大精霊に愛されて

鬼灯

文字の大きさ
上 下
20 / 26

20

しおりを挟む
夢の中で、サーシャは幸せを感じていた。
そんなサーシャを見つめるイザヤは、微笑んでいた。淑女の部屋に音もなく入り込むのは、いけない事だとイザヤにも分かっている。だがサーシャの顔を、見ずにはいられなかった。
幸せで、サーシャが幸せそうに微笑んでいるのか確かめたくてたまらなかった。
その温かさを確かめる。



「サーシャ………」



囁くような声で呼ぶ。
サーシャの瞼が僅かに痙攣したかのように動き、その瞳がゆっくりと開く。
その様子を見守り、イザヤは微笑む。




「イ、ザヤ、様」



舌足らずな呼び掛けに、イザヤは笑みを深める。




(愛おしいな)



イザヤはサーシャを見つめる。
そんなイザヤの様子に、サーシャは頬を染めた。



「恥ずかしいですわ」



こう言うと、サーシャはシーツで顔を隠してしまう。その仕草にイザヤは笑う。



「愛しいサーシャ。顔を見せてくれ」



優しい声で呼ぶ。
おずおずと顔を出すサーシャに、イザヤは手を貸す。ゆっくりとシーツをめくり、サーシャの顔を見る。
少し困り顔をしたサーシャに、イザヤは微笑む。



「サーシャ、これを食べてくれないか」



そう言いながら取り出したのは、見たことのない果物らしき物だった。



「………これは」



「サーシャを精霊にする為のものだ」



「精霊に」



「そうだ。吾はサーシャと共に生きたい。吾と添えるだけの時間が持てる」




「…………そうですか」



「怖いか」



俯いてしまったサーシャに、イザヤは心配そうに見つめる。




「少し………でも、いただきます」




きっぱりと、サーシャは言う。




「イザヤ様と共に、生きると決めたのですもの」




微笑む。



「吾の手から、食べてくれ」



微笑み返しながらイザヤは言う。
それに驚き目を見張るサーシャだったが、少し困り顔をしながら頷く。
サーシャの口元に淡い光を纏った果物らしき物を持っていく。サーシャは口を開け、それを躊躇いなく食べたのである。







しおりを挟む

処理中です...