【完結】碧よりも蒼く

多田莉都

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第4章

体育大会の後

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*
「それにしてもすごかったねぇ、あそこから逆転できるとはウチは思ってなかった」

 三吉が自販機で買った紙パックのリンゴジュースのストローをくわえたまま言った。

「さすが伊藤だな」

 僕は伊藤がいる方向を見ながら言った。
 グラウンドでの歓喜の熱が教室までやってきていて、まだみんなは興奮気味だった。

 女子アンカーの細谷が2位と1位の女子への差を詰めた後、男子アンカーの伊藤がその2人を抜いて大逆転で僕たちのクラスは優勝を果たした。
 伊藤はクラスの中でいろんな奴らに声をかけられてスマホで写真を撮られていた。


「いやいやいや、相沢くんもすごかったやん」
「え?」
「ウチ、すごーくびっくりしたもん」

 と三吉が言っているところに、

「ね、すっごい速かった、相沢」

 細谷も三吉の横にやってきて会話に入ってきた。

「あっという間に2組を抜いちゃったとき、『うわ、速っ』って思ってたら、最後の曲がるとこで転んだ5組をジャンプで避けるし。『あれ? なんかの特撮?』とか思っちゃった」
「あー、あれは危ねって思ったら無意識に飛べただけ。もう一回、敢えてやろうとしたらこけるかぶつかるかするやつ」

 僕はうまくおどけながら話せているだろうか。

「走りもすごかったけどねぇ、バトン渡すときもビビった」

 三吉が言った。

「バトン渡すとき? あー、結衣が相沢に渡したんだっけ」
「うん。最後の曲がるとこ抜けて、相沢くんに渡そうとしたらさぁ、目の前にいる相沢くんが怖かった」
「怖い? なんで?」
「うまく言えないんだけどぉ、黒いオーラみたいのに包まれてるように見えてー」
「黒いオーラ? なにそれ? ゲームのキャラか」

 細谷が笑った。三吉が少し膨れっ面を見せる。

「うまく言えんって言ったじゃんねぇ。ゾクってなったけどバトンを渡さないわけにいかないから一生懸命渡したんよ」

 さっきリレーを走るとき、三吉に声をかけたことは覚えている。当然、僕は黒いオーラなど僕は出すことはできないし、ゲームのキャラなんかではない。

「よくわかんないけど、オレはただ走っただけ」
「でも、すっごい速かったよねぇ」
「なんか前を捕まえようって思ったら、自分が持ってる実力以上のが出ちゃっただけだよ。証拠にコーナーの最後はバテバテになって、スピード落ちてたし」
「ジャンプしてかわしたときも体幹がすごくいいのかキレイにかわしてたよね。そんだけ動けるなら部活やればいいのに」

 細谷の言葉を愛想笑いでかわそうとしていると

「それならぜひサッカー部に入らない?」

 振り返ると、そこにいたのは体育委員の梶本だった。いつもどおりのニコニコ顔だった。

「え、サッカーやったことないし」
「この高校なら未経験のサッカー部員は何人かいるよ。それにあのスピードとボディバランスあれば、すぐにやっていけるって。ウイングとか向いてそうだよ」
「ウイングがどこのポジションかわからないし無理だよ。キーパーじゃないってのはわかるけど」
「いまから覚えれば間に合うと思うよ? 僕が推薦するからいつでも声かけてよ」
「いや入らないって。っていうか何だ? 細谷に用事とか?」

 梶本が僕の元に来たのは同じ体育委員の細谷に用があるのかなと思った。
 話題を変えたいというのもあったが。

「あ、違……いや関係はあるんだけど」
「どっちだ」
「今日、この後、クラスの集まれる奴らで体育大会の打ち上げやろうって話になってるんだけど、相沢くんはどう?」
「え、そんなんやるの?」
「細谷さんの提案で急遽決めたんだ。相沢くんはどう? 大活躍したんだし、ぜひ」
「うん、相沢くんもおいでよー」
「ていうか来るよね?」

 三吉と細谷まで食いついてきた。反応を見る限り、二人は行くのだろう。

「あー、悪い。オレ、今日バイトあるからさ、もう行かないとなんだ」
「バイトぉ? 体育大会のあとなのに?」
「いや、そんなんあるって知らなくて。さすがに急にサボるのは無理。また今度」

 時計を見るともう16時半過ぎだった。

「うわ、本当にもう時間やばいじゃん」
「どこでバイトしてるん?」
「北町の『Amy's』、水金土日はそこでバイト」
「働くなぁ」
「だから部活ってわけにいかない。悪いな、梶本。誘ってくれてありがとう」

 僕はカバンを手に取り教室の後ろ側のドアから外に出た。

 すると前の黒板側のドアが開いた。出てきたのは伊藤だった。

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