あやかし担当、検非違使部!

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一章 その名は検非違使部

おかしな言葉(2)

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言葉が見つからずにただ唇を震わせていると、すっと掴まれていた右手が離される。

「驚かせてごめんね。探していた人が逢坂さんだろうとは昨日の時点で確信していたんだけど、なかなか二人で話す機会を得られなくて。もう、君を怖がらせる必要はない」

そう言って、彼は身を引いた。

すると不思議なことに、昨日から京香に押しつけられていた恐怖もすうっと波のように引いていく。
流した冷や汗と緊張は残るが、真緒を怖いとは思わなかった。

「うん、これでドキドキするのは俺だけになった」

また手を胸にあてて、彼はクスリと笑う。向こうはまだ、京香のことが怖いらしい。

「どうして、私が怖いの…? 本当に怖いの…?」
「まあ、あんまり本人と面と向かって怖いなんて言いたくないけど、そうだね。でも君のほうが不安だろう——急に妖怪が見えたりしたら」

間をおいてゆっくり告げられた台詞に、ドキリと京香は大きく目を見開いた。
相手の目はやや細められて、何か探っている様子である。

「なぜ、そんなことまで……」
「逢坂さんは、昔から妖怪が見えた人?」
「そんなわけ」

京香はすぐさま否定する。昔からどころか、最近見えるようになったものも幻だと思うようにしていた。
すると真緒は、京香の心を見透かしたかの如き質問をする。

「今でも妖怪の存在を疑っている?」
「あ、あれは、私の幻…」

私の幻だから、と言いかけて、京香は口をつぐんだ。
本当に幻ならば、彼と話が通じているのは不自然だ。
それに、視覚と聴覚ではっきり捉えた姿と声を思い出すと、幻と決めつけるのにも限界がきている。


妖怪は実在する——? 


そう自分に問いかけた時、

「よし、そういうことなら今から会いに行こう」

と真緒が言い出し、「ついてきて」と流れるような動作で京香の手をとる。

「ど、どこへ⁉」

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