ときめき☆えぶりでい

赤沼

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ときめき☆えぶりでい

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 「きゃはっ☆ つかまらないぞ~」
 「はははっ。待てよこいつ~」

 水平線に太陽が沈みかかっている砂浜に響いているのは、私たちの声と、静かに打ち寄せる波の音だけ。セピアに染まる海岸線も、私たちふたりだけの世界に思えた。

 私の名前は『涼風 凛』。元気な高校一年生☆
 彼の名前は『夏木 太陽』。かっこよくて優しい、私の自慢の彼氏です。

 まだ付き合って一ヶ月くらいの私たちだけど、一分一秒でも離れたくないくらい、超らぶらぶです☆
 そんな私たちの出会いは、今からちょうど三ヶ月前、桜の花も散り終わった春の日の事でした――。


☆☆☆☆☆


 「きゃ~☆ ちこくちこく~」

 入学式のバタバタも収まって、クラスにも馴染んできた安心感からか、私は思いっきり寝坊をしちゃって、パンを咥えながら慌てて学校に走っていたんだ。朝ご飯を食べてる時間なんてなかったからね。

 急ぎすぎて前をよく見てなかった私が悪いんだけど、曲がり角を勢い良く曲がっちゃったんだ。そしたら……ドカーーーンって、思いっきり人にぶつかっちゃった。

 「おうおう、ネーチャン。いきなりなにしてくれとんのじゃワレ? ネーチャンの咥えとったパンのジャムが、思いっきり服に付いちまったじゃねーかワレ? どうセキニン取ってくれるんじゃワレ?」

 なんと、私がぶつかったのは、とっても怖い不良さんだったんです。私は顔面がジャムまみれなのも忘れて、怖くておろおろするしかできなかったんです。

 「とりあえずクリーニング代10万払ってもらおうやないけ。ん? よう見たらネーチャン可愛い顔しとるやないか? なんちゅうか……甘味が滲み出る顔とゆーか……」

 滲み出るどころか甘味に覆われているんだけど……。でも、私は怖すぎてそんな突っ込みを入れる余裕もなかったの。不良さんの怪しすぎるエセ関西弁ですらスルーするほど。

 「そうやネーチャン。俺に一日付き合ってくれたら、クリーニング代は勘弁しちゃるで? どうや? ん?」

 不良さんは目が血走って鼻息が荒くなっていて、凄く怖かった。

 「キャーーーー! 誰か助けてーーーー!」
 「観念せんかいワレーーーー!」


 「ちょっと待ったーーーーーっ!」

 不良さんが私に襲い掛かってくる、まさにその時。どこからか、助けに答えてくれる声が響いてきたの。

 見ると、遠くから自転車に乗った男の子がこっちに近づいてきていた。同じ学校の制服だけど、あまり見覚えのない男子だった。必死になってママチャリをこいでくる彼は、まるで白馬に乗った王子様みたいで、私は一瞬にしてトゥンクトゥンクしちゃった。

 「はぁはぁはぁはぁ……そこまでだ。はぁはぁ……その子を離してもらおうか」

 こんな短距離ママチャリをこいだだけで息切れしているのは情けない気もするけど、恋する乙女アイには、そんな姿も、傷付こうとも姫を守ろうとする騎士ナイトに見えて、私のハートはどんどん高鳴っていっちゃった。

 「なんじゃいワレ? 関係ないヤツはすっこんどらんかい!」

 不良さんの怒りと共に放たれた右ストレートは、見事に彼の左頬にクリーンヒットして、彼の身体はマンガみたいに空中を飛んでいっちゃった。ママチャリに激突し、地面に打ちつけられ、彼はそのまま気絶しちゃったの。

 「なんじゃ? 威勢良く出てきたかと思ったら、弱いやっちゃのう? それじゃさっきの続きを……」
 「おい! そこでなにしてるんだ!」

 ちょうど巡回中だったお巡りさんが、騒ぎを聞きつけて駆けつけてくれてひと安心。不良さんは慌てて逃げて行って、私の貞操は無事に守られた。


☆☆☆☆☆


 それがきっかけで付き合い始めたのが、お巡りさんの太陽くん(48歳・)☆

 ちょっと加齢臭が気になるけど、それも彼のいい所☆
 走るたびにおなかに詰まったビールがぽよぽよ揺れて、水着姿がちょっと情けない太陽くんだけど、制服を着ている時は全然違うの。怖い人たちは近づいて来ないし、遊びに出かけてちょっとトラブルが起きても、太陽くんが職業柄持っている魔法の手帳をちょっと見せるだけで、大抵のトラブルはすぐに解決しちゃうから、本当に頼りになります☆

 私は太陽くんとの出会いから学んだんだ。ちょっとくらいかっこよくても、そんな事より権力ちからを持っている人のほうがずっといいって。そんな人をげっとするのに、私の魅力わかさは最高だって。太陽くんだって、簡単にげっとできました☆

 そんな感じで、彼と出会ってからの私は、ときめき☆えぶりでいです☆


 え? ……ママチャリの彼はどうしたって?
 わっかりませーん。だって、あんなに役に立たない人、興味ないですから☆


☆おわり☆
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