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俺と彼女の進む路(みち)
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「そういえば、彼女さんが高校卒業したらどうするんですか?」
弁当の中身を空にしたところで村川くんからそんな質問を投げかけられた。
「どうするって……普通に進学する予定だけど」
俺にとってはそんな質問、至極当たり前の返答しか返す事が出来ない。
「えっ?! 普通に進学って、まさか四年制の大学ですか?その間広瀬さんまた待つんですか?」
「……村川くんは一体なんでそこに疑問を持つんだ? 進学校に通っているんだから当然の流れだし、大学卒業しても彼女に就職の意思があれば俺は何も拒否する権利はない筈だけど」
「じゃあ! 大学入ったら一緒に住むとか、なんかしら進展はするんですよね?」
「どの大学に進学するかによるけど、この辺の大学に決まるとしても実家から通うんじゃないかな。電車で1時間なんて普通に通学圏内だし」
「マジっすか……」
俺の返答に村川くんは「信じられない」とでも言いたいような顔つきをしていた。
村川くんの場合大学卒業してすぐに籍を入れているから俺とは価値観が違うのかもしれないが、いくらなんでも驚き過ぎなんじゃないだろうか?
「俺、ジュンさんから『広瀬さんの彼女さんはずっと前から結婚したがってる』って聞いてたんですけど。マリッジリングの件もあったし」
「ああ、結婚したがってるってアレだから。小さい女の子が言うような『将来お嫁さんになる』ってレベルのやつ。あと、マリッジリングの件は誤解」
「誤解?」
「そうそう。そもそも彼女にはちゃんと学力に合った進学をさせてやりたいんだよ、俺は」
「学力に合った進学……ですか」
「俺は偏頭痛の所為で進学も就活もままならなかったからね。結果的にこの会社入ってよかったと思ってるし現状に満足してはいるんだけどさ」
俺は村川くんにそこまで語り、窓の外に目を向け深い溜め息を吐いた。
「彼女……夏実は幼い頃から賢い子だったんだよ……」
「パパみが溢れてますね、その発言」
俺の口から出た言葉も黄昏気味な雰囲気も相まってなのか、俺の耳に村川くんの呆れたような声が刺さってきた。
確かに俺は夏実の両親以上に学校の勉強について昔から口うるさく言っていたと思う。
他人から「パパっぽい」という感想が出るのも当たり前の流れなのだろう。
「別に夏実が秀才って大袈裟に褒めてる訳じゃないんだよ、通ってる高校は進学校だけどレベル的に上の下ってとこだし。でも幼少期から理解力が早い印象はあったかなぁ。運動はずっとバスケしてたし、文武両道で申し分ないというか」
「パパみを振り切って、完全に娘を想う父親になってますよ広瀬さんっ!」
窓の方を向き、村川くんの表情を直接見てないが俺には分かる。彼は確実に俺にドン引きしている。
「俺は夏実を赤ん坊から面倒見てる男だからね、父親の心境にもなるよ。学校の勉強だって小学生の頃からずっと見てやっているし」
「もしかして勉強見てるって現在進行形ですか?」
「何故か塾や予備校には行きたがらなくてね、俺は専門の家庭教師みたいなもんだ」
「それで時々駅前の本屋に寄るんですね。謎が解けましたよ」
「そう、今日は残業だろうけど帰りに参考書選んで夏実の家に寄るつもりなんだ」
「それはそれはご苦労様です」
会話を続けてもまだ窓の方を向いている俺を見ながら、村川くんは何を思っているんだろう?
でも俺は他人にドン引きされるのなんて本気でどうでもいいし、夏実の作ってくれた愛カノ弁当の事も頭から飛んでいってしまうくらい、今は彼女の将来が気に掛かっていた。
弁当の中身を空にしたところで村川くんからそんな質問を投げかけられた。
「どうするって……普通に進学する予定だけど」
俺にとってはそんな質問、至極当たり前の返答しか返す事が出来ない。
「えっ?! 普通に進学って、まさか四年制の大学ですか?その間広瀬さんまた待つんですか?」
「……村川くんは一体なんでそこに疑問を持つんだ? 進学校に通っているんだから当然の流れだし、大学卒業しても彼女に就職の意思があれば俺は何も拒否する権利はない筈だけど」
「じゃあ! 大学入ったら一緒に住むとか、なんかしら進展はするんですよね?」
「どの大学に進学するかによるけど、この辺の大学に決まるとしても実家から通うんじゃないかな。電車で1時間なんて普通に通学圏内だし」
「マジっすか……」
俺の返答に村川くんは「信じられない」とでも言いたいような顔つきをしていた。
村川くんの場合大学卒業してすぐに籍を入れているから俺とは価値観が違うのかもしれないが、いくらなんでも驚き過ぎなんじゃないだろうか?
「俺、ジュンさんから『広瀬さんの彼女さんはずっと前から結婚したがってる』って聞いてたんですけど。マリッジリングの件もあったし」
「ああ、結婚したがってるってアレだから。小さい女の子が言うような『将来お嫁さんになる』ってレベルのやつ。あと、マリッジリングの件は誤解」
「誤解?」
「そうそう。そもそも彼女にはちゃんと学力に合った進学をさせてやりたいんだよ、俺は」
「学力に合った進学……ですか」
「俺は偏頭痛の所為で進学も就活もままならなかったからね。結果的にこの会社入ってよかったと思ってるし現状に満足してはいるんだけどさ」
俺は村川くんにそこまで語り、窓の外に目を向け深い溜め息を吐いた。
「彼女……夏実は幼い頃から賢い子だったんだよ……」
「パパみが溢れてますね、その発言」
俺の口から出た言葉も黄昏気味な雰囲気も相まってなのか、俺の耳に村川くんの呆れたような声が刺さってきた。
確かに俺は夏実の両親以上に学校の勉強について昔から口うるさく言っていたと思う。
他人から「パパっぽい」という感想が出るのも当たり前の流れなのだろう。
「別に夏実が秀才って大袈裟に褒めてる訳じゃないんだよ、通ってる高校は進学校だけどレベル的に上の下ってとこだし。でも幼少期から理解力が早い印象はあったかなぁ。運動はずっとバスケしてたし、文武両道で申し分ないというか」
「パパみを振り切って、完全に娘を想う父親になってますよ広瀬さんっ!」
窓の方を向き、村川くんの表情を直接見てないが俺には分かる。彼は確実に俺にドン引きしている。
「俺は夏実を赤ん坊から面倒見てる男だからね、父親の心境にもなるよ。学校の勉強だって小学生の頃からずっと見てやっているし」
「もしかして勉強見てるって現在進行形ですか?」
「何故か塾や予備校には行きたがらなくてね、俺は専門の家庭教師みたいなもんだ」
「それで時々駅前の本屋に寄るんですね。謎が解けましたよ」
「そう、今日は残業だろうけど帰りに参考書選んで夏実の家に寄るつもりなんだ」
「それはそれはご苦労様です」
会話を続けてもまだ窓の方を向いている俺を見ながら、村川くんは何を思っているんだろう?
でも俺は他人にドン引きされるのなんて本気でどうでもいいし、夏実の作ってくれた愛カノ弁当の事も頭から飛んでいってしまうくらい、今は彼女の将来が気に掛かっていた。
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