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本編
★20歳になったその時に10
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※要注意ページです。気分の悪いエピソードが含まれますのでお気をつけ下さい。
このページを読み飛ばす場合は「向日葵さん(亮輔)の性的トラウマには辛い過去が起因している」と頭に入れて下されば次ページ以降が読みやすくなると思われます。
———•———•———•———•———•———
「雨の日は、学校が終わってすぐに亮輔は遠野家へ行き遠野皐月と落ち合い……ほんの少しだけの触れ合いをして、時間が来たら笠原家で家庭教師の時間をとる。
浅はかではあったけれど、初恋に溺れた亮輔にとっては実に有意義な時間で幸せを感じていたようだよ。好きな相手とキス出来るなんて男子中学生にとってはたまらないだろうからね。好きな絵画も放って1人の女に溺れ……欲を出した。それが『15歳の誕生日』でもあった」
俊哉の話は向日葵さんの性的トラウマの内容へと移る。
「遠野皐月は亮輔の『一つになりたい』という願いを受け入れる対応をとり、亮輔を喜ばせた……けれどその頃既に医学生に知られてしまっていたんだよ男子中学生が遠野皐月に執拗に触れているという事をね。
医学生は激怒した。雨の日を狙って中学生が遠野皐月の肌を知るなんて裏切りとも感じただろう」
「!!」
医学生に向日葵さんの存在がバレた……それは、皐月にあってはならない事だった筈だ。
「医学生の激怒は意外にも遠野皐月に向かわなかった。『男子中学生の願いを叶えてやっていい』と遠野皐月に言ったらしい。雨が降っていなくとも、9月23日の夜は男子中学生に譲った。ただし、条件つきで」
「条件……ですか?」
朝香の喉がゴクリと鳴る。
(向日葵さんのトラウマ……)
向日葵さんから聞かされていた「騙された」を知る朝香は、俊哉の次に出てくるであろう言葉を予測し慄いた。
(騙されたセックスの、実態……)
冷たい汗が背筋に流れていく。
「条件は4つあった。一つ目は亮輔とセックスする時間帯を明確に指定する事」
俊哉は深呼吸をして……ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「二つ目は行為の映像を撮影する事」
「三つ目は、行為の最中亮輔に目隠しをして…………
亮輔の陰部に、遠野皐月の女性器ではなく……潤滑液を満たした玩具を挿入させ、射精させる事」
「…………」
「最後の四つ目は……偶然を装い、玩具であった点や撮影をしていた点亮輔にバラす事」
「 」
四つ目の条件とやらに、朝香は完全に言葉を失った。
「遠野皐月は忠実に、それらをやってのけたんだ」
「…………」
「亮輔が裸のまま呆然としているのを遠野皐月は何のフォローをする事なく……自分だけ衣服を整えた後、撮影機材を大事そうに抱えながら遠野家を出た。
亮輔曰く、家の前に自動車が停止した音がその時聞こえたそうだ。
遠野皐月はそれに乗って医学生が住むタワーマンションへ移動したのだろう……そしてその後、医学生と遠野皐月はその撮影内容を」
「そんな……そんなぁ……」
信じられなかった。
信じたくはなかった。
「そんなの……そんなのって、ない……」
朝香は泣くのをやめられず、頭を抱える。
「医学生は男子中学生の純朴な恋心をズタズタに引き裂きたかったんだ。
そうすれば遠野皐月を諦めるだろうし、性的トラウマを植え付けられるから。
そして撮影内容は何度もタワーマンションの一室で再生された。遠野皐月と2人だけで観るに飽き足らず、学生仲間も呼んで亮輔の小柄で貧弱な肉体や成長過程の最中である陰部を指差して揶揄っていたそうだ。そんな中遠野皐月は無表情で眺め続け、医学生の望む言葉を台本を読むかのように発していたらしい」
(嘘だと……嘘だと言って。タチの悪い冗談だって……そう言ってほしい)
朝香は心の中でそう願ったが……そんなわけはない。俊哉の声色からして、それらは全てが「真実」
「真実」は、向日葵さんにトラウマを植え付けるのに充分な出来事で
(酷いよ……そんな事って、ないよ……)
薬物や暴力行為で心身共にボロボロであったとしても、皐月がとった行動は最低最悪なものであった。
「俺がここまでの内容を知ったのは、遠野皐月が亡くなった後だ。当時はまだ玩具を使われた事しか知らなくてね……まさか亮輔がここまで傷つけられ辱めを受けていたなんて想像すらしてなかったし言葉を失ったよ」
俊哉が絶句するのも当然である。
「でも亮輔はね……そんな辱めに負けなかったんだ。
セックスやキスが出来なくても、二度と遠野皐月に触れられなくても、医学生の魔の手から救い出したかった。性的トラウマを抱えてしまっても気持ちだけは強く持っていたんだ。
誕生日の後、遠野家で過ごす事をやめたけれど家庭教師の時間は続く。家庭教師の合間に当たり障りのない会話をしたり一緒に食べたりする行為に留め遠野皐月を思い遣るようにしたんだよ」
「えっと…………彼は……恋を諦めたんですか?」
朝香が搾り出した質問に、俊哉は慈愛溢れる眼差しをこちらへ向けて
「恋は諦めたかどうかは俺も分からない。けれど、遠野皐月の幸せを日々祈っていたのは間違いないよ薬物の件は知らないからね。
姉の修行が終わって……こちらへ帰ってきて、寂しい遠野家がまた明るくなったらきっと遠野皐月に幸せが訪れる。その頃亮輔は高校2年を迎える筈だから、家庭教師の契約が終わってもそのくらいの時期になったらまた遠野家を訪れて『先生良かったね』と笑顔で言えるくらい大人の心を持ちたかったのだそうだよ」
向日葵さんから直接聞いたらしい内容を混ぜながら「希望」の話を紡ぐ。
「そうなれば……良かった、ですよね」
しかし、「希望」は叶わなかった。
「そうだね……そうなれば、皆の救いになっただろうね」
俊哉は微笑を崩さない。
……崩さぬまま
「亮輔の入試、最終日にあんな事が起きなければ……きっと」
俊哉の目からポロリと一粒、涙が落ちて
「なんだろうね……現実は、無情だよ」
直後に落ちたその言葉が……辺りの空気を静かにさせる。
このページを読み飛ばす場合は「向日葵さん(亮輔)の性的トラウマには辛い過去が起因している」と頭に入れて下されば次ページ以降が読みやすくなると思われます。
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「雨の日は、学校が終わってすぐに亮輔は遠野家へ行き遠野皐月と落ち合い……ほんの少しだけの触れ合いをして、時間が来たら笠原家で家庭教師の時間をとる。
浅はかではあったけれど、初恋に溺れた亮輔にとっては実に有意義な時間で幸せを感じていたようだよ。好きな相手とキス出来るなんて男子中学生にとってはたまらないだろうからね。好きな絵画も放って1人の女に溺れ……欲を出した。それが『15歳の誕生日』でもあった」
俊哉の話は向日葵さんの性的トラウマの内容へと移る。
「遠野皐月は亮輔の『一つになりたい』という願いを受け入れる対応をとり、亮輔を喜ばせた……けれどその頃既に医学生に知られてしまっていたんだよ男子中学生が遠野皐月に執拗に触れているという事をね。
医学生は激怒した。雨の日を狙って中学生が遠野皐月の肌を知るなんて裏切りとも感じただろう」
「!!」
医学生に向日葵さんの存在がバレた……それは、皐月にあってはならない事だった筈だ。
「医学生の激怒は意外にも遠野皐月に向かわなかった。『男子中学生の願いを叶えてやっていい』と遠野皐月に言ったらしい。雨が降っていなくとも、9月23日の夜は男子中学生に譲った。ただし、条件つきで」
「条件……ですか?」
朝香の喉がゴクリと鳴る。
(向日葵さんのトラウマ……)
向日葵さんから聞かされていた「騙された」を知る朝香は、俊哉の次に出てくるであろう言葉を予測し慄いた。
(騙されたセックスの、実態……)
冷たい汗が背筋に流れていく。
「条件は4つあった。一つ目は亮輔とセックスする時間帯を明確に指定する事」
俊哉は深呼吸をして……ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「二つ目は行為の映像を撮影する事」
「三つ目は、行為の最中亮輔に目隠しをして…………
亮輔の陰部に、遠野皐月の女性器ではなく……潤滑液を満たした玩具を挿入させ、射精させる事」
「…………」
「最後の四つ目は……偶然を装い、玩具であった点や撮影をしていた点亮輔にバラす事」
「 」
四つ目の条件とやらに、朝香は完全に言葉を失った。
「遠野皐月は忠実に、それらをやってのけたんだ」
「…………」
「亮輔が裸のまま呆然としているのを遠野皐月は何のフォローをする事なく……自分だけ衣服を整えた後、撮影機材を大事そうに抱えながら遠野家を出た。
亮輔曰く、家の前に自動車が停止した音がその時聞こえたそうだ。
遠野皐月はそれに乗って医学生が住むタワーマンションへ移動したのだろう……そしてその後、医学生と遠野皐月はその撮影内容を」
「そんな……そんなぁ……」
信じられなかった。
信じたくはなかった。
「そんなの……そんなのって、ない……」
朝香は泣くのをやめられず、頭を抱える。
「医学生は男子中学生の純朴な恋心をズタズタに引き裂きたかったんだ。
そうすれば遠野皐月を諦めるだろうし、性的トラウマを植え付けられるから。
そして撮影内容は何度もタワーマンションの一室で再生された。遠野皐月と2人だけで観るに飽き足らず、学生仲間も呼んで亮輔の小柄で貧弱な肉体や成長過程の最中である陰部を指差して揶揄っていたそうだ。そんな中遠野皐月は無表情で眺め続け、医学生の望む言葉を台本を読むかのように発していたらしい」
(嘘だと……嘘だと言って。タチの悪い冗談だって……そう言ってほしい)
朝香は心の中でそう願ったが……そんなわけはない。俊哉の声色からして、それらは全てが「真実」
「真実」は、向日葵さんにトラウマを植え付けるのに充分な出来事で
(酷いよ……そんな事って、ないよ……)
薬物や暴力行為で心身共にボロボロであったとしても、皐月がとった行動は最低最悪なものであった。
「俺がここまでの内容を知ったのは、遠野皐月が亡くなった後だ。当時はまだ玩具を使われた事しか知らなくてね……まさか亮輔がここまで傷つけられ辱めを受けていたなんて想像すらしてなかったし言葉を失ったよ」
俊哉が絶句するのも当然である。
「でも亮輔はね……そんな辱めに負けなかったんだ。
セックスやキスが出来なくても、二度と遠野皐月に触れられなくても、医学生の魔の手から救い出したかった。性的トラウマを抱えてしまっても気持ちだけは強く持っていたんだ。
誕生日の後、遠野家で過ごす事をやめたけれど家庭教師の時間は続く。家庭教師の合間に当たり障りのない会話をしたり一緒に食べたりする行為に留め遠野皐月を思い遣るようにしたんだよ」
「えっと…………彼は……恋を諦めたんですか?」
朝香が搾り出した質問に、俊哉は慈愛溢れる眼差しをこちらへ向けて
「恋は諦めたかどうかは俺も分からない。けれど、遠野皐月の幸せを日々祈っていたのは間違いないよ薬物の件は知らないからね。
姉の修行が終わって……こちらへ帰ってきて、寂しい遠野家がまた明るくなったらきっと遠野皐月に幸せが訪れる。その頃亮輔は高校2年を迎える筈だから、家庭教師の契約が終わってもそのくらいの時期になったらまた遠野家を訪れて『先生良かったね』と笑顔で言えるくらい大人の心を持ちたかったのだそうだよ」
向日葵さんから直接聞いたらしい内容を混ぜながら「希望」の話を紡ぐ。
「そうなれば……良かった、ですよね」
しかし、「希望」は叶わなかった。
「そうだね……そうなれば、皆の救いになっただろうね」
俊哉は微笑を崩さない。
……崩さぬまま
「亮輔の入試、最終日にあんな事が起きなければ……きっと」
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