前世を思い出した巫女は神のもとに行きたい

だるま

文字の大きさ
14 / 54
城に派遣されました。

2

しおりを挟む
「どう言うことですか?
あの時に何を思うところがあったと言うのです?」


「浄化をすると君の身体の疲弊は大きい。
そして、休みのたびに祠で浄化しても、穢れの浄化が追いつかないだろう。なら、できるなら毎日浄化した方がいい。君もそれは思ってたのでないか?」

「……」
その通りだ。正直、自分の生活とミコトを天秤にかけてた。
どうすれば両方をうまく守れるのかと…
でも、今のままではミコトは救えない。
たがら、領主の提案は悪くはないと思う。

「……」
今はこの条件をのむしかないのか…
わたしはうつむき目を閉じる。

ふと手に暖かいものが触れる。
目を開けるとミコトがこちらを見ていた。心配そうにしてる。

…わたしはミコトのこの目に弱い…

腹を決めろユエ!
「わかりました。しばらくお世話になります。もちろん書庫の仕事もさせていただきますので。」


この選択がどう転ぶのか…




**********



「ねぇ。ユエ。明日の浄化は一緒に行ってもいいかい?」

あれから1ヶ月、朝は浄化。昼から書庫の仕事をわたしはこなしている。夜は力の余裕があれば行くのだが、いつも領主に邪魔される。
そしていつのまにか呼び捨てに…

「領主様、ご自分の仕事に集中しでください。」

こうは言っても、ついてくるんだろうな…
わたしはため息を密かについた。


「君もいい加減、俺の名前で呼んでくれないか?ほらアトスって。」

「領主様、マリン様に言いつけますよ。」

わたしは無視して仕事を再開する。誰が呼ぶか!との意思を示す。

「ねぇユエ。この本読んで。」
ここに来てからもミコトは私の側にいる。

「ミコト、気になってたんだけどずっとこのお城に居てない?神殿にいなくていいの?」

「うん?そうだね。まぁいいんじゃない?」

「いいんだ…」

「今は君が浄化を担ってくれてるから、神殿は形だけとなってしまってるからね。そもそも神官たちはミコト様が見えてないからいてもいなくてもわからないよね。」

…もう、何も言うまい。好きにしたらいいんじゃないかな。



**********


ミコト様を膝に乗せ本を読むユエを近くで微笑ましく見てしまう。

4代前の領主が、ミコト様からのお告げはこの領地を揺るがすものだった。すぐにどうこうなるものではないが、次第に穢れが浸食していくだろう。そうなればこの土地はもう終わりだ。


神殿を管理していたものたちの力が無くなってしまったが、ミコト様は再び力を与えることはしなかった。
ミコト様曰く滅ぶなら滅べばいいと言っていた。



ある日"巫女の試験をする"それをミコト様が言い出した時は、どんな心境の変化があったのかと思ったけど、今はユエを呼ぶためのものだったのだとわかる。
ミコト様のユエへ向ける眼差しも気遣いもきっとこの子が大切なのだろう。
もともと領主の前でもめったに姿を見せてくれることはなかった。それがユエが現れてからと言うもの毎日のように姿を現してしいる。

なぜ試験で初めて・・・あった二人がこんなにも心を通わせているのか。それが謎だった。


ユエの浄化を見てから俺は今の自分・・・・ではないが、ここの領主の息子になっている夢を見る。
そこは昔の領地なのか、まだ町など発展途上のものもある。
そこで俺は一人の巫女と逢引をしているのだ。おそらく恋仲なのだろう。
夢の中で俺に向ける眼差しはとても綺麗で、幸せそうに笑う。
雰囲気はユエに似ている人だ。
こんな風に俺もユエに見てもらえたら……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)

透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。 有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。 「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」 そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて―― しかも、彼との“政略結婚”が目前!? 婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。 “報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。

【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました

雨宮羽那
恋愛
 結婚して5年。リディアは悩んでいた。  夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。  ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。  どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。  そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。  すると、あら不思議。  いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。 「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」 (誰ですかあなた) ◇◇◇◇ ※全3話。 ※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜

婚約破棄ブームに乗ってみた結果、婚約者様が本性を現しました

ラム猫
恋愛
『最新のトレンドは、婚約破棄!  フィアンセに婚約破棄を提示して、相手の反応で本心を知ってみましょう。これにより、仲が深まったと答えたカップルは大勢います!  ※結果がどうなろうと、我々は責任を負いません』  ……という特設ページを親友から見せられたエレアノールは、なかなか距離の縮まらない婚約者が自分のことをどう思っているのかを知るためにも、この流行に乗ってみることにした。  彼が他の女性と仲良くしているところを目撃した今、彼と婚約破棄して身を引くのが正しいのかもしれないと、そう思いながら。  しかし実際に婚約破棄を提示してみると、彼は豹変して……!? ※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています

夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました

香木陽灯
恋愛
 伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。  これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。  実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。 「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」 「自由……」  もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。  ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。  再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。  ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。  一方の元夫は、財政難に陥っていた。 「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」  元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。 「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」 ※ふんわり設定です

幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係

紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。 顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。 ※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

婚約破棄歴八年、すっかり飲んだくれになった私をシスコン義弟が宰相に成り上がって迎えにきた

鳥羽ミワ
恋愛
ロゼ=ローラン、二十四歳。十六歳の頃に最初の婚約が破棄されて以来、数えるのも馬鹿馬鹿しいくらいの婚約破棄を経験している。 幸い両親であるローラン伯爵夫妻はありあまる愛情でロゼを受け入れてくれているし、お酒はおいしいけれど、このままではかわいい義弟のエドガーの婚姻に支障が出てしまうかもしれない。彼はもう二十を過ぎているのに、いまだ縁談のひとつも来ていないのだ。 焦ったロゼはどこでもいいから嫁ごうとするものの、行く先々にエドガーが現れる。 このままでは義弟が姉離れできないと強い危機感を覚えるロゼに、男として迫るエドガー。気づかないロゼ。構わず迫るエドガー。 エドガーはありとあらゆるギリギリ世間の許容範囲(の外)の方法で外堀を埋めていく。 「パーティーのパートナーは俺だけだよ。俺以外の男の手を取るなんて許さない」 「お茶会に行くんだったら、ロゼはこのドレスを着てね。古いのは全部処分しておいたから」 「アクセサリー選びは任せて。俺の瞳の色だけで綺麗に飾ってあげるし、もちろん俺のネクタイもロゼの瞳の色だよ」 ちょっと抜けてる真面目酒カス令嬢が、シスコン義弟に溺愛される話。 ※この話はカクヨム様、アルファポリス様、エブリスタ様にも掲載されています。 ※レーティングをつけるほどではないと判断しましたが、作中性的ないやがらせ、暴行の描写、ないしはそれらを想起させる描写があります。

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

処理中です...