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楽しい。
この行為の最中、そう思えたのはいつぶりだろうか。気がつけばダリュカは少年を抱えて、ぐちゃりとした山の上に下ろしていた。そして身体に残る、獣の血に身を任せるように少年の中を貪った。
二人して声を抑えることを忘れ、ハッハッと荒い息を漏らす。正直、途中から取引のことなど忘れていた。ただ、目の前の愛おしい人を孕ませることで頭がいっぱいだったのだ。
そんなダリュカが正気に戻ったのは、終わりの鐘が響いたから。ゴーンゴーンとなる鐘でやっと身体の下にいる少年が痙攣していることに気がついた。
「だ、大丈夫か? 水、水!」
ゆっくりと大きく息をする彼に残った水を飲ませ、背中を撫でてやる。こうなるまで気がつかないなんて、最低だ。落ち込んだダリュカは悪かったと落ち込みながら彼の背中を撫でた。彼は弱々しく手を伸ばし、ダリュカの腕に乗せる。
「だいじょぶ、です。それより、もう、時間だから。いって」
すっかり枯れた声で少年は、ここを立ち去るようにと告げた。すでに大量のタネを吐き出したダリュカはもう、用済みということだろう。
取引は終わったのだ。
「悪かった」
そう告げて、彼を毛布に包み込む。水の入ったボトルを一本だけ彼の隣に残して、残りの荷物をまとめるとダリュカはその場を後にした。
「ダリュカ遅かったな!」
「本を戻すのに手間取っていた」
集合場所の食堂にはすでにキルシュカの姿があった。手に持った食器は城の使用人に託し、ウサギ獣人の輪の中へと入る。するとそこには今朝会った男の姿もあった。
「なんだ本好きはギリギリまで本読んでたのか」
「朝飯はゆっくり食べたからな」
「どうだった? 美味かっただろ!」
「今まで食った中で一番美味かった」
そうだろう、そうだろうと彼は耳をぴょこぴょこと動かしながらまるで自分のことのように喜ぶ。ダリュカが助かったと礼を言えば、そんな姿が珍しかったのかキルシュカは目を丸くして驚いた。
「なんだ、ダリュカ。知り合いができたのか?」
「今朝会って美味い飯教えてもらったんだ」
「本当はカレーも食ってもらいたかったんだけどな~」
「あそこで食う飯が一番うまいからいいんだよ」
「好きなものに囲まれてるから、ってことか」
「ああ」
この先、彼と食べた料理ほど美味い飯に出会うことはもうないのかもしれない。彼への愛おしさがあったからこそ、いつもの時間も楽しくて、大切な思い出に柔らかな色がつく。たとえそれが年月とともに色褪せるものだとしても、あの時の飯は美味しかったという記憶は忘れることはない。
「ダリュカって食べる場所こだわるタイプだったっけ?」
「あそこは特別な場所だからな」
「ふーん」
ダリュカが食事の場所にこだわらないことを知っているキルシュカは不思議そうに首を捻る。だが深く言及してくるようなことはしない。ただ「良いものが見つかって良かったな」と告げるだけ。
ダリュカの後にもう一人が到着したことで全員の集合が確認され、前に並ぶ者から順番に軽くチェックが入る。チェックといってもこの二日間で主に何をしていたかとか、立ち入り禁止区域に入らなかったかとかそんな質問である。
ダリュカの番になり、前の男と同じようにバングルを回収箱に入れられると思いきや、係の者はダリュカを見て眉間に皺を寄せた。怒っているというよりも、バングルとダリュカを見比べて何かを悩んでいるような様子である。
「バングルをチェックさせて頂きますね」
「どうぞ」
「……反応なし、か。もしかして王子を孕ませたりしましたか?」
「結局王子がどんな顔をしているのかすら分からなかったな」
最後まで彼は自身の名前を名乗らなかったし、ダリュカも聞かなかった。
万が一何かあっても知らなかったと押し倒せば良い。申告しないで困るのはこちら側だけだ。それも報奨金を取りっぱぐれるから。すでに報酬をもらっているダリュカにとっての損はない。
報酬なら、彼からもらったメモだけで十分なのだから。
「そう、ですか……。少し待っていてもらってもよろしいでしょうか」
「はい」
ダリュカの返事に納得いかないようで、少し離れたところで他の職員達と話し合う。小声で話してはいるが『図書館の』だの『それらしい報告はないので合意だろう』だの途切れ途切れに声が聞こえてくる。
どうやら直前まで交わっていたのでオメガの香りが移っていたらしい。発情香となるとウサギ獣人のダリュカでは判別が出来ないので確かめる術はない。
彼らはダリュカのバングルからそれらしい反応がないことを確認すると、それ以上追求されることなく解放してくれた。
この行為の最中、そう思えたのはいつぶりだろうか。気がつけばダリュカは少年を抱えて、ぐちゃりとした山の上に下ろしていた。そして身体に残る、獣の血に身を任せるように少年の中を貪った。
二人して声を抑えることを忘れ、ハッハッと荒い息を漏らす。正直、途中から取引のことなど忘れていた。ただ、目の前の愛おしい人を孕ませることで頭がいっぱいだったのだ。
そんなダリュカが正気に戻ったのは、終わりの鐘が響いたから。ゴーンゴーンとなる鐘でやっと身体の下にいる少年が痙攣していることに気がついた。
「だ、大丈夫か? 水、水!」
ゆっくりと大きく息をする彼に残った水を飲ませ、背中を撫でてやる。こうなるまで気がつかないなんて、最低だ。落ち込んだダリュカは悪かったと落ち込みながら彼の背中を撫でた。彼は弱々しく手を伸ばし、ダリュカの腕に乗せる。
「だいじょぶ、です。それより、もう、時間だから。いって」
すっかり枯れた声で少年は、ここを立ち去るようにと告げた。すでに大量のタネを吐き出したダリュカはもう、用済みということだろう。
取引は終わったのだ。
「悪かった」
そう告げて、彼を毛布に包み込む。水の入ったボトルを一本だけ彼の隣に残して、残りの荷物をまとめるとダリュカはその場を後にした。
「ダリュカ遅かったな!」
「本を戻すのに手間取っていた」
集合場所の食堂にはすでにキルシュカの姿があった。手に持った食器は城の使用人に託し、ウサギ獣人の輪の中へと入る。するとそこには今朝会った男の姿もあった。
「なんだ本好きはギリギリまで本読んでたのか」
「朝飯はゆっくり食べたからな」
「どうだった? 美味かっただろ!」
「今まで食った中で一番美味かった」
そうだろう、そうだろうと彼は耳をぴょこぴょこと動かしながらまるで自分のことのように喜ぶ。ダリュカが助かったと礼を言えば、そんな姿が珍しかったのかキルシュカは目を丸くして驚いた。
「なんだ、ダリュカ。知り合いができたのか?」
「今朝会って美味い飯教えてもらったんだ」
「本当はカレーも食ってもらいたかったんだけどな~」
「あそこで食う飯が一番うまいからいいんだよ」
「好きなものに囲まれてるから、ってことか」
「ああ」
この先、彼と食べた料理ほど美味い飯に出会うことはもうないのかもしれない。彼への愛おしさがあったからこそ、いつもの時間も楽しくて、大切な思い出に柔らかな色がつく。たとえそれが年月とともに色褪せるものだとしても、あの時の飯は美味しかったという記憶は忘れることはない。
「ダリュカって食べる場所こだわるタイプだったっけ?」
「あそこは特別な場所だからな」
「ふーん」
ダリュカが食事の場所にこだわらないことを知っているキルシュカは不思議そうに首を捻る。だが深く言及してくるようなことはしない。ただ「良いものが見つかって良かったな」と告げるだけ。
ダリュカの後にもう一人が到着したことで全員の集合が確認され、前に並ぶ者から順番に軽くチェックが入る。チェックといってもこの二日間で主に何をしていたかとか、立ち入り禁止区域に入らなかったかとかそんな質問である。
ダリュカの番になり、前の男と同じようにバングルを回収箱に入れられると思いきや、係の者はダリュカを見て眉間に皺を寄せた。怒っているというよりも、バングルとダリュカを見比べて何かを悩んでいるような様子である。
「バングルをチェックさせて頂きますね」
「どうぞ」
「……反応なし、か。もしかして王子を孕ませたりしましたか?」
「結局王子がどんな顔をしているのかすら分からなかったな」
最後まで彼は自身の名前を名乗らなかったし、ダリュカも聞かなかった。
万が一何かあっても知らなかったと押し倒せば良い。申告しないで困るのはこちら側だけだ。それも報奨金を取りっぱぐれるから。すでに報酬をもらっているダリュカにとっての損はない。
報酬なら、彼からもらったメモだけで十分なのだから。
「そう、ですか……。少し待っていてもらってもよろしいでしょうか」
「はい」
ダリュカの返事に納得いかないようで、少し離れたところで他の職員達と話し合う。小声で話してはいるが『図書館の』だの『それらしい報告はないので合意だろう』だの途切れ途切れに声が聞こえてくる。
どうやら直前まで交わっていたのでオメガの香りが移っていたらしい。発情香となるとウサギ獣人のダリュカでは判別が出来ないので確かめる術はない。
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