かったから、迷いなく助けてくれて本当に嬉しかった。セブンはめちゃくちゃ悪いやつなのかもしれないけど、助けてくれるから嫌いじゃないよ。俺は、自分のこと大切にしてくれる人の側にいるって決めてるから、悪いやつでも俺のこと大事にしてくれるならそれでいい」
痛い、痛い痛い。強く抱きしめられすぎている。痛い!と叫ぶ。
「離せッ!て、てか、セブンお前俺があの時の特異血の人間だって知ってたのかよ」
「えー、なんで?」
「さっき少しもびっくりしてなかった」
「まぁ、偶然悠が来た時に限って学校に顔出すわけないでしょ普通に考えて」
たしかに少し変だとは思ったが。
「ユウ」
「何」
「血は?今日俺頑張った」
「無理」
「セッ」
「ックスもしない!」
一生これなのかなと、ため息が漏れる。漏れるけれども、悪くない一日だった。一緒の電車に乗りながら、俺のが下りるのが先で、声かけて降りる。
「セブン、」
「んー?」
「ありがと。また明日な」
「……なんだその笑顔、エロい事させてくれない理由がわからんのだが?」
勝手にキレていた。慌ただしい一日。玄関を開けるといつもの匂いがした。
「ん。おかえり、うわっ、どした」
ぐわーって抱き着く。疲れた。部屋の匂い落ち着く。ニールの声が聞きたかった。
「ニール」
「どした」
「ただいま」
「はー、なんだそれ。ん、ふっは、おかえり」
何があっても、帰ってくる場所がある。待っててくれる人がいる。今はそれだけで贅沢だ。今日あったことは後で話すとして、今は、ニールに甘やかされるのが最優先で。あ、ぁ、いろいろ考えていたのに、瞼が。
上のほうで笑ってる声がする。
「さすがに寝落ち早すぎん?」
「ゥ……ご、めん、おき」
「22時くらいまで寝な。ちょっと寝たら腹減って目覚めるだろ」
「うん、」
「俺は風呂に入ってくるからベッドに、……ん、あ?ん?ゆー、手、手、離せー、おーい……はぁ、俺今日一日寝てたからミリも眠くねーんだけど」
遠くに、そんな声が聞こえた。
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