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2、数年ぶりの再会

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 珍しく定時で仕事を終えた片岡裕也は、駅前の喫煙所で時間をつぶしていた。
 すでに一本目のタバコは灰になり、二本目が小さな赤い光を放っていた。
 喫煙所の中には、たまに見かける名前も知らない常連が数名。携帯電話を弄くったり、本を読んだり、あるいは外を眺めながら、思い思いに過ごしていた。


 事の始まりは、実家で暮らす兄から届いた一通のメールだった。

『裕也、久しぶり。今日、うちの子がそっちに遊びに行ったから、泊めてやってくれ。頼んだぞ』

 メールを読み返して、片岡は小さなため息を漏らした。
 普段連絡をよこさない兄からたまに連絡が来たと思えば、厄介ごとばかりだ。

 小さい頃から可愛がっていた甥っ子だから面倒を見るのは嫌ではないが、事前連絡くらいしてもバチは当たらないだろう、と心の中で悪態付いた。

 もし予定があって泊められなかったらどうするつもりだったのだろう?
 甥たちはまだ高校生だったはず。見知らぬ土地で一晩放置するには幼すぎる。

 そんなことを考えているうちに時間も経ち、片岡は甥たちの到着時刻に合わせて喫煙所を出て改札へと向かう。


 改札前に到着し、目当ての人物を探していると……。

「あ! おじさーん!」

 先に片岡を見つけた甥が声をかけ、片岡は声の方向に振り向いた。

 片岡の視線の先で手を振っていたのは、髪を金色に染めた活発そうな少年だ。
 そしてその隣には、メガネをかけた落ち着いた雰囲気の少年もいる。

 印象こそ真逆だが、ふたりはよく似た整った顔立ちをしていた。
 このふたりこそ片岡の待ち人――双子の甥たちである。

「よう! ちゃんと迷わず来れたみたいだな」
「おじさん、おひさしぶりです。行き方は僕がちゃんと調べてたから心配いりませんよ。まあ、夏樹だけなら迷ってたかもしれませんけどね」
「はーっ? 春人なんだよそれ。俺ひとりでも楽勝だっつーの! あ、おじさん、おひさしぶりっす」

 金髪の元気がいいのが夏樹。
 落ち着いているのが春人。

 高校生になっても、大まかな性格は昔と変わらず、片岡の記憶に残っているふたりのままだった。

「ははは。せっかく来たのにいきなりケンカするんじゃないよ。しかし、ふたりとも大きくなったな」
「そりゃそうだよ。おじさんが最後にうちに来たのって、俺たちがまだ小学生の時じゃん」

 言われて片岡が思い浮かべると、確かに5年以上、実家に立ち寄った記憶が無い。

「おじさんが来なくて俺寂しかったんだよ。お正月とかもっと帰って来てよ」
「夏樹、正直にお年玉欲しいって言ったらどうだ?」
「バ、バカ! そんなんじゃなく、俺は純粋におじさんとだな……」
「まあ、積もる話は後にしよう。ここで立ち話するのも他の人の迷惑だからな。長年渡してなかったお年玉の代わりに、なんでも好きなものを食わせてやるよ。何がいい?」

 数年ぶりに再会した甥ふたりを連れて、夕飯を求め片岡は繁華街へと歩き出したのであった。

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