世界最速の『魔法陣使い』~ハズレ固有魔法【速記術】で追放された俺は、古代魔法として廃れゆく『魔法陣』を高速展開して魔導士街道を駆け上がる~

葵すもも

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第1章【追放編】

§010 空間転移魔法陣

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 翌朝、俺とレリアは旅支度を整えて、家の外に出る。

 結局、昨夜は不安に耐えきれず、レリアに『魔法陣』の練習に付き合ってもらった。
 実際に魔力を込めて魔法陣を展開したのは、上級魔導士の男達と対峙した時以来だったが、結果は成功。
 俺が【速記術】によって描いた魔法陣はしっかりと発動したのだった。
 これで今までは火事場の馬鹿力であると決めつけていた【速記術】×『魔法陣』が、実際に俺の力で実現可能であることが裏付けられた。

 ただ、それでも不安は残った。
 というのも、俺が発動できたのはいわゆる『初級魔法』と一部の『中級魔法』のみ。
 『上級魔法』に分類される魔法陣は、確かに魔導書どおりに描いているのだが、魔力を込めても発動しなかったのだ。
 そして、『空間転移魔法陣』は『上級魔法』に分類される。

 魔導書によれば魔法は『想像《イメージ》を具現化するもの』と表現されていることが多い。

 すなわち、より詳細に魔法を想像《イメージ》することができれば成功確率は上がると思うのだが、想像《イメージ》が足りていないのか、はたまた熟練度のようなものがあって、俺はその魔法を使いこなすレベルに達していないのか。

 俺はその糸口を見つけられないまま今日を迎えてしまったのだ。

 俺は今までの堕落した生活を後悔していた。
 あんなに有り余る時間があったのに……魔法を研鑽できる時間があったのに……勉強だ勉強だと言いながら実際には何も本気ではなかったのだなと……。
 もし俺がもっと早く【速記術】で『魔法陣』が描けることに気付いて、上級魔法の練習ができていたらと後悔は先に立たない。

 そう思うと自然と手に力が入ってしまった。

「怖いですか?」

 俺は一体どんな顔をしていたのだろうか。
 身体に力が入っているのに気付いたレリアが心配そうに覗き込んでくる。

「少し」

 俺はたまらず弱音を吐いてしまった。
 そんな俺を見てレリアが手をギュッと握りしめてくる。

「そんなにガチガチだと成功するものも成功しませんよ。まずは目を閉じて深呼吸をしてみましょう」

「ああ、そうだな」

 俺は言われるがままに、目を閉じて深呼吸してみせる。
 レリアの温かさが握った手を通して俺の心に流れ込んでくるようだった。

「大丈夫です。ジルベール様は私を助けてくださった時に『上級魔法』を成功させています。それに今回は私も側におります。絶対に成功しますよ」

 レリアの優しい声音を聞いていると、不思議と魔力が漲るようだった。

「それに……仮に失敗してしまっても、一年間二人でみっちり魔法の勉強をして、また来年受験しましょう」

 俺はスッと目を開ける。
 すると目の前にはレリアの天使のような微笑みがあった。
 俺の心は決まった。
 レリアのためにも絶対に成功させる。

「もう大丈夫。ありがとう」

 声をかけるとレリアはコクリと頷いて、俺に身を寄せて服をギュッと掴む。
 俺はそれを確認するともう一度目を閉じて大きく深呼吸をする。

 そして、あのときの戦いを思い浮かべる。
 そう。意識が段々深いところに潜っていくような……あの感覚。

 空間転移魔法陣は、俺の【速記術】をもってしても、描くのに約五秒かかる。
 通常の魔法陣がコンマ1秒で描けることを考えると、相当な集中力を要することは明白だ。

 俺は最大限に意識を集中させ、滑るように指を躍らせる。
 空中に大きく大きく円を描きながら、ありったけの魔力を注ぎ込む。
 すると、圧縮に圧縮を重ねた魔力が紋様の形状に凝縮されていく。
 そして、ついに馬車一つほどの大きさの陣が眩い光を放ちながら顕現する。

「じゃあいくよ!」

「はい!」

「――空間転移魔法・次元の追憶者ディメンジョン・ディスカバリー――」

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