大精霊に愛されて

鬼灯

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泣き疲れたのか、イザヤの腕の中で眠ってしまったサーシャを愛しげに頬に接吻し、静かにベッドに寝かせる。



「ようやく、泣けたか」



そう呟くと、イザヤはくつりと笑う。それはサーシャに見せる笑みではなく、どこか愉悦を含むものだった。



(脈ありだな)



イザヤはサーシャにとって、泣ける場所。それは言わば安心し、頼る事が出来ると、無意識に示している。
眠るサーシャの唇を指で辿る。
まだ味わってない柔らかさに、うっとりする。



(吾のものだ)



ゆらりと、イザヤの影が揺れる。それに釣られる様に、空気も揺れる。
それに震撼する様に外の木々がざわめく。
カッチェが、イザヤの傍にやって来る。


「淑女の部屋に、無断で入るな」



「悪い。だが、イザヤ様……気が揺れている。少し落ち着け。誰もサーシャ様を奪いはしない」



そう言うと、カッチェはイザヤの肩を叩く。それに気を悪くするでもなく、一つ溜息をつく。



「悪い」



そう言うと、カッチェを促してサーシャの部屋から出て行く。
ふうと息を吐き出す。



「お前が気を揺らすと、大地が震撼する。何事かと」



「悪い、カッチェ。気を付ける」



「サーシャ様はイザヤ様を好いている。大丈夫だ」



言い聞かせる様に、カッチェが言う。それにイザヤは嬉しそうに笑う。
自分が感じるだけでなく、他者から見てもそうならば、確実だ。
イザヤは笑う。それは何よりイザヤにとって大事な事であった。










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