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26. 打ち消す不安
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はあはあはあ…
大きく肩で息をする2人。
どこまで走り逃げただろうか?
人気の少ない公園までたどり着くと、2人はベンチの裏の草の茂みに逃げ込んだ。
「追ってくるかな?…ここなら見つからないだろう…」
流れる汗を拭うと、健人は思わず千春を抱き寄せた。
「大丈夫か?」
「…うん」
健人の胸に顔を埋め、か細く頷く千春は、ガタガタと体を震わせていた。
健人はギュっと手に力をこめると、耳元で囁いた。
「もう…大丈夫だから…安心して…」
健人の体温に包まれるように、安らぎを感じ取った千春は、徐々に落ち着きをに取り戻していった。
「何された?」
抱きしめたまま、尋ねる健人。
千春は、一瞬、ハッと目を見開いて、無言でいた。
そして、言いたくないかのように目を瞑ったが、健人に見られた以上、だんまりを決め込むのも無理と悟ったか、やがて小声で、呟いた。
「…む、胸触られた…」
健人は、千春の顔をマジマジと見ながら、不安を隠しきれず、確認する。
「他には?」
「…あと…下も」
「え?」
「触られた…だけだよ」
「……」
ムッとした表情の健人。
「ちょっとだけ…だから…健人が助けにきてくれたから…」
「ほんと?ほんと?他には?何された?」
「ううん…他は、ないよ」
「大丈夫?」
「うん…大丈夫だよ」
不安を打ち消すように、健人は更にギュッと力強く千春を抱きしめると、
「戻ってくるのが遅いから気になって…よかった…大変なことになる前に間に合って…」
「ありがと…健人、強いんだね…」
「ハハ、もう必死だった…押さえつけられた千春を見た瞬間、頭に血がのぼって…無我夢中で…気がついたら、殴りかかってた…でも、結局、逃げたけど…カッコ悪いだろ…」
額に手を当てながら、健人は照れ隠しのように目を覆い隠し、顔を背けた。
「ううん、助けてくれて、ありがと…」
健人は、千春の頬を両手で包み込むと、
「もうこんなことは、二度とごめんだ…」
千春を間近で見つめる健人に、千春は無言のまま。
「……」
「わかってる?俺の言ってる意味」
「え?」
公園の草むらの茂みの陰で2人座り込んだまま、健人は、ゆっくりと話し始めた。
「俺と出会う前の千春が、誰と付き合っていようと、何をしてようと、昔のことだから、どうしようもないのはわかってる」
「……」
「俺だって、過去に付き合ってた人いるし、街中でばったり出会うこともあるだろうし…」
「それは、僕も理解している…」
「俺も、先輩から言葉とか気をつけろって言われてた…千春は、他にもセフレが何人もいるの?」
(…セフレ)
ドキッとする千春は、すぐに声がでなかった。
「……」
(…自分の初恋を叶わないからって、勝手気ままに、自由にセックスや恋愛のまねごとを楽しんできたつけがまわってきたのか…)
「千春…」
見つめる健人の瞳に、切なさが漂う。
「君が十分に魅力的なことは理解している。他が放っておかないのもわかる。君は、僕しかいないと言いながら、その影で、違う男を求めるの?」
「ちがうっ!!!」
その言葉に、千春は迷わず、自分の手で健人の口を塞ぎ、否定した。
「ちがう…ちがうよ…ノンケの健人が、まさか僕と…なんて思ってなかったから…自暴自棄になってるときがあって…ほんとに今は、ちがうんだ…信じてほしい…信じて」
最後は、懇願するようにすがる千春。
「……」
黙ったまま、しばらく千春の顔を見つめる健人は、やがて、
「わかった」
「健人…」
「おかしいだろ…」
「え?」
「他人といる君を見て、動揺する俺なんか…」
「…そんな…」
恥ずかしげに、一瞬目を逸らした健人だが、ふっと軽く深呼吸すると、千春に視線を戻し、
「俺の側にいてくれる?」
その言葉に、千春は、ドクンと心臓が鳴った。
「もう…他のヤツと一緒にいる千春とか、見たくない…」
高鳴る心臓の鼓動に、千春の瞳にじわっと涙が滲む。
「過去のことは消せないけど、でも俺、前を向いていたいし…後悔したくないし…う、うまく言えないけど…」
その言葉に、千春は声を詰まらせ、目に涙を潤ませる。
「…け…んと…」
「泣いてるの?」
え?え?と慌てる健人。
「どっち?え?どっちの涙???どこか?痛いの???」
「違うよ…うれしい方…うれしくて…涙、込み上げてきた…」
ポロっと一筋の涙粒が千春の頬を伝うと、健人は、指ですっと撫でると、ぐいっと千春の顎を上げ、優しく千春と唇を重ねる。
チュッチュッと、音を立てながら、何度も何度もキスを繰り返す。
健人の唇が、千春の上唇を優しく、はふっと噛んだかと思うと、愛おしく吸い付く。
戯れ合うかのように、くっついたり離れたりする2人のキスに、千春は、クスッと笑ってしまう。
「くすぐったいよ…」
甘い吐息と一緒に囁く千春に、笑みを漏らす健人。
戯れあってるうちに、バランスを崩し、ドサっと地面に体が崩れ落ちる。
千春を下に、覆い被さる健人は、瞳を見つめていたかと思うと、一言、
「ち…はる…」
と呟くと、千春の口の中にグッと舌を入れ始め、また、千春も欲していたかのように受け入れる。
健人と千春は、お互いの指と指を絡め合わせると、同じ波長でゆっくりと絡め、求め合う舌と舌。
次第にそれは一段の激しさを増すと、暗闇に溶け合うように、2人の影は1つに重なり合っていく。
「俺から離れるな…」
クスッと千春が微笑むと、
「もう勘違いって言わない?」
ハハ…と健人は苦笑いすると、
「勘違いさせたなら、一生俺のそばにつなぎとめてやる」
「一生?!」
お互い抱きしめ合いながら、笑い転げる千春は、健人を強く抱きしめ、幸せを噛みしめていた。
大きく肩で息をする2人。
どこまで走り逃げただろうか?
人気の少ない公園までたどり着くと、2人はベンチの裏の草の茂みに逃げ込んだ。
「追ってくるかな?…ここなら見つからないだろう…」
流れる汗を拭うと、健人は思わず千春を抱き寄せた。
「大丈夫か?」
「…うん」
健人の胸に顔を埋め、か細く頷く千春は、ガタガタと体を震わせていた。
健人はギュっと手に力をこめると、耳元で囁いた。
「もう…大丈夫だから…安心して…」
健人の体温に包まれるように、安らぎを感じ取った千春は、徐々に落ち着きをに取り戻していった。
「何された?」
抱きしめたまま、尋ねる健人。
千春は、一瞬、ハッと目を見開いて、無言でいた。
そして、言いたくないかのように目を瞑ったが、健人に見られた以上、だんまりを決め込むのも無理と悟ったか、やがて小声で、呟いた。
「…む、胸触られた…」
健人は、千春の顔をマジマジと見ながら、不安を隠しきれず、確認する。
「他には?」
「…あと…下も」
「え?」
「触られた…だけだよ」
「……」
ムッとした表情の健人。
「ちょっとだけ…だから…健人が助けにきてくれたから…」
「ほんと?ほんと?他には?何された?」
「ううん…他は、ないよ」
「大丈夫?」
「うん…大丈夫だよ」
不安を打ち消すように、健人は更にギュッと力強く千春を抱きしめると、
「戻ってくるのが遅いから気になって…よかった…大変なことになる前に間に合って…」
「ありがと…健人、強いんだね…」
「ハハ、もう必死だった…押さえつけられた千春を見た瞬間、頭に血がのぼって…無我夢中で…気がついたら、殴りかかってた…でも、結局、逃げたけど…カッコ悪いだろ…」
額に手を当てながら、健人は照れ隠しのように目を覆い隠し、顔を背けた。
「ううん、助けてくれて、ありがと…」
健人は、千春の頬を両手で包み込むと、
「もうこんなことは、二度とごめんだ…」
千春を間近で見つめる健人に、千春は無言のまま。
「……」
「わかってる?俺の言ってる意味」
「え?」
公園の草むらの茂みの陰で2人座り込んだまま、健人は、ゆっくりと話し始めた。
「俺と出会う前の千春が、誰と付き合っていようと、何をしてようと、昔のことだから、どうしようもないのはわかってる」
「……」
「俺だって、過去に付き合ってた人いるし、街中でばったり出会うこともあるだろうし…」
「それは、僕も理解している…」
「俺も、先輩から言葉とか気をつけろって言われてた…千春は、他にもセフレが何人もいるの?」
(…セフレ)
ドキッとする千春は、すぐに声がでなかった。
「……」
(…自分の初恋を叶わないからって、勝手気ままに、自由にセックスや恋愛のまねごとを楽しんできたつけがまわってきたのか…)
「千春…」
見つめる健人の瞳に、切なさが漂う。
「君が十分に魅力的なことは理解している。他が放っておかないのもわかる。君は、僕しかいないと言いながら、その影で、違う男を求めるの?」
「ちがうっ!!!」
その言葉に、千春は迷わず、自分の手で健人の口を塞ぎ、否定した。
「ちがう…ちがうよ…ノンケの健人が、まさか僕と…なんて思ってなかったから…自暴自棄になってるときがあって…ほんとに今は、ちがうんだ…信じてほしい…信じて」
最後は、懇願するようにすがる千春。
「……」
黙ったまま、しばらく千春の顔を見つめる健人は、やがて、
「わかった」
「健人…」
「おかしいだろ…」
「え?」
「他人といる君を見て、動揺する俺なんか…」
「…そんな…」
恥ずかしげに、一瞬目を逸らした健人だが、ふっと軽く深呼吸すると、千春に視線を戻し、
「俺の側にいてくれる?」
その言葉に、千春は、ドクンと心臓が鳴った。
「もう…他のヤツと一緒にいる千春とか、見たくない…」
高鳴る心臓の鼓動に、千春の瞳にじわっと涙が滲む。
「過去のことは消せないけど、でも俺、前を向いていたいし…後悔したくないし…う、うまく言えないけど…」
その言葉に、千春は声を詰まらせ、目に涙を潤ませる。
「…け…んと…」
「泣いてるの?」
え?え?と慌てる健人。
「どっち?え?どっちの涙???どこか?痛いの???」
「違うよ…うれしい方…うれしくて…涙、込み上げてきた…」
ポロっと一筋の涙粒が千春の頬を伝うと、健人は、指ですっと撫でると、ぐいっと千春の顎を上げ、優しく千春と唇を重ねる。
チュッチュッと、音を立てながら、何度も何度もキスを繰り返す。
健人の唇が、千春の上唇を優しく、はふっと噛んだかと思うと、愛おしく吸い付く。
戯れ合うかのように、くっついたり離れたりする2人のキスに、千春は、クスッと笑ってしまう。
「くすぐったいよ…」
甘い吐息と一緒に囁く千春に、笑みを漏らす健人。
戯れあってるうちに、バランスを崩し、ドサっと地面に体が崩れ落ちる。
千春を下に、覆い被さる健人は、瞳を見つめていたかと思うと、一言、
「ち…はる…」
と呟くと、千春の口の中にグッと舌を入れ始め、また、千春も欲していたかのように受け入れる。
健人と千春は、お互いの指と指を絡め合わせると、同じ波長でゆっくりと絡め、求め合う舌と舌。
次第にそれは一段の激しさを増すと、暗闇に溶け合うように、2人の影は1つに重なり合っていく。
「俺から離れるな…」
クスッと千春が微笑むと、
「もう勘違いって言わない?」
ハハ…と健人は苦笑いすると、
「勘違いさせたなら、一生俺のそばにつなぎとめてやる」
「一生?!」
お互い抱きしめ合いながら、笑い転げる千春は、健人を強く抱きしめ、幸せを噛みしめていた。
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