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巡る季節に告ぐ言葉・三月の雪
秋澄む・君へ送る手紙
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春分に登った龍が秋分に隠れるという故事があるが、稲作の水引を引用したという説を聞いたことがある。龍淵《りゅうふち》に潜《ひそ》む秋。だけど、その龍は、眼前で天高く昇っているように見える。細長い幾つもの龍を模した雲が、秋晴れの空を駆け巡る様子は、まるで神話の中で豊穣《ほうじょう》を祈る人々の前に現れる水神そのもの。
波打ち際で裸足のミツキがスカートの裾を持ち、波から逃げる後ろ姿を見ながら、砂浜に敷いたシートに腰かける僕は、スマホをブルートゥーススピーカーに繋いで曲を掛ける。花鳥風月プリズムZのゲットフリー。今はこの曲を何も考えずに聴くことができる。振り返るミツキが、曲に合わせて歌い出す。さすがに本人なだけあって、すごく上手。
まだ残暑が残る九月上旬。微かな熱風に砂が舞い上がり、瞳に入る僅かな粒子に思わず涙すると、ミツキが駆け寄ってきた。どうしたの、痛いの、大丈夫、と。目に砂が入っただけだよ、と言うと、本当に大丈夫なの、と。
「いくらなんでも心配しすぎだよ。身体はなんでもないから」
「ならいいんだけど。ねえ、志桜里《しおり》ちゃんと連絡取っているの?」
「いや。旅立つ前に連絡して、それっきり。志桜里は忙しいでしょ。ソロデビューして大人気だし」
「うん。メッセ入れてもなかなか返って来ないし。シュン君が帰ってきたことは教えたんだけどね」
花鳥風月プリズムZで活動していたあの頃が懐かしい、とミツキは言う。今だから話すけれど、人気絶頂だったあの頃は、毎日が議論と喧嘩で大変だったんだよ、なんて。それも今となっては良い思い出。
元メンバーの風見碧唯《かざみあおい》は、白木坂慶介《しらきざかけいすけ》と結婚をした。早すぎる結婚だ、と世間から批判を浴びたけど、うまくやっているらしい。ただ、白木坂慶介のファンから誹謗中傷を浴びせられる毎日に辟易《へきえき》しそう。でも、あの子ならうまくやれるはず。
ミツキに付き添われながら入院していた病院近くの観光ホテルは、内緒で訪れた地元の海の見える温泉宿と雰囲気が似ていて、ミツキはとても満足していた。海を臨む露天風呂までついていて、食事も海の幸がふんだんに使われた和洋折衷《わようせっちゅう》。そして、部屋から一望できる海に、ミツキは僕が入院していた頃を思い出していた。
「ねえ、この指輪を買いに行ったとき、シュン君すごく怒っていたよね。わたしスマホ忘れちゃってさ」
「ああ、うん。そう。ミツキ帰って来ないから、襲われて殺されて、埋められちゃったんだって思っていたからね」
「埋められたって、想像力働きすぎだよね。でも、あれからスマホは忘れないように気を付けているよ。シュン君に怒られたくないから」
畳の上に座卓を挟んで座ると、ミツキは立ち上がり僕の隣に移動する。そんなに一日中くっつかなくてもいいのに。でも、ミツキの言い分はこうだ。二年半も離れていたんだから、その分をここで挽回しないと、なんて。
窓を開ければ聞こえる潮騒《しおさい》に、良い薫り、と呟くミツキに唇を重ねる。頭を僕の肩に置いたミツキはしばらく沈黙する。そのまま僕の胸に耳を当てて、心臓ちゃんと動いているね、と。動いていないとすれば、僕は幽霊、いやゾンビそのものじゃない。
「でも、文化祭のゾンビは楽しかったよね。志桜里ちゃんまで参加しちゃって。またしたいな。今度はシュン君もゾンビしようよ。あ、そうだハロウィンでみんなでしたいな」
露天風呂に入ろう、と言ったミツキに腕を引かれて進む廊下の右手に休憩所があり、ここで待ち合わせね、と言って別れる僕のシャツの背中を摘まむミツキは、また泣き顔をする。
デジャブのように過去の映像が脳内にフラッシュバックする。戦場に向かう兵士の背中を追う幼気《いたいけ》な少女は、必ずここで待つから、と。離れていても心は一つだから。いや、そんな大袈裟なことを言っても、出るのは僕の方が絶対に早いから。温泉に来ると必ずこれ。
案の定、先に上がった僕は、休憩所の自販機で買ったコーヒー牛乳を一口。椅子に腰かけてスマホのニュースを覗くと、速報が流れる。鳥山志桜里が電撃引退。え。なぜ。なにが起こっているの。
思わず志桜里にメッセージを送る。だが、予想通り返信はない。既読すらつかない。ニュース速報も理由には触れておらず、なぜ引退するのか、なぜ姿を消さなくてはいけないのか。人気絶頂のタレントなのに、なぜこのタイミングで辞めなくてはいけないのか。何一つわからなかった。でも、僕はなんとなく、志桜里にはやりたいことがあるのかな、なんて漠然と考えていた。
上がってきたミツキにニュース速報を見せると、茫然《ぼうぜん》と一言。嘘、と。乾き切っていない髪をタオルで拭きながらスマホに食い入るように見るミツキに、なんで髪を乾かしてこなかったの、と訊く。だって、早くシュン君に会いたかったから。いや、そんな数分くらい我慢しようよ、ミツキ。
部屋に戻ると布団が敷かれていて、睡魔が襲う僕は、一目散に布団に潜り込む。ミツキは自分の布団に入らずに僕の布団に潜り込んでくる。いたずら心いっぱいに、足元から侵入してくるものだから掛布団は乱れる一方。でも暑いから掛布団はいらないでしょう、と。潜水するように僕の足元から息を殺して進むミツキは、やがて僕の眼前の水面から顔を覗かせる。止めていた息を吐きだし、抱きつくミツキは僕の蕩《とろ》ける意識に不平を零す。
「ねえ、寝ちゃうの」
「うん。なんだかすごく眠くて。ごめん」
「……むぅ。シュン君のいじわる。でも、いいよ。だってこれからは毎日一緒だし」
突然鳴り響くスマホに、驚いて僕は跳び起きた。こんな時間に着信が来るなんて珍しい——というより初めてだ。その画面の上部に大きく表示された鳥山志桜里《とりやましおり》の文字。こんな時間に掛けてくるなんて、いったい。ミツキもその音に擦った目を開いて、僕のスマホを覗き込む。抱きついたままのミツキの手を振り解き、少し痛む首を揉みながら応答のアイコンをタップした。
「もしもし。志桜里どうしたの。こんな時間に」
スリープを解除したミツキのスマホの時間は夜中の二時だった。ミツキは志桜里から返信されたメッセージを見ているみたい。でも、ミツキの表情はみるみる内に強張《こわば》り、只《ただ》ならぬ様子。起き上がり布団から出ると、ゆっくりとかぶりを振って窓を開けた。夜風が涼しくて、まるで熱した鉄を冷やす水みたい。潮の薫りを感じて眠い眼《まなこ》を擦り見る外の景色は、あの時と同じ、半分に切ったブラッドオレンジが海の水面に揺れていた。
きっと何かあったに違いない。そう考えると、少しだけ心臓が内側から僕を叩く。
『シュン。ごめん、こんな時間に』
「いいけど、何かあったの? 電撃引退なんて」
————私、死んじゃうみたい。
「は……何言ってるの。人間ってそう簡単に死なないよ。僕だってこうしてなんとか生き永らえているんだし。志桜里が死ぬわ————」
『血液の病気なの。ずっと微熱が続くと思っていたら……。ネットで自分の病気くらい調べられるわよ。生存率が————。今はまだ元気なんだけどね』
「志桜里……待ってよ。嘘でしょ。嘘だって言ってよ」
『シュ……ン、私ね、怖いよ。死ぬのが怖いよ。こんなに怖いんだね。シュンはどうやって克服したの。ねえ、教えて。怖いよ』
「志桜里、どこにいるの。教えて。明日になったらすぐに行くから」
『それは言えない。会ったら、辛くなるから。でも、それでも会いたいよ。シュン……』
窓辺に立つミツキに視線を送ると、こちらを振り返り、なにも言わずに頷く彼女は落ちる涙を手のひらで拭って洟《はな》を啜《すす》る。きっと、ミツキのメッセージにも入っていたのだと思う。志桜里は自分の弱みを人に見せるタイプではない。まして、どんなに体調不良でも気づかれまいと隠すような人間だ。それが、こんなにも弱々しく僕に話すのだから、どれほど一人で辛い想いをしていることだろう。そう考えれば、志桜里に寄り添ってあげたい。
あの日、倒れた僕を志桜里が支えてくれたように。
★☆☆
翌日新幹線に乗って、急遽《きゅうきょ》訪れた東京都内の大学病院。ミツキは僕に一人で行った方がいい、と提案してくれたけれど、志桜里はきっとミツキにも会いたいと思う。だから、ミツキも連れて来た。志桜里は未だ無菌室には入っておらず一般病棟だった。それでも、衣服や髪、それに手と指には細心の注意を払ってください、と看護師に言われて、全身の埃を粘着ローラーで取り去って、入念な手洗いと髪にはキャップ、それにマスクを着用して面会に向かう。
個室の扉をノックしてから扉を横にスライドすると、ベッドの上で座って窓の外を眺める志桜里がこちらに振り向く。背中まで伸びた髪は光すら吸い込んでしまいそうな漆黒で、肩を落とした姿は見ていられないほど弱々しい。ピンクのパジャマ姿は可愛らしかったけれど、顔は僕とミツキを見るなり涙と洟でぐちゃぐちゃに。
「志桜里……」
志桜里に会ったら絶対に言おうと思っていた言葉が口腔の中で彷徨《さまよ》い、彼女を見た瞬間、唇が渇き、肺が呼吸するのを止めてしまう。背中を伝う汗が不快だったけど、志桜里の呟く、シュン、という言葉で意識下のすべての神経が凍り付く。微かに動く舌でゆっくりと唇を舐めるが、脳がどんなに言葉を紡いでも、僕はそれを吐き出すことができない。
僕が死にそうなときに掛けてくれた志桜里の一つ一つの言葉の意味と、その覚悟を知った。志桜里は無責任なことは何一つ言わずに僕に寄り添ってくれた。言葉で足りない時には、僕の手を握り、頭を撫でて慰めて、時に眠るまで微笑み続けてくれた。
目の前の泣きじゃくる志桜里に対してそれができるのか。志桜里はなんて強い子だったのだろう。志桜里、僕は君になんて言葉を掛けてあげればいいの。分からないよ。
「志桜里ちゃん。気持ちで負けないで。わたしは志桜里ちゃんの恐怖は分からないけれど、志桜里ちゃんに寄り添ってあげることはいくらでもできる。だから、怖いときは怖いって言って、辛いときは辛いって言って。それを聞いてできる最善のことを考えるから。だから、一人で抱え込まないで」
眉根を寄せるミツキは毅然《きぜん》と言葉を放ち、ベッドサイドの椅子に腰かけると、志桜里の手を握る。大丈夫。志桜里ちゃんの傍にはわたしも、シュン君もいるから。あなたを見捨てたりしない。だから、気持ちで負けないで。
ミツキ……ありがとう。僕が言えないことを言ってくれて。死の恐怖を知っているから言えない、というわけではないけど、志桜里の気持ちを考えてしまうと、口に出すことが怖くなってしまう。ミツキはなんて強い子なのだろう。志桜里を見つめる眼差しを見れば、言葉に嘘がないことくらい理解できる。
「志桜里……両親はこないの?」
「お父さんがアメリカにいるけど。なかなか帰って来られないの。それに、私はあまり可愛がられているほうじゃないから」
「スクールにいた頃のおばあちゃんは? ほら、よく送迎してくれてたじゃない」
「去年亡くなったわ」
「ごめん」
ううん、と言った志桜里は僕を見て微笑んだ。シュンが帰ってきてくれて嬉しい、と。本当に心配したんだよ。スクールの帰りに倒れていたシュンを見つけた時、死んじゃったらどうしようって。私がずっと傍にいるって。私以外の人がシュンの傍にいることなんて想像できなかった。永遠に一緒にいられると思っていた。でも——運命は残酷だよね。
「シュン、ミツキ、ごめん。少し眠い。せっかく来てくれたのに」
横になる志桜里は、涙の痕《あと》を残したまま寝息を立てた。その心は酷く打ちひしがれて、降りしきる雨に濡れる捨てられた子猫のように弱々しくて。放っておいたら、朽ち果ててしまう弱り切った赤子のよう。このままになんてしておけない。
「ミツキ……僕の最初で最後のわがまま聞いてくれる?」
「——分かっているよ。一緒にいたいんでしょ。わたし先に帰るね」
「違うよ。ミツキも一緒にいて欲しい。きっと志桜里だってそう思ってるよ。だって、親友なんでしょ」
「————うん」
近くのホテルの予約を取り、しばらく帰らないことを母さんと姉さんに告げると、僕とミツキは重い気持ちのままベッドに横になった。ダブルベッドが一つだけの部屋はユニットバスが備え付けてあるものの、その他のものは何もなかった。ただ、帰って寝るだけなのでなにも問題はなかったが。
だけど、その夜、高梨さんから急に連絡が入る。志桜里の意識がなくなったと。急いで病院に駆けつけると、志桜里は予断を許さない状況だった。
常夜灯《じょうやとう》だけが点《つ》いた暗い廊下のベンチに座る高梨さんに挨拶をして事情を聴くと、志桜里は突然レベル低下を起こして意識を消失したのだという。一時的な意識障害の可能性が高いけど、もしかしたら、危険な状況かもしれない、と。
「志桜里ちゃん、昼間は元気だったのに、なんで……」
涙を流すミツキの肩を抱き寄せて俯く僕に、高梨さんは封書差し出した。何ですかこれは、と言い受け取る
「志桜里から預かったの。もしものときは春夜くんに読んで欲しいって」
「もしものときって、今じゃないですよね? まさかこんなに簡単に志桜里は逝《い》かないですよね!?」
ごめんね、分からないの、と言った高梨さんは明後日の方を向いて肩を震わせていた。まさか僕が帰ってきてまだ僅かな時間も話していない志桜里が、こんなに簡単にいなくなってしまうはずがない。だって、本当なら志桜里は僕よりもずっと長生きして、幸せに生きていくのだと思っていたのだから。悪い冗談はやめてよ。お願いだから、嘘だと言って。悪夢なら今すぐに覚めて。
震える手で、受け取ったピンク色の封筒を開ける。達筆な字で書かれた手紙に添えられていたのは、あの時の紅葉の葉。思い出が増えた、と言って拾った秋の欠片。思い出の破片。
シュン、なんて書いていいか分からないね。手紙を書くなんて柄じゃないから、迷うの。でも、伝えたいことは伝えないと後悔しちゃうから、がんばって書くね。
初めて出会ったころのことは覚えていないけど、気付いたら近くにいた。それが私とシュンの関係だよね。気付いた時から毎日ダンスをして、二人で練習した日々は、今でも心に焼き付いている思い出。大会の前の日は、スタジオの練習じゃ足りないって、深夜の駅間で窓ガラスを鏡がわりに練習したよね。でも、優勝できなかったシュンは、この世の終わりみたいな顔をして。初デートは、すごくスリリングで楽しかった。
シュンもミツキもいなくなっちゃった私は、すごく寂しかったんだ。はじめはミツキを恨んだけど、でも、今では相手がミツキで本当に良かったと思っているの。だって、二人とも大切だから。私の宝物。文化祭では喧嘩しちゃったけど、投げ合ったこんにゃくの思い出は、今でも笑っちゃう。シュンに撮ってもらった写真は、私の一生の宝物。きっと、将来、結婚して子供ができて、その時に家族に自慢しようと思っていたんだ。なのに、こんなことになっちゃうなんて。
泣かないって決めていたのに。フラれた日だって、シュンが見えなくなるまでは堪えていたんだよ。絶対に泣かないようにって。なのに、弱気になっちゃってごめん。でも、最期くらい許してください。
今までありがとう。いつも優しくて、頼もしくて、ヒーローだったシュンが大好き。わたしを叱《しか》ってくれるシュンが大好き。わたしを褒めてくれるシュンが大好き。わたしを認めてくれるシュンが大好き。
今でもシュンが大好き。すごく大好き。愛を教えてくれてありがとう。
ミツキと仲良くね。またね、シュン。
手紙はところどころ滲《にじ》んでいて、末文の筆跡は震えていた。どんな想いで書いたのか、と考えるといてもたってもいられなかった。勝手だよ志桜里。僕の話を聞かないまま逝っちゃうなんて絶対に許さないから。
「シュン君……うぁああああああああああああああああああああんシュン君」
「……ミツキ。僕、志桜里にちゃんと声かけてあげられなかった。こんなことになるなんて、思ってもみなかったんだ」
集中治療室から出てくる若い男の医者は、かぶりを振りながら告げる。会ってあげて下さい、って。観音開《かんのんびら》きの扉を思いきり開けて、中に入ると、人工呼吸器を口に繋がれた志桜里は瞳を閉じたまま、モニターに繋がれて、まるであの頃の自分みたいに。僕は、そんな志桜里の手を握って、叫んだ。
「志桜里!!!!!!!!!!!! ごめん。苦しめたことも、気持ちを受け入れられなかったことも。自分勝手な僕も。志桜里に救われた命を……それなのに、ごめん。置いていかないでよ。僕より先に死ぬな」
僕の声に反応した志桜里は、僅《わず》かに瞼を動かして、僕の手を握り返した……気がした。その力は神経を研ぎ澄まさなければ分からないほど。だけど、微かに動いた気がした。志桜里はまだ生きている。死んでいない。なんとか生きて欲しい。
志桜里はなんとか一命を取り留めたものの、医者の宣告が正しければ、長くて半年。こんなに悪化するまで症状が出なかったはずはない、と。よほど忙しかったのだろう。もし、誰かが寄り添ってその変化に気付いてあげられたら、きっとこうはならなかったはず。
もし、僕があの時寄り添ってあげていれば、気付いてあげられたかもしれないのに。
「シュン君のせいじゃないよ。これは、誰のせいでも……」
「……うん。でも、僕は————見殺しに」
「違うよ。そんなはずないよ。シュン君だって」
「うん。分かっているけど、悔しいんだ」
それから、病状が安定した志桜里は、僕の家の近くの病院に転院した。どこの病院であろうとも、治療法は変わらないし、面倒を見てくれる人の近くにいたほうが本人も幸せだ、と。家の近くの病院は緩和ケア病棟があって、評判も良い病院だった。僕が毎日、志桜里に寄り添うから。
志桜里、簡単に死なないで欲しい。諦めないで。
僕の大切な幼馴染なんだから。
波打ち際で裸足のミツキがスカートの裾を持ち、波から逃げる後ろ姿を見ながら、砂浜に敷いたシートに腰かける僕は、スマホをブルートゥーススピーカーに繋いで曲を掛ける。花鳥風月プリズムZのゲットフリー。今はこの曲を何も考えずに聴くことができる。振り返るミツキが、曲に合わせて歌い出す。さすがに本人なだけあって、すごく上手。
まだ残暑が残る九月上旬。微かな熱風に砂が舞い上がり、瞳に入る僅かな粒子に思わず涙すると、ミツキが駆け寄ってきた。どうしたの、痛いの、大丈夫、と。目に砂が入っただけだよ、と言うと、本当に大丈夫なの、と。
「いくらなんでも心配しすぎだよ。身体はなんでもないから」
「ならいいんだけど。ねえ、志桜里《しおり》ちゃんと連絡取っているの?」
「いや。旅立つ前に連絡して、それっきり。志桜里は忙しいでしょ。ソロデビューして大人気だし」
「うん。メッセ入れてもなかなか返って来ないし。シュン君が帰ってきたことは教えたんだけどね」
花鳥風月プリズムZで活動していたあの頃が懐かしい、とミツキは言う。今だから話すけれど、人気絶頂だったあの頃は、毎日が議論と喧嘩で大変だったんだよ、なんて。それも今となっては良い思い出。
元メンバーの風見碧唯《かざみあおい》は、白木坂慶介《しらきざかけいすけ》と結婚をした。早すぎる結婚だ、と世間から批判を浴びたけど、うまくやっているらしい。ただ、白木坂慶介のファンから誹謗中傷を浴びせられる毎日に辟易《へきえき》しそう。でも、あの子ならうまくやれるはず。
ミツキに付き添われながら入院していた病院近くの観光ホテルは、内緒で訪れた地元の海の見える温泉宿と雰囲気が似ていて、ミツキはとても満足していた。海を臨む露天風呂までついていて、食事も海の幸がふんだんに使われた和洋折衷《わようせっちゅう》。そして、部屋から一望できる海に、ミツキは僕が入院していた頃を思い出していた。
「ねえ、この指輪を買いに行ったとき、シュン君すごく怒っていたよね。わたしスマホ忘れちゃってさ」
「ああ、うん。そう。ミツキ帰って来ないから、襲われて殺されて、埋められちゃったんだって思っていたからね」
「埋められたって、想像力働きすぎだよね。でも、あれからスマホは忘れないように気を付けているよ。シュン君に怒られたくないから」
畳の上に座卓を挟んで座ると、ミツキは立ち上がり僕の隣に移動する。そんなに一日中くっつかなくてもいいのに。でも、ミツキの言い分はこうだ。二年半も離れていたんだから、その分をここで挽回しないと、なんて。
窓を開ければ聞こえる潮騒《しおさい》に、良い薫り、と呟くミツキに唇を重ねる。頭を僕の肩に置いたミツキはしばらく沈黙する。そのまま僕の胸に耳を当てて、心臓ちゃんと動いているね、と。動いていないとすれば、僕は幽霊、いやゾンビそのものじゃない。
「でも、文化祭のゾンビは楽しかったよね。志桜里ちゃんまで参加しちゃって。またしたいな。今度はシュン君もゾンビしようよ。あ、そうだハロウィンでみんなでしたいな」
露天風呂に入ろう、と言ったミツキに腕を引かれて進む廊下の右手に休憩所があり、ここで待ち合わせね、と言って別れる僕のシャツの背中を摘まむミツキは、また泣き顔をする。
デジャブのように過去の映像が脳内にフラッシュバックする。戦場に向かう兵士の背中を追う幼気《いたいけ》な少女は、必ずここで待つから、と。離れていても心は一つだから。いや、そんな大袈裟なことを言っても、出るのは僕の方が絶対に早いから。温泉に来ると必ずこれ。
案の定、先に上がった僕は、休憩所の自販機で買ったコーヒー牛乳を一口。椅子に腰かけてスマホのニュースを覗くと、速報が流れる。鳥山志桜里が電撃引退。え。なぜ。なにが起こっているの。
思わず志桜里にメッセージを送る。だが、予想通り返信はない。既読すらつかない。ニュース速報も理由には触れておらず、なぜ引退するのか、なぜ姿を消さなくてはいけないのか。人気絶頂のタレントなのに、なぜこのタイミングで辞めなくてはいけないのか。何一つわからなかった。でも、僕はなんとなく、志桜里にはやりたいことがあるのかな、なんて漠然と考えていた。
上がってきたミツキにニュース速報を見せると、茫然《ぼうぜん》と一言。嘘、と。乾き切っていない髪をタオルで拭きながらスマホに食い入るように見るミツキに、なんで髪を乾かしてこなかったの、と訊く。だって、早くシュン君に会いたかったから。いや、そんな数分くらい我慢しようよ、ミツキ。
部屋に戻ると布団が敷かれていて、睡魔が襲う僕は、一目散に布団に潜り込む。ミツキは自分の布団に入らずに僕の布団に潜り込んでくる。いたずら心いっぱいに、足元から侵入してくるものだから掛布団は乱れる一方。でも暑いから掛布団はいらないでしょう、と。潜水するように僕の足元から息を殺して進むミツキは、やがて僕の眼前の水面から顔を覗かせる。止めていた息を吐きだし、抱きつくミツキは僕の蕩《とろ》ける意識に不平を零す。
「ねえ、寝ちゃうの」
「うん。なんだかすごく眠くて。ごめん」
「……むぅ。シュン君のいじわる。でも、いいよ。だってこれからは毎日一緒だし」
突然鳴り響くスマホに、驚いて僕は跳び起きた。こんな時間に着信が来るなんて珍しい——というより初めてだ。その画面の上部に大きく表示された鳥山志桜里《とりやましおり》の文字。こんな時間に掛けてくるなんて、いったい。ミツキもその音に擦った目を開いて、僕のスマホを覗き込む。抱きついたままのミツキの手を振り解き、少し痛む首を揉みながら応答のアイコンをタップした。
「もしもし。志桜里どうしたの。こんな時間に」
スリープを解除したミツキのスマホの時間は夜中の二時だった。ミツキは志桜里から返信されたメッセージを見ているみたい。でも、ミツキの表情はみるみる内に強張《こわば》り、只《ただ》ならぬ様子。起き上がり布団から出ると、ゆっくりとかぶりを振って窓を開けた。夜風が涼しくて、まるで熱した鉄を冷やす水みたい。潮の薫りを感じて眠い眼《まなこ》を擦り見る外の景色は、あの時と同じ、半分に切ったブラッドオレンジが海の水面に揺れていた。
きっと何かあったに違いない。そう考えると、少しだけ心臓が内側から僕を叩く。
『シュン。ごめん、こんな時間に』
「いいけど、何かあったの? 電撃引退なんて」
————私、死んじゃうみたい。
「は……何言ってるの。人間ってそう簡単に死なないよ。僕だってこうしてなんとか生き永らえているんだし。志桜里が死ぬわ————」
『血液の病気なの。ずっと微熱が続くと思っていたら……。ネットで自分の病気くらい調べられるわよ。生存率が————。今はまだ元気なんだけどね』
「志桜里……待ってよ。嘘でしょ。嘘だって言ってよ」
『シュ……ン、私ね、怖いよ。死ぬのが怖いよ。こんなに怖いんだね。シュンはどうやって克服したの。ねえ、教えて。怖いよ』
「志桜里、どこにいるの。教えて。明日になったらすぐに行くから」
『それは言えない。会ったら、辛くなるから。でも、それでも会いたいよ。シュン……』
窓辺に立つミツキに視線を送ると、こちらを振り返り、なにも言わずに頷く彼女は落ちる涙を手のひらで拭って洟《はな》を啜《すす》る。きっと、ミツキのメッセージにも入っていたのだと思う。志桜里は自分の弱みを人に見せるタイプではない。まして、どんなに体調不良でも気づかれまいと隠すような人間だ。それが、こんなにも弱々しく僕に話すのだから、どれほど一人で辛い想いをしていることだろう。そう考えれば、志桜里に寄り添ってあげたい。
あの日、倒れた僕を志桜里が支えてくれたように。
★☆☆
翌日新幹線に乗って、急遽《きゅうきょ》訪れた東京都内の大学病院。ミツキは僕に一人で行った方がいい、と提案してくれたけれど、志桜里はきっとミツキにも会いたいと思う。だから、ミツキも連れて来た。志桜里は未だ無菌室には入っておらず一般病棟だった。それでも、衣服や髪、それに手と指には細心の注意を払ってください、と看護師に言われて、全身の埃を粘着ローラーで取り去って、入念な手洗いと髪にはキャップ、それにマスクを着用して面会に向かう。
個室の扉をノックしてから扉を横にスライドすると、ベッドの上で座って窓の外を眺める志桜里がこちらに振り向く。背中まで伸びた髪は光すら吸い込んでしまいそうな漆黒で、肩を落とした姿は見ていられないほど弱々しい。ピンクのパジャマ姿は可愛らしかったけれど、顔は僕とミツキを見るなり涙と洟でぐちゃぐちゃに。
「志桜里……」
志桜里に会ったら絶対に言おうと思っていた言葉が口腔の中で彷徨《さまよ》い、彼女を見た瞬間、唇が渇き、肺が呼吸するのを止めてしまう。背中を伝う汗が不快だったけど、志桜里の呟く、シュン、という言葉で意識下のすべての神経が凍り付く。微かに動く舌でゆっくりと唇を舐めるが、脳がどんなに言葉を紡いでも、僕はそれを吐き出すことができない。
僕が死にそうなときに掛けてくれた志桜里の一つ一つの言葉の意味と、その覚悟を知った。志桜里は無責任なことは何一つ言わずに僕に寄り添ってくれた。言葉で足りない時には、僕の手を握り、頭を撫でて慰めて、時に眠るまで微笑み続けてくれた。
目の前の泣きじゃくる志桜里に対してそれができるのか。志桜里はなんて強い子だったのだろう。志桜里、僕は君になんて言葉を掛けてあげればいいの。分からないよ。
「志桜里ちゃん。気持ちで負けないで。わたしは志桜里ちゃんの恐怖は分からないけれど、志桜里ちゃんに寄り添ってあげることはいくらでもできる。だから、怖いときは怖いって言って、辛いときは辛いって言って。それを聞いてできる最善のことを考えるから。だから、一人で抱え込まないで」
眉根を寄せるミツキは毅然《きぜん》と言葉を放ち、ベッドサイドの椅子に腰かけると、志桜里の手を握る。大丈夫。志桜里ちゃんの傍にはわたしも、シュン君もいるから。あなたを見捨てたりしない。だから、気持ちで負けないで。
ミツキ……ありがとう。僕が言えないことを言ってくれて。死の恐怖を知っているから言えない、というわけではないけど、志桜里の気持ちを考えてしまうと、口に出すことが怖くなってしまう。ミツキはなんて強い子なのだろう。志桜里を見つめる眼差しを見れば、言葉に嘘がないことくらい理解できる。
「志桜里……両親はこないの?」
「お父さんがアメリカにいるけど。なかなか帰って来られないの。それに、私はあまり可愛がられているほうじゃないから」
「スクールにいた頃のおばあちゃんは? ほら、よく送迎してくれてたじゃない」
「去年亡くなったわ」
「ごめん」
ううん、と言った志桜里は僕を見て微笑んだ。シュンが帰ってきてくれて嬉しい、と。本当に心配したんだよ。スクールの帰りに倒れていたシュンを見つけた時、死んじゃったらどうしようって。私がずっと傍にいるって。私以外の人がシュンの傍にいることなんて想像できなかった。永遠に一緒にいられると思っていた。でも——運命は残酷だよね。
「シュン、ミツキ、ごめん。少し眠い。せっかく来てくれたのに」
横になる志桜里は、涙の痕《あと》を残したまま寝息を立てた。その心は酷く打ちひしがれて、降りしきる雨に濡れる捨てられた子猫のように弱々しくて。放っておいたら、朽ち果ててしまう弱り切った赤子のよう。このままになんてしておけない。
「ミツキ……僕の最初で最後のわがまま聞いてくれる?」
「——分かっているよ。一緒にいたいんでしょ。わたし先に帰るね」
「違うよ。ミツキも一緒にいて欲しい。きっと志桜里だってそう思ってるよ。だって、親友なんでしょ」
「————うん」
近くのホテルの予約を取り、しばらく帰らないことを母さんと姉さんに告げると、僕とミツキは重い気持ちのままベッドに横になった。ダブルベッドが一つだけの部屋はユニットバスが備え付けてあるものの、その他のものは何もなかった。ただ、帰って寝るだけなのでなにも問題はなかったが。
だけど、その夜、高梨さんから急に連絡が入る。志桜里の意識がなくなったと。急いで病院に駆けつけると、志桜里は予断を許さない状況だった。
常夜灯《じょうやとう》だけが点《つ》いた暗い廊下のベンチに座る高梨さんに挨拶をして事情を聴くと、志桜里は突然レベル低下を起こして意識を消失したのだという。一時的な意識障害の可能性が高いけど、もしかしたら、危険な状況かもしれない、と。
「志桜里ちゃん、昼間は元気だったのに、なんで……」
涙を流すミツキの肩を抱き寄せて俯く僕に、高梨さんは封書差し出した。何ですかこれは、と言い受け取る
「志桜里から預かったの。もしものときは春夜くんに読んで欲しいって」
「もしものときって、今じゃないですよね? まさかこんなに簡単に志桜里は逝《い》かないですよね!?」
ごめんね、分からないの、と言った高梨さんは明後日の方を向いて肩を震わせていた。まさか僕が帰ってきてまだ僅かな時間も話していない志桜里が、こんなに簡単にいなくなってしまうはずがない。だって、本当なら志桜里は僕よりもずっと長生きして、幸せに生きていくのだと思っていたのだから。悪い冗談はやめてよ。お願いだから、嘘だと言って。悪夢なら今すぐに覚めて。
震える手で、受け取ったピンク色の封筒を開ける。達筆な字で書かれた手紙に添えられていたのは、あの時の紅葉の葉。思い出が増えた、と言って拾った秋の欠片。思い出の破片。
シュン、なんて書いていいか分からないね。手紙を書くなんて柄じゃないから、迷うの。でも、伝えたいことは伝えないと後悔しちゃうから、がんばって書くね。
初めて出会ったころのことは覚えていないけど、気付いたら近くにいた。それが私とシュンの関係だよね。気付いた時から毎日ダンスをして、二人で練習した日々は、今でも心に焼き付いている思い出。大会の前の日は、スタジオの練習じゃ足りないって、深夜の駅間で窓ガラスを鏡がわりに練習したよね。でも、優勝できなかったシュンは、この世の終わりみたいな顔をして。初デートは、すごくスリリングで楽しかった。
シュンもミツキもいなくなっちゃった私は、すごく寂しかったんだ。はじめはミツキを恨んだけど、でも、今では相手がミツキで本当に良かったと思っているの。だって、二人とも大切だから。私の宝物。文化祭では喧嘩しちゃったけど、投げ合ったこんにゃくの思い出は、今でも笑っちゃう。シュンに撮ってもらった写真は、私の一生の宝物。きっと、将来、結婚して子供ができて、その時に家族に自慢しようと思っていたんだ。なのに、こんなことになっちゃうなんて。
泣かないって決めていたのに。フラれた日だって、シュンが見えなくなるまでは堪えていたんだよ。絶対に泣かないようにって。なのに、弱気になっちゃってごめん。でも、最期くらい許してください。
今までありがとう。いつも優しくて、頼もしくて、ヒーローだったシュンが大好き。わたしを叱《しか》ってくれるシュンが大好き。わたしを褒めてくれるシュンが大好き。わたしを認めてくれるシュンが大好き。
今でもシュンが大好き。すごく大好き。愛を教えてくれてありがとう。
ミツキと仲良くね。またね、シュン。
手紙はところどころ滲《にじ》んでいて、末文の筆跡は震えていた。どんな想いで書いたのか、と考えるといてもたってもいられなかった。勝手だよ志桜里。僕の話を聞かないまま逝っちゃうなんて絶対に許さないから。
「シュン君……うぁああああああああああああああああああああんシュン君」
「……ミツキ。僕、志桜里にちゃんと声かけてあげられなかった。こんなことになるなんて、思ってもみなかったんだ」
集中治療室から出てくる若い男の医者は、かぶりを振りながら告げる。会ってあげて下さい、って。観音開《かんのんびら》きの扉を思いきり開けて、中に入ると、人工呼吸器を口に繋がれた志桜里は瞳を閉じたまま、モニターに繋がれて、まるであの頃の自分みたいに。僕は、そんな志桜里の手を握って、叫んだ。
「志桜里!!!!!!!!!!!! ごめん。苦しめたことも、気持ちを受け入れられなかったことも。自分勝手な僕も。志桜里に救われた命を……それなのに、ごめん。置いていかないでよ。僕より先に死ぬな」
僕の声に反応した志桜里は、僅《わず》かに瞼を動かして、僕の手を握り返した……気がした。その力は神経を研ぎ澄まさなければ分からないほど。だけど、微かに動いた気がした。志桜里はまだ生きている。死んでいない。なんとか生きて欲しい。
志桜里はなんとか一命を取り留めたものの、医者の宣告が正しければ、長くて半年。こんなに悪化するまで症状が出なかったはずはない、と。よほど忙しかったのだろう。もし、誰かが寄り添ってその変化に気付いてあげられたら、きっとこうはならなかったはず。
もし、僕があの時寄り添ってあげていれば、気付いてあげられたかもしれないのに。
「シュン君のせいじゃないよ。これは、誰のせいでも……」
「……うん。でも、僕は————見殺しに」
「違うよ。そんなはずないよ。シュン君だって」
「うん。分かっているけど、悔しいんだ」
それから、病状が安定した志桜里は、僕の家の近くの病院に転院した。どこの病院であろうとも、治療法は変わらないし、面倒を見てくれる人の近くにいたほうが本人も幸せだ、と。家の近くの病院は緩和ケア病棟があって、評判も良い病院だった。僕が毎日、志桜里に寄り添うから。
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