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【番外編】私のお父さんとお母さん
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しおりを挟む翌朝。
りょーくんとの約束通り、朝ごはんをテレビ前のガラステーブルの上に並べてソファに腰掛けながら一緒に録画しておいた昨夜の番組を観た。
「俺……あーちゃんのお父さん、ちょこっと覚えてるよ」
「えっ?」
「背が高くて体の大きい人だったよね……先生のお葬式の時、お父さんはお姉さんを必死に止めてて俺もそのくらいしか覚えてないけど」
「そっか……そうだよね。りょーくんは皐月さんのお葬式の時に私達と会ってるんだもんね」
「うん、お父さんのイメージはそういう意味で強く記憶に残ってたんだけど、お母さんは全く記憶になかったから『お母さんはあーちゃんそっくりなんだな』って今日知れて嬉しいよ」
「ありがとう……」
お母さんの登場やオムライスの紹介が済んだところで、りょーくんはニコニコ顔で私に感想を言ってきたので、私も嬉しい気持ちでいっぱいになる。
「お母さんもあーちゃんと同じくらいの身長かな? 小柄な感じだね」
「うん、そうなの。155㎝だから私よりちょっと高いくらいでほぼ一緒なんだ」
「オムライスもすっごく綺麗な仕上がりで、あーちゃんのオムライスそっくりだった!」
「その感想は照れちゃうなぁ……」
地元でも広く知られてるオムライスの出来と一緒だという意味合いの事を大好きなりょーくんに言われてしまうと流石に照れちゃって、私はテレビの電源をオフにする。
「いやいや、あーちゃんが小さな頃からあのオムライスを食べて育って、俺にも美味しいオムライスを作ってくれてる事に感謝してるし、親子の繋がりっていうのを感じるよ」
「親子の繋がり……かぁ」
「羨ましいし、微笑ましいなぁ。あーちゃんがとっても良い子だっていうのがテレビ画面からも伝わるよ」
りょーくんは家庭環境で色々あったから、言葉の中に出てきた「羨ましい」に胸がキュッと締め付けられて、素直に喜べなくなる。
彼はその私の表情を察して「純粋に褒めてるんだよ」と言いながら私の頭を優しく撫でた。
「お母さんの作るふんわりとしたオムライスが作れて、お父さんの作る珈琲焙煎のセンスも持ってるあーちゃんは最強だね!」
「えっ?」
りょーくんは私を元気付ける意味で、明るく私にそう言ったんだろうけど……私はつい、言葉に詰まる。
(ヤバい。りょーくん、大きな勘違いをしている……)
テレビに映っていたオムライスは紛れもなくお父さんの作ったオムライスで、画面には一切映っていないけれど両親共にあのスタジオに居たんだと、娘の私は知る出来た。
けれどもあの喫茶店のオムライスを食べた事が無いりょーくんにとっては、あの放送はそのように映ってしまうのは仕方のない事でもあった。
「どうしたの?あーちゃん」
私がつい漏らしてしまった「えっ?」にりょーくんは不思議がり、首を傾げている。
「あっ……ううんっ! なんでもないなんでもないっ!!」
私は慌てて首を左右に振って、急いでお皿の片付けを始めた。
(どうしよう……オムライスを作っているのはお母さんじゃなくてお父さんだって、りょーくんに伝えるタイミングを失っちゃったぁ)
しかもりょーくんはあともう一点、大事な部分を勘違いしちゃってて、すぐに訂正出来る空気ではなかった。
(その誤解を解くとしたら、りょーくんを私のお父さんお母さんに合わせる時になるかもしれない……でもそれっていつの事になっちゃうんだろう!?
っていうかそのシチュエーションって、私とりょーくんとがもっともっと親密な仲になる前提での事じゃないかな? 私、りょーくんとそんな仲まで進展出来るのかなぁ……)
昨夜はお父さんお母さんの事でハラハラ心配していたのに、今では別の意味でドキドキハラハラ心配しちゃっていた。
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