川石男(ロックマン)伝説

赤沼

文字の大きさ
8 / 22
第二章:川石男・『陸・海・空』三制覇?編

『空』

しおりを挟む


 うちの畑の近くに、携帯電話の電波塔がふたつあります。その内のひとつに、カラスが巣を作りました。カラスは獰猛で、近くに巣があるのは危険なんです。

 そんな状況で、お調子者のバイト【J】がロックマンをからかい始めました。

「ロックマンさん、あの電波塔に、カラスの巣があるの知ってます?」
「うん。よく見かけるよな」
「カラスって、光り物を集める習性があるから、もしかしたらっすよ」
「マジで!?」

 ロックマンの目の色が変わりました。相当マジです。
 これはダメなパターンだと思い、Jを止めることにしました。

「J、あんまりロックマンをからかうなよ。ロックマンも、冗談だから本気にしちゃダメだぞ」

 ロックマンは釈然としない様子でした。しかし、しぶしぶながらも仕事に戻り、その日はそのまま過ぎました。


 そして数日後。

 前の日、ロックマンが休みだったので、休日はなにをして過ごしたのか聞いてみました。すると、なぜかロックマンは口をもごもごさせ、気まずそうにしています。
 これはなにかあるな、と思い、詳しく聞きだすことにしました。すると……。


 ロックマン、カラスの巣を狙って電波塔に来ていたのです!
 それも、私たちに見つからないように、昼休みを狙っての犯行でした。

 ロックマンは、私たちが『ロックマンをのけ者にして、電波塔に登って光り物を独占するのでは?』と疑っていたようです。
 安心してください。どんなに頼まれたって登りませんから。

「登ろうとしたんだけど登れなかった……。だって……」

 電波塔のふもとまで来たロックマンですが、はしごに登り返しの鉄板があって、諦めて帰ったそうです。もし鉄板がなければ、安全な装備も付けずに、着の身着のままで登ろうとしていたようです。

 と、ここまで話を聞いて、私にひとつの疑問が浮かびました。

『……あれ? あの電波塔に登り返しの鉄板なんてあったかな……?』


 そんな疑問を抱きながら車を走らせ、電波塔まできたとき、私の疑問は解消されました。

 確かに電波塔に登り返しの鉄板はありました。
 。(カラスの巣電波塔には登り返しはありませんでした)

 ロックマンは命がけで、カラスの巣(光り物の宝庫)がない塔に登ろうとしていたのです。

 ……つまり、ロックマンが勘違いせずに登り返しのない塔に行ってれば、カラスを求めて天に伸びるハシゴを登ってたってことなんですよ……。




 『ロックマン電波塔登頂未遂事件』から数日経っても、まだロックマンは諦めきれない様子で、電波塔をちらちら見ています。このままじゃ本当に登りかねないと思った私は、ロックマンにひとつ提案をしました。

 「ロックマン……登る気だな? そんなに登りたいならもう止めない。だけどせめて、安全帯を買ってきて付けて登れよ」

 安全帯というのは、高所作業員が転落防止につける安全器具です。手すりや金具と自分の身体をつなぎ、万が一転落しても助かるという優れもの。

 私も24時間ロックマンを見ているわけではないので、私の目を掻い潜って登ろうと思えばいつでもできるのですよ。だったら、せめて命の確保くらいはしなきゃなりません。

 例えロックマンが、降りられなくて消防車で助けられようが、塔の管理会社の人に怒られようが、警察に捕まろうが、大人なんだから自己責任です。そこまで面倒は見きれません。

 私の提案に対するロックマンの答えは――



 「嫌だよ。買って登って、なにもなかったら、じゃないか」

 いや、だからね、その『登る』のに必要なんだけどなー……。
 電波塔、何十メートルあるか分からないけど、すっごく高いんだけどなー……。


 後日、カラスの電波塔に作業員が登っているのを見て、ようやくロックマンは諦めました。『作業員が登ってしまったから、全部取られた』と思ったようです。

 こうして、ロックマンの『空』制覇の野望は終わりました。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...