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第二章:川石男・『陸・海・空』三制覇?編
『空』
しおりを挟むうちの畑の近くに、携帯電話の電波塔がふたつあります。その内のひとつに、カラスが巣を作りました。カラスは獰猛で、近くに巣があるのは危険なんです。
そんな状況で、お調子者のバイト【J】がロックマンをからかい始めました。
「ロックマンさん、あの電波塔に、カラスの巣があるの知ってます?」
「うん。よく見かけるよな」
「カラスって、光り物を集める習性があるから、もしかしたら巣の中に宝石とかあるかもしれないっすよ」
「マジで!?」
ロックマンの目の色が変わりました。相当マジです。
これはダメなパターンだと思い、Jを止めることにしました。
「J、あんまりロックマンをからかうなよ。ロックマンも、冗談だから本気にしちゃダメだぞ」
ロックマンは釈然としない様子でした。しかし、しぶしぶながらも仕事に戻り、その日はそのまま過ぎました。
そして数日後。
前の日、ロックマンが休みだったので、休日はなにをして過ごしたのか聞いてみました。すると、なぜかロックマンは口をもごもごさせ、気まずそうにしています。
これはなにかあるな、と思い、詳しく聞きだすことにしました。すると……。
ロックマン、カラスの巣を狙って電波塔に来ていたのです!
それも、私たちに見つからないように、昼休みを狙っての犯行でした。
ロックマンは、私たちが『ロックマンをのけ者にして、電波塔に登って光り物を独占するのでは?』と疑っていたようです。
安心してください。どんなに頼まれたって登りませんから。
「登ろうとしたんだけど登れなかった……。だって……」
電波塔のふもとまで来たロックマンですが、はしごに登り返しの鉄板があって、諦めて帰ったそうです。もし鉄板がなければ、安全な装備も付けずに、着の身着のままで登ろうとしていたようです。
と、ここまで話を聞いて、私にひとつの疑問が浮かびました。
『……あれ? あの電波塔に登り返しの鉄板なんてあったかな……?』
そんな疑問を抱きながら車を走らせ、電波塔まできたとき、私の疑問は解消されました。
確かに電波塔に登り返しの鉄板はありました。
カラスの巣がないほうの電波塔に。(カラスの巣電波塔には登り返しはありませんでした)
ロックマンは命がけで、カラスの巣(光り物の宝庫)がない塔に登ろうとしていたのです。
……つまり、ロックマンが勘違いせずに登り返しのない塔に行ってれば、カラスを求めて天に伸びるハシゴを登ってたってことなんですよ……。
『ロックマン電波塔登頂未遂事件』から数日経っても、まだロックマンは諦めきれない様子で、電波塔をちらちら見ています。このままじゃ本当に登りかねないと思った私は、ロックマンにひとつ提案をしました。
「ロックマン……登る気だな? そんなに登りたいならもう止めない。だけどせめて、安全帯を買ってきて付けて登れよ」
安全帯というのは、高所作業員が転落防止につける安全器具です。手すりや金具と自分の身体をつなぎ、万が一転落しても助かるという優れもの。
私も24時間ロックマンを見ているわけではないので、私の目を掻い潜って登ろうと思えばいつでもできるのですよ。だったら、せめて命の確保くらいはしなきゃなりません。
例えロックマンが、降りられなくて消防車で助けられようが、塔の管理会社の人に怒られようが、警察に捕まろうが、大人なんだから自己責任です。そこまで面倒は見きれません。
私の提案に対するロックマンの答えは――
「嫌だよ。買って登って、なにもなかったら、買った分だけ丸損じゃないか」
いや、だからね、その『登る』のに必要なんだけどなー……。
電波塔、何十メートルあるか分からないけど、すっごく高いんだけどなー……。
後日、カラスの電波塔に作業員が登っているのを見て、ようやくロックマンは諦めました。『作業員が登ってしまったから、全部取られた』と思ったようです。
こうして、ロックマンの『空』制覇の野望は終わりました。
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