魔王の部下始めました

綾瀬海斗

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第一章〜召喚〜

召喚されし者

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目を開けると、白い部屋の中にいた。

「なんだったんだ…?」

体を起こして辺りを見渡すと、自分と同じような格好をした男女が床に倒れていた。



俺と同じように、昼休みを教室で過ごしていたやつらだ。

「おい、起きろ」

全員の無事を確認がてら、もう一度部屋の中を確認する。

教室にいたはずなのに、学校のものを思わせる物は何もない。

代わりに、装飾の施された両開きの扉と、床に魔法陣のようなものが描かれている。

他にも何か得られるものはないかと辺りを見渡していると、突然、扉が音をたてて開いた。

「な、なんだ…?」

思わず扉に目が行く俺達。

そこには、白いフードを羽織った眼鏡の男と鎧姿の人が2人立っていた。



「…多いですね。18人ですか」

一瞥するだけで人数を数えると、「衛兵、後は頼みましたよ」と、すぐさま出ていった。

「…なんだったんだ、あいつ…?」

あっという間に姿を消したことに驚いていると、今度は、眼鏡の男の両脇に立っていた人達が声をあげた。

「さあ、召喚者の皆様。お立ちください!」

「今から、謁見の間へと案内します」

丁寧な口調で立つことを促され、召喚された俺達は、謁見の間へと連れて行かれることになった。

どうやら、そちらで詳しい話をしてくれるようだ。



「私達…これからどうなるのかなあ」



ポツリと誰かが呟く。



「これがホントのことなら、私達…違う世界にいるってこと?」


「ドッキリじゃないの?」


「ばか、たかが学生の俺達に誰がこんな金がかかったようなドッキリ仕掛けんだよ」


「でも…」


「誘拐されたってこと?私達、家に帰れるの?」


 誰かの呟きから不安が伝播し、静かだった集団が騒がしくなっていく。


(…そりゃあ、そうだよな。

異世界召喚されて喜ぶやつは、俺みたいに漫画とか好きなやつだけだ。

普通は、こういう反応するよな…。)


周囲の騷めきとは違い、俺の心は冷えきっていた。

目覚めたばかりの時はまさか…!と思わず興奮しかけていたが、周囲の不安そうな様子を目の当たりにしたことで、召喚誘拐された現実を見つめてしまった。

「…これからどうなるんだろうな、俺達」

気付かないうちに自分自身も滅入っていたのだろうか、思わず口から言葉が出てしまった。

慌てて口を覆ったが、誰も聞いていなかったようで、辺りを見渡してもこちらを気にする生徒はいなかった。


いや、みんなも自分のことだけで手一杯で、気にする余裕がなかったと言うべきだろうか……


「……」


謁見の間に向かっているが、その答えは分かるのだろうか。

少しずつ見えてきた豪華な扉を見つめ、ゴクリと喉を鳴らす。











なぜ、俺達18人はこの世界へと、呼び出されたのか。




                  ーーーーその答えが、もうすぐ分かる。
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