偽りと過去

香華

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第1章

幸せだと感じた場所

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「ねぇーえ!聞こえてる!?おーい!!」
可愛いらしい幼い声にハっと我に帰る。
「え?あ、あぁ...ごめん、何の話だったっけ?」
あわてて返すも話を聞いていなかった訳だから何を返せばいいのか分からず曖昧な返答をしてしまった。
「また私の話聞いてなかったんでしょー!」
少女は可愛らしくほっぺたをぷくーっと膨らまして睨む。けれどすぐに呆れたため息をつき、また1から話をし始めた。

僕ら(亜人族)はとても貧乏だから毎日毎日働かなきゃいけない。亜人族にも数段階の上下関係が存在する。下から、アディラス、ファイストル、アシュラウスの3段階だ。これにより付く仕事などが若干良かったり悪かったりするわけ。まぁ亜人族ってだけでそれでも仕事場では下に見られるから辛いのは変わりない。変わるのは亜人族の中でだけ。けれど意外にも亜人族同士の揉め事は起きない。亜人族は優しい人たちであり、みんなを仲間だと考えているからだ。そんな中僕達は一番下のアディラスである。だからこうして毎日朝から夜まで働かなきゃ行けないのだ。

「ふぅ...。疲れたわ。今日はもうお風呂入って寝ましょ。」
そう言って少女は先にお風呂場へ向かう。
「覗いちゃだめよ?」
少しイタズラっぽい笑みを浮かべてこちらを振り返る。
「わかってるよ。」
反応が気に入らなかったのかムスっとした顔をしてそそくさとお風呂場へ向かって行った。
「お風呂上がったよ~って寝てるじゃない...。まぁ今日は沢山働いたものね。お疲れ様。」

目が覚めるとがつくと朝になっていた。
「おはよう。起きたのね。」
キッチンのところからひょこっと顔を出してきた。彼女は普段から早寝早起きは徹底しているようだ。
「あぁ。あのまま寝ちゃってたみたいだな。昨日はいれなかったからお風呂はいってくるわ。」

「あ、おかえり。ご飯もうできてるよ。」
お風呂から上がっできたところを待ってましたと言わんばかりの顔で待っていたようだ。
「んっ!美味しい!」
素直に感想がポロッと口から出るほどの美味しさだった。彼女は少し照れたようでほっぺたを赤らめながらもありがとうっと口にしていた。彼女もそう。亜人族は異常なほどに差別される。だから小さい頃から必要最低限のことはできて当たり前。見てる方がなんだか痛々しい。でもこうして楽しく食事ができてるのは嬉しい事だと思う。
「何にやにやしてんのよ。」
ふと見ると彼女はちょっと怪訝そうな顔をしてこちらを伺っていた。苦笑いをして誤魔化すもそそくさと片付けに行ってしまった。
こんな生活を彼女と楽しむようになったのはいつのことだっただろう...。
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