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朝に香る
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「じゃが! これだけは信じてつかあさい!! 上原さんも儂も、娘を亮輔くんに当てがおうなんて打算的な想いまではなかったんじゃ!
あくまで儂は娘の恋の応援。亮輔くんの心まで操ろうだなんて烏滸がましいと思いよる。上原さんは密かに朝香と亮輔くんが仲良うなるのを夢見とったようじゃが、儂はそんなの夢にも思うちゃいけんって思っておった……」
お父さんの話を要約すると、私の恋の応援の為にりょーくんの第一志望の大学をオススメとして紹介したりりょーくんの住む部屋の隣を契約したりはしたものの「恋愛が成就するかは本人に任せる」というスタンスだったみたいだ。
「従兄は……俺があーちゃんに恋をするのを密かに夢見てた……んですか?」
私が初めて聞いた話だから、りょーくんが今まで知らなかったのも当然だ。
彼は私以上に驚いていて目を見開かせていた。
「上原さんは朝香の顔をほとんど覚えとらんかった……が『村川氏の御息女でしたら亮輔にとって良いお相手である事は間違いない』って連絡を取り合う度に褒めてくれての。
最初はただのお愛想かとスルーしとったんじゃが、亮輔くんがパートナーを変える度に心配の溜め息をついておってのぅ……朝香が大学受験を控える頃には『早く春にならないか、早く朝香さんが亮輔の隣に住んでくれないか、早く2人が出会ってくれないか』と、そればかりぼやいておった……」
そしてお父さんの口から想像する上原さんの様子に私もりょーくんも肩を震わせる。
(上原さん……基本は良い人なんだけど中身がやっぱりヤバい人だ)
「それでも儂は上原さんに『期待はせんでつかあさい』と何べんも言うたんじゃ。隣同士に住んで同じ大学に通うとはいえ、仲良うなるとは限らんしまして恋仲になるとも……」
上原さんのフォローも含んでいるお父さんのその口ぶりは、一見ものすごく恐縮してるようにも感じたんだけど
「亮輔くんはイケメンじゃし。イマドキな格好を好まんオタク気質の朝香がそんなイケメンさんと付き合えるなんて思うとらんかったし」
次いで出た発言に私はムカッとくる。
「ちょっ……!! お父さん、それ失礼だから! 私にっ!!」
(まぁ、私も大学2年の4月までりょーくんと付き合えるなんて想像すらしてなかったけど!!)
自分が田舎っぽいコーヒーオタクだという自覚があるからお父さんを100%責められない。
でも父親なんだからちゃんと娘の恋は責任持って応援して欲しかったという思いも少なからずある。
(御膳立てされすぎな恋愛は確かに嫌だけど……でも…………)
私の頭の中で複雑な想いが駆け巡り、また口がタコみたいに尖っていく。
りょーくんはそんな私の表情をチラ見してクスッと笑ったかと思うと、真面目な表情にすぐ戻して立ち上がり、お父さんに向かって深々と頭を下げた。
「村川さんのお心遣い、大変感謝申し上げます。おかげ様で朝香さんと巡り合う事が出来ました。
加えて朝香さんがこんな人間を好いてくれ、一緒に住もうと決心して下さった事を有り難く感じ日々幸せを感じております」
「りょーくん……」
「亮輔くん……」
お父さんと初対面した時のような誠実な態度を見せる彼の様子に、私もお父さんも感嘆の声を上げる。
「朝香さんのおかげで救われました。今の自分は朝香さんの存在なくては考えられません。
……これ以上望んではならないと自覚をしてはいるのですが、大学を卒業し就職出来た暁には朝香さんに結婚を正式に申し込もうと考えております」
———のに、りょーくんの衝撃発言に私もお父さんも言葉を失う。
「今すぐにとは、贅沢を言いません。
私が一人前の社会人になれましたら、朝香さんとの結婚を許してはくれないでしょうか?」
それは、私本人の前で私のお父さんに直談判をするという……「私に彼女を下さい」宣言だった。
あくまで儂は娘の恋の応援。亮輔くんの心まで操ろうだなんて烏滸がましいと思いよる。上原さんは密かに朝香と亮輔くんが仲良うなるのを夢見とったようじゃが、儂はそんなの夢にも思うちゃいけんって思っておった……」
お父さんの話を要約すると、私の恋の応援の為にりょーくんの第一志望の大学をオススメとして紹介したりりょーくんの住む部屋の隣を契約したりはしたものの「恋愛が成就するかは本人に任せる」というスタンスだったみたいだ。
「従兄は……俺があーちゃんに恋をするのを密かに夢見てた……んですか?」
私が初めて聞いた話だから、りょーくんが今まで知らなかったのも当然だ。
彼は私以上に驚いていて目を見開かせていた。
「上原さんは朝香の顔をほとんど覚えとらんかった……が『村川氏の御息女でしたら亮輔にとって良いお相手である事は間違いない』って連絡を取り合う度に褒めてくれての。
最初はただのお愛想かとスルーしとったんじゃが、亮輔くんがパートナーを変える度に心配の溜め息をついておってのぅ……朝香が大学受験を控える頃には『早く春にならないか、早く朝香さんが亮輔の隣に住んでくれないか、早く2人が出会ってくれないか』と、そればかりぼやいておった……」
そしてお父さんの口から想像する上原さんの様子に私もりょーくんも肩を震わせる。
(上原さん……基本は良い人なんだけど中身がやっぱりヤバい人だ)
「それでも儂は上原さんに『期待はせんでつかあさい』と何べんも言うたんじゃ。隣同士に住んで同じ大学に通うとはいえ、仲良うなるとは限らんしまして恋仲になるとも……」
上原さんのフォローも含んでいるお父さんのその口ぶりは、一見ものすごく恐縮してるようにも感じたんだけど
「亮輔くんはイケメンじゃし。イマドキな格好を好まんオタク気質の朝香がそんなイケメンさんと付き合えるなんて思うとらんかったし」
次いで出た発言に私はムカッとくる。
「ちょっ……!! お父さん、それ失礼だから! 私にっ!!」
(まぁ、私も大学2年の4月までりょーくんと付き合えるなんて想像すらしてなかったけど!!)
自分が田舎っぽいコーヒーオタクだという自覚があるからお父さんを100%責められない。
でも父親なんだからちゃんと娘の恋は責任持って応援して欲しかったという思いも少なからずある。
(御膳立てされすぎな恋愛は確かに嫌だけど……でも…………)
私の頭の中で複雑な想いが駆け巡り、また口がタコみたいに尖っていく。
りょーくんはそんな私の表情をチラ見してクスッと笑ったかと思うと、真面目な表情にすぐ戻して立ち上がり、お父さんに向かって深々と頭を下げた。
「村川さんのお心遣い、大変感謝申し上げます。おかげ様で朝香さんと巡り合う事が出来ました。
加えて朝香さんがこんな人間を好いてくれ、一緒に住もうと決心して下さった事を有り難く感じ日々幸せを感じております」
「りょーくん……」
「亮輔くん……」
お父さんと初対面した時のような誠実な態度を見せる彼の様子に、私もお父さんも感嘆の声を上げる。
「朝香さんのおかげで救われました。今の自分は朝香さんの存在なくては考えられません。
……これ以上望んではならないと自覚をしてはいるのですが、大学を卒業し就職出来た暁には朝香さんに結婚を正式に申し込もうと考えております」
———のに、りょーくんの衝撃発言に私もお父さんも言葉を失う。
「今すぐにとは、贅沢を言いません。
私が一人前の社会人になれましたら、朝香さんとの結婚を許してはくれないでしょうか?」
それは、私本人の前で私のお父さんに直談判をするという……「私に彼女を下さい」宣言だった。
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