【完結】碧よりも蒼く

多田莉都

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第2章

誰も知らない町で⑩

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 紗季は、小学校からの同級生だった。僕が藤枝に負けてしまった後も何度かもう一度走るように言ってくれた子だった。いつも言いたいように言われていたような気もするけれど、ある意味、何でも話すことのできる奴だった。
 中学3年の大会以降は、僕が走ることを辞めてしまったことで、うまく話すことができなくなってしまった。

 僕が愛知に引っ越してきてからは一度も連絡が来たことはない。もちろん、僕からも連絡はしていないのだけど。


 紗季は、いま青城南高校の陸上部にいるらしい。青城南と言えば、県内で上位に入る偏差値の高い高校だった。
 昔から紗季は学校の成績もよかったので、青城南に入学していること自体、何の不思議もない。そういえば、青城南の制服を着たいとか言っていたことあったかな。

 紗季は、女子100m走にエントリーしたらしく、リザルトにその名前があった。
 中学時代は13秒を切るかどうかだったはずだが、12秒台後半を出していて、準決勝まで進出していた。もし僕の目の前で自己新記録を出していたならさぞかし自慢されたんだろうなぁ。ふんぞり返り気味に紗季は、僕を指差しながら自慢してきた中学2年の秋の大会を僕は思い出していた。


「見た? 自己ベストだしたからね? 決勝進出のおまけつきで」

 あれこそが「ドヤ顔」って言うのだろう。
 「決勝のほうがおまけなのかよ」と僕は突っ込んだが、「それよりも自己満足が大事」と紗季は笑っていた。
 その決勝が7位に終わり、6位までなら入賞だったのに、となんだかんだで順位を気にしていたのも紗季らしいなとあの頃は思った。


 紗季はまだ走っているのか、そう思いながら僕は画面をスクロールして動かした。

 

 男子の記録に画面を戻し、誰か知ってる奴はいないかなーと探していると、一瞬、ある名前が見えたような気がして手が止まった。

 いまの名前は? なんだ?

 もう一度、画面をスクロールして下げる。今度は見落さないようにゆっくりと。
 男子100m走の結果を降りていく。
 中学のときの大会で見た名前がいくつかあったが、一旦それは流していく。それよりもさっき見えた気がしたような名前が気になるからだ。


 間もなくして、その名前は見つかった。


「なんだよこれ……」


 思わず声が漏れた。


 そこには目を疑うしかないような名前が書かれていた。


『相沢碧斗 (1) 青城南』



 それは僕の名前だった。



 なぜ僕が富山の大会を走ったことになっているんだ?
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