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第二章:川石男・『陸・海・空』三制覇?編
『陸』①、誕生! スネークハンター・ロックマン
しおりを挟む事件の発端は、本当に本当に何気ない事だったんです。
近くの国道沿いに、『マムシ屋』って店があります。扱う商品は、名前のとおり、蛇の『マムシ』です。
マムシをご存じの人も多いでしょうけど、日本を代表する毒蛇です。血清さえあれば死亡することは稀ですが、腕や足を切り落とした。なんて話も聞きます。
このマムシ屋、私が高校生の時にマムシを1匹5000円で買い取っていたという噂がありました。買い取ったマムシをマムシ酒に加工して売り出しているのです。
と、そんな話を、若いバイトにしていた時のことでした。
少し離れた所でうしろを向いて座っていたロックマンが、目をギョロリとギラつかせながら振り向いたのです。
「今の話……本当か?」
本当だよ。というかロックマン、なんで同世代なのに知らないの?
「そうか。いい情報をありがとう」
ロックマンは目を輝かせ、実にいい顔をしていました。人間って、なにか目標ができると、こんな顔をするのかもしれませんね。
この短い会話で、ロックマンはスネークハンターを目指す道を歩み始めたのです。
それからというもの、畑に蛇が出るたびにロックマンは仕事を投げ出し、必死で蛇を追いかけるようになりました。雇い主からしたら本当にいい迷惑です。
いくら注意しても聞かないので、『ロックマンの心配をして止める』作戦決行です。
「ロックマン、もしマムシに咬まれたら大変じゃないか。だから、もうマムシを追いかけるのはやめたほうがいいよ」
仕事上の注意を聞かないロックマンも、身を案じる友人は無下にはできないでしょう。
実際、本当にマムシは危ないので、こんなバカなマネは早くやめるべきです。
ところが、ロックマンの口からこぼれたのは、意外な言葉でした。
「大丈夫だよ。車にマムシ獲りの武器が積んであるから」
マムシ獲りの…………武器!?
え、なにそれ? すっごく見たいんですけど。
周囲のバイトを見回してみると、みんな気持ちは同じのようです。
もう説得なんてどうでもいいです。一刻も早く『武器』が見たかったので、持ってきてもらいました。
どや顔で持ってきた武器……それは、とても衝撃的なものでした。
えっと、木の枝ってあるじゃないですか。木の棒じゃないですよ。枝です。
棒はまっすぐだけど、枝ってちょっと曲線になっているの分かりますかね?
それです。
……え? 分からないですか?
だから、そのまんまの木の枝です。先端が二股に別れただけの木の枝です。
枝を振ると、細い先端がしなるのですよ。しなった二股がマムシの頭を捕まえる、と。
へー。なるほどー。よく考えてきたなー……。
などと言えるわけがない。
そんなものをどや顔で見せ付けられた我々の苦悩を分かっていただけるでしょうか?
笑いをこらえるのがどれほど大変だったか。
しかも、ロックマンの用意していた武器はこれだけではありませんでした。
えっと、ジュースのペットボトルあるじゃないですか。
それです。
1,5リットルの、○カリスエットの空ペットです。
使い方がよく分からない人もいるでしょうから解説します。
1、武器A(木の枝)で、マムシの頭を押さえつけます。
2、武器B(○カリ)を、押さえつけた頭にかざします。
3、すると、マムシが○カリの中へしゅるっと入って捕獲完了。
以上で、ロックマンのマムシ獲り講座を終わります。
……ああ、もう。ツッコミどころが多すぎて、どこから手をつければいいのか……。
「実はさ、この武器2つ目なんだ。最初の武器はもっと出来がよかったんだけど……」
まさかの2代目でした。
「最初の武器(笑)はどうした?」
ここまできたら、是非とも見てみたい。みんな気持ちは同じです。
「玄関に置いといたら、母ちゃんに捨てられたんだ……」
そりゃ、玄関に謎の木の枝があったら捨てるでしょう。私も捨てます。
見られないのは残念ですが、これはしかたがない。
「だから今度の武器は、捨てられないように常に車で持ち歩く事にしたんだ」
『武器』と書いて『あいぼう』と読む。ロックマンの真剣さが伝わってきます。仕事もそれくらい真剣にやってほしいものです。
ロックマンには、仕事よりもマムシ(5000円)のほうが大事なのでしょう…………クビにしてやろうかな……。
ふと、素朴な疑問が浮かんだので聞いてみました。
「そういえば、ロックマンってマムシ見分けられるの?」
私も蛇に詳しいわけではないので、マムシと他の蛇の区別がつけられるか分かりません。
このあたりには、マムシの他にも、シマヘビ、ヤマカガシ、アオダイショウといった、何種類もの蛇がいるのです。ロックマンはこれだけ真剣になっているのだから、見分け方も当然知っているでしょう。
「いや。判らないから、見つけた蛇を全部捕まえる」
買いかぶりすぎだったようです。
足りない知識。お粗末な武器。しかし、やる気だけはみなぎっています。
そんな、スネークハンター・ロックマンの活躍は、次回をご期待ください。
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