41 / 54
絡まないでください
3
しおりを挟む
アトス様のスキンシップはこの日も一方的に行われていた。
抵抗すれど、流石に男と女では力の差は歴然。わたしはそんな筋肉質でもないので、抵抗虚しくもう終わるまで明後日の方向を見て意識しないように努めることにしている。
そう、意識してはいけない。例えカイン様の生まれ変わりだろうとも。
元々サニアの記憶があって育ってきたならともかく、わたしはユエとして生きてきた。最近思い出されたサニアの記憶でわたしというものが変わることはない。
かつてカイン様とサニアは恋仲だった。だからといってわたしがアトス様を慕うということは違うと思う。
わたしはユエ。ユエを見てくれる人でなければ、わたしの心は動かしてはいけない。
「アトス様、そろそろくっつくのホントやめてください。」
「機嫌が悪いね。アパートを引き払った事まだ怒ってるの?」
「怒ってはいます。けど、それだけではないです。
どうしてそんなにわたしに触ってくるんですか?」
「それは……君がいなくなりそうと……不安になるからつい触ってしまうのかな……」
「不安?いつかはわたしはいなくなりますよ。それは当然です。
役目が終わって日常に帰っていくかもしれない。
もしかしたら事故や病気で死ぬかもしれない。」
「……君は手放さない。どこにもやらない!!考えうる危機は回避して見せる…君はここで、ここに居ていいんだ。」
真顔で答えている。
でもこの言い聞かすような物言いが気に入らない。
「わたしをサニアのままで接しているなら、やめて下さい。
わたしはユエです。サニアではありません。」
「!?…そんなつもりは…」
それ以上は言葉にできず、言いにくそうにしている。
「答えられないでしょう?
サニアと思って接してる証拠です。
サニアの記憶があっても、わたしはわたしの人生があって生きてきたんです。
わたしを見てないのに、執着とか理解できません。」
「……」
何も答えなくなった。腹が立っていたのでついつい言ってしまう。
「…しばらくそばに来ないでください。」
距離を置きたかった。
とにかくわたしには落ち着いて考える時間が欲しいから。
あなたは心を乱す。
やめてよ、わたしを見てないくせに…
**********
「……何か言ってくれませんかミコト様…」
執務室で、うじうじとしているアトスを尻目に、出された茶菓子をミコトはモリモリ食べていた。
「今日の菓子は、スポンジが硬いな。」
「いや…そうじゃなくて…」
「…お前達2人のことは知らん。自分でどうにかしろ。」
「ユエには子供のように甘えているのに、俺の前では辛辣なお言葉で…」
「ユエは友達だからな。それにこの子供の容姿は母性本能?とやらがくすぐられるのか、特に甘やかしてくれる。意外に便利なので私はしばらくこのままで過ごそうと思う。」
「その容姿確信犯ですか。」
「それより、いつまでうじうじしているのだ?
弁解しに行くなら早いほうがいいと思うが?」
「しばらくそばに来るなと言われまして…これでも俺も傷ついてるんですよ。」
「ふん。何を言ってる。そんな事を言ってまた手遅れになっても知らんぞ。」
ガバッと顔を上げる。
そうだ…後悔は十分した。
もう…失うのは嫌だ!?
抵抗すれど、流石に男と女では力の差は歴然。わたしはそんな筋肉質でもないので、抵抗虚しくもう終わるまで明後日の方向を見て意識しないように努めることにしている。
そう、意識してはいけない。例えカイン様の生まれ変わりだろうとも。
元々サニアの記憶があって育ってきたならともかく、わたしはユエとして生きてきた。最近思い出されたサニアの記憶でわたしというものが変わることはない。
かつてカイン様とサニアは恋仲だった。だからといってわたしがアトス様を慕うということは違うと思う。
わたしはユエ。ユエを見てくれる人でなければ、わたしの心は動かしてはいけない。
「アトス様、そろそろくっつくのホントやめてください。」
「機嫌が悪いね。アパートを引き払った事まだ怒ってるの?」
「怒ってはいます。けど、それだけではないです。
どうしてそんなにわたしに触ってくるんですか?」
「それは……君がいなくなりそうと……不安になるからつい触ってしまうのかな……」
「不安?いつかはわたしはいなくなりますよ。それは当然です。
役目が終わって日常に帰っていくかもしれない。
もしかしたら事故や病気で死ぬかもしれない。」
「……君は手放さない。どこにもやらない!!考えうる危機は回避して見せる…君はここで、ここに居ていいんだ。」
真顔で答えている。
でもこの言い聞かすような物言いが気に入らない。
「わたしをサニアのままで接しているなら、やめて下さい。
わたしはユエです。サニアではありません。」
「!?…そんなつもりは…」
それ以上は言葉にできず、言いにくそうにしている。
「答えられないでしょう?
サニアと思って接してる証拠です。
サニアの記憶があっても、わたしはわたしの人生があって生きてきたんです。
わたしを見てないのに、執着とか理解できません。」
「……」
何も答えなくなった。腹が立っていたのでついつい言ってしまう。
「…しばらくそばに来ないでください。」
距離を置きたかった。
とにかくわたしには落ち着いて考える時間が欲しいから。
あなたは心を乱す。
やめてよ、わたしを見てないくせに…
**********
「……何か言ってくれませんかミコト様…」
執務室で、うじうじとしているアトスを尻目に、出された茶菓子をミコトはモリモリ食べていた。
「今日の菓子は、スポンジが硬いな。」
「いや…そうじゃなくて…」
「…お前達2人のことは知らん。自分でどうにかしろ。」
「ユエには子供のように甘えているのに、俺の前では辛辣なお言葉で…」
「ユエは友達だからな。それにこの子供の容姿は母性本能?とやらがくすぐられるのか、特に甘やかしてくれる。意外に便利なので私はしばらくこのままで過ごそうと思う。」
「その容姿確信犯ですか。」
「それより、いつまでうじうじしているのだ?
弁解しに行くなら早いほうがいいと思うが?」
「しばらくそばに来るなと言われまして…これでも俺も傷ついてるんですよ。」
「ふん。何を言ってる。そんな事を言ってまた手遅れになっても知らんぞ。」
ガバッと顔を上げる。
そうだ…後悔は十分した。
もう…失うのは嫌だ!?
0
あなたにおすすめの小説
お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ
Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。
理由は決まって『従妹ライラ様との用事』
誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。
「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」
二人の想いは、重なり合えるのだろうか ……
※他のサイトにも公開しています。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
身を引いたのに、皇帝からの溺愛が止まりません ~秘された珠の還る場所~
ささゆき細雪
恋愛
五年前、内乱の混乱のなかで姿を消した最愛の妃・白瑤華(はくようか)。
彼女を失った皇帝・景玄耀(けいげんよう)は、その後ただ一人を想い続けながら執務に追われていた。そんなある日、書類に彼女の名前を発見し、居ても立っても居られなくなる。
――死んだはずの彼女が、生きている?
同姓同名かもしれないが確かめずにいられなくなった彼は地方巡察を決行。そこで、彼によく似た幼子とともに彼女と再会、地方官吏として働く瑤華と、珠児(しゅじ)を見て、皇帝は決意する――もう二度と、逃がさないと。
「今さら、逃げ道があると思うなよ」
瑤華を玄耀は責めずに、待ちの姿勢で包み込み、囲い込んでいく。
秘された皇子と、選び直した愛。
三人で食卓を囲む幸福が、国をも動かすことになるなんて――?
* * *
後宮から逃げ出して身を引いたのに、皇帝の溺愛は止まらない――これはそんな、中華風異世界ロマンス。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
真実の愛は水晶の中に
立木
恋愛
学園の卒業を祝うパーティーの最中、レイシア・マレーニ侯爵令嬢は第三王子とピンク髪の女、その取り巻きたちによって断罪されようとしていた。
しかし断罪劇は思わぬ方向へ進んでいく。
※「なろう」にも重複投稿しています。
夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。
だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。
失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。
どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。
「悪女に、遠慮はいらない」
そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。
「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。
王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」
愛も、誇りも奪われたなら──
今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。
裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス!
⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる