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★デビュタント〜デビュー編〜★
登場
しおりを挟むその一方で会場ではベアトリス王女とシャルル・ブランシェ男爵令息によるアルベール・デュラン公爵令息への婚約破棄という茶番劇が依然として繰り広げられていた。
ー悲しそうに視線を伏せ気味にし、いかにも周囲の庇護欲を誘おうとしているのが丸わかりのブランシェ男爵令息ー
ーそんなブランシェ令息に傷ましそうな視線を向け、守るように声を張り上げるベアトリス王女ー
ー絶望したかのように床に膝から崩れ落ち、今にも近衛に連れていかれそうになっているアルベール・デュラン公爵令息ー
ー公爵令息に対し、気の毒そうな視線を向けるものー
ー王女には逆らえまい・・・と複雑そうに視線を逸らすものー
ー良い余興だと楽しげに眺めるものー
会場には様々な考えを持ったものがおり、カオスな状況と化していた。
ところが、そのいずれにも属さず、状況を好転させるどころか、さらに状況を悪化させるものがいた・・・
ダダダダ・・・ズッサーーーーッ!!
ドーッン・・・ビシャッ!!!
そう、あの魔獣令嬢・・・もといセイラ・エトワール辺境伯令嬢だ。
セイラの登場に茶番の張本人たちはもちろん、会場中のものたちが突然のことで何が起きたのか理解できずにポカーッンとした顔をしている。
それもそうだろう。
どこの世界にドレスを膝まで捲り上げながら会場後方からこのカオスな渦中に全力疾走で向かってくる令嬢がいようか。
しかも、セイラの本日のドレスが純白なことから本日がデビュタントの令嬢だということが安易に見てとれるのだ。
それだけならまだよかった。
ーいや、常識的に考えればよくないのであろうが・・・ー
そう、ここで忘れてはいけないのが、セイラが極度の運動音痴であり、周囲が予想だにもしないことを巻き起こすということである。
さて、この場だけ何も起こらなかった・・・そんな甘い考えはこの令嬢には全くと言っていいほどい通用しなかったのである。
順を追って見ていこう。
ダダダダ・・・
セイラが目を輝かせながらドレスを膝まで捲り上げ全力疾走してくる。
ー顔色を真っ青に染めていたセイラの元婚約者曰く、魔獣を見つけた時の目をしていたそうなー
ズッサーーーーーーーーーー!!
盛大に転びスライディングしながら渦中へ登場するセイラ。
ー周囲のもの曰く、あの時彼女の足元には何もつまづくようなものはなく、なぜあそこまで盛大に転んだのか不思議で仕方ないと頭を悩まされていたそうなー
ドーッン!
スライディングしたまま1番前でいい余興だと楽しそうに眺めていた出席者に追突するセイラ・・・
ー周囲のもの曰く、ものすごい勢いで衝突しさながら某車ミサイルのような勢いであったそうなー
ビシャッ!!!
そのまま衝突された勢いで自分で持っていた飲み物が宙を舞い、そのまま頭の上から浴びてしまった出席者。
ー周囲のもの曰く、飲み物を浴びたせいでそこにあったはずの髪の毛がズレていた・・・
あの人はヅラだったんだ・・・やぱっりな・・・と場違いにも会場中の思いが一致した瞬間だったー
会場中の同性はこの仕打ちに、この場での1番の被害者はもしかして公爵令息ではなく、巻き添えでセイラロケットを喰らった挙句、ヅラを意図せずとも周囲に知られてしまった彼なのでは・・・と恐々としていたそうな。
そんな惨事を巻き起こしているとは全く自覚のないセイラが痛みに少し震えながらも身体を起こし、顔を上げた時、アルベール・デュラン公爵令息と目があった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
更新にだいぶ間が空いてしまい申し訳ありません。
私生活がだいぶ落ちついてきたので、また更新を再開させていただきます。
もう一作も近々更新させていただこうと思っているので、そちらもご一読いただけると幸いです。
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