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1st season 第二章
023 鉱山の町
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岸田和夫のヲタク力はたいした事が無かった。
雑魚である。
ニワカと呼ばれても致し方ない。
故に、火薬を作るにはトイレの土が必要という事は知っていただが、それをどう加工すれば火薬になるのかは知らなかった。
よって、銃火器無双するカインの夢はここに潰える。
しかしながらユリアという後衛アタッカーを失い、なおかつNTRトラウマでパーティーを組む気にもなれぬカインにとって、遠距離攻撃手段の確立は人生の目標うんぬんよりも余程重要だった。
無論、エルベの森に籠もって、ビッグボア職人としてその生を終えるのであれば、空蝉とメテオストライクの悲劇だけでもそこそこの暮らしは出来るのだろうが、やはりケモミミのひとつも撫でる旅に出てみたかった。
いや実際のところエルダーサの街にもケモミミの皆さんは居るのだが、そういう事では無いのだ。
そんなわけでカインはダンライザ鉱山で修行の身とあいなった。
「何故?」
金属加工を学ぶ為に決まっているでは無いか?
銃がダメならクロスボウ。
常識だ。
「その辺の武器屋に作らせればいい?」
まったく、たった今説明したでは無いか、岸田はニワカであったと。
クロスボウという存在は知っていても、コンパウンドクロスボウの細部まで知っているわけがない。
とすれば試行錯誤しながら開発していかなければならず、コンパウンドどころかクロスボウすら作った事の無い武器屋に頼めるわけがない。
それ以前にアイテムボックスを用いての連射運用をするわけだから、少なく見積もっても100本単位、そんな大量に制作を依頼する資金がカインにあるわけがないでは無いか?
えっ?「誰が誰に説明している?」
それはほら、待ちに待った本編の記念すべき門出、最初くらいは芸術の神、このアルケーアがその幕をあけても良いであろう?
(うーん、一つ二つならまだしも、均一規格の滑車を量産するのは無理だな)
つまるところが弓矢の威力というのは弦を引くエネルギーがどれだけ大きいかという所に集約される。
威力を求めるなら弓は際限なく大きくなり、弦も太くなる。
が、弦の張られる機構に滑車を組み込むことで、比較的ラクに引け、かつコンパクトなのに高威力という究極の弓が生まれる。
問題点は、今、まさにカインが悩んでいるように、構造が複雑化してしまう事だ。
(やっぱ簡単に作れるクロスボウを量産して、コンパウンドは今後の課題としておくべきか?)
カインには戦闘系のギフトが無い。
当然弓術も無い。
つまり、弓はどれだけ練習しても本職のギフト持ちに遠く及ばない。
しかし、クロスボウなら信長の火縄銃が如く、引き金を引けば矢が飛んでいく。
そして矢をつがえた状態で大量にI.B.ストックしておけば、連射速度だけは本職のソレを超えられるはず。
命中精度が求められるシーンであれば、バイポッドを装備したコンパウンドを伏せ撃ちすればそれなりのものとなるだろうし、城塞兵器サイズの超特大ギア巻き上げ式を用意しておけば、超長距離の大威力攻撃手段とする事もできるはず。
なお、この世界にも城塞兵器としてのバリスタは存在するが、弓術ギフトが優秀過ぎるため、通常サイズの弩は普及していない。
散々悩みに悩んだ挙げ句、カインは完全自作を諦め、お世話になっているドワーフ鍛冶師に泣きついた。
ドワーフは種族特性として土属性の上級魔法で、金属の変形を行える者が多い。
鍛冶師を目指すわけでなし、誰かのツテがあるでなし、にも関わらず弓を作る技術を教わりたいという人族の若者を、ナルドは当初相手にしなかった。
そもそも弓は木工分野、それも武器屋が作るもの。武器屋でも無く、金物道具専門のナルドに聞かれても困るのだ。
にも関わらずカインは、ナルドに食い下がった。
下手くそな図面を描き、ナルドを井戸まで引きずって、動滑車が力を倍にする原理をコンコンと説き、工房中のガラクタをアイテムボックスに収納して、採掘に行く際の荷物持ちとしていかに役立つか売り込んだ。
すべての説明が理解できたわけでは無かったが、ドワーフの好奇心がくすぐられたナルドは、もしも発明に成功したら、ナルドも販売する権利を貰うことを条件に、カインの逗留を許したのだった。
(簡単に出来ると思ってたけど、結構時間くっちゃったなー)
滑車の製作を魔法的手法に頼る事にしたカインは、ラティアの言葉を思い出して嫌な汗をかく。
「白金貨一枚分使い尽くすまで、私の躰はカイン様のものです。枯れ行くこの身に独り寝は寂しいですが、どうぞ私の事など気にせず、気が済むまで修行していらして下さい」
現在カインは17歳、ドワーフの町であるダンライザ鉱山に来て半年になる。
レベルも21となり冒険者ランクもEに上がっていた。
(普通の娼館がまぁ銀貨1~2枚。白金貨1枚分っていうと・・・え"っ、5千~1万回?????)
口では「束縛しない」というラティアの強烈なプレッシャーを感じながら、カインはコンパウンドクロスボウを量産してゆく。
カインが試作したコンパウンド機構の性能に愕然としたナルドは、本業そっちのけで大小様々なコンパウンドボウを作りまくった。
脚をかけて弦を引く事が出来るクロスボウよりも、通常の弓の方がコンパウンド化の恩恵は大きい。
追加でカインが教えたスタビライザーとオープンサイトが装備されたソレは、悪ノリした二人によって『カイナルド』と名付けられる。
エルフが誇る長弓よりも長射程高精度な高級弓として、やがてその名を世界に轟かせ、ナルドが勝手に貯えておいたカインの取り分がとんでもない額に膨れ上がって行く事となるなど、この時のカインは想像だにしていなかった。
ようやく百一本のクロスボウを完成させたカインは、別れを惜しむナルドにお礼を言い、エルダーサへの帰路についた。
雑魚である。
ニワカと呼ばれても致し方ない。
故に、火薬を作るにはトイレの土が必要という事は知っていただが、それをどう加工すれば火薬になるのかは知らなかった。
よって、銃火器無双するカインの夢はここに潰える。
しかしながらユリアという後衛アタッカーを失い、なおかつNTRトラウマでパーティーを組む気にもなれぬカインにとって、遠距離攻撃手段の確立は人生の目標うんぬんよりも余程重要だった。
無論、エルベの森に籠もって、ビッグボア職人としてその生を終えるのであれば、空蝉とメテオストライクの悲劇だけでもそこそこの暮らしは出来るのだろうが、やはりケモミミのひとつも撫でる旅に出てみたかった。
いや実際のところエルダーサの街にもケモミミの皆さんは居るのだが、そういう事では無いのだ。
そんなわけでカインはダンライザ鉱山で修行の身とあいなった。
「何故?」
金属加工を学ぶ為に決まっているでは無いか?
銃がダメならクロスボウ。
常識だ。
「その辺の武器屋に作らせればいい?」
まったく、たった今説明したでは無いか、岸田はニワカであったと。
クロスボウという存在は知っていても、コンパウンドクロスボウの細部まで知っているわけがない。
とすれば試行錯誤しながら開発していかなければならず、コンパウンドどころかクロスボウすら作った事の無い武器屋に頼めるわけがない。
それ以前にアイテムボックスを用いての連射運用をするわけだから、少なく見積もっても100本単位、そんな大量に制作を依頼する資金がカインにあるわけがないでは無いか?
えっ?「誰が誰に説明している?」
それはほら、待ちに待った本編の記念すべき門出、最初くらいは芸術の神、このアルケーアがその幕をあけても良いであろう?
(うーん、一つ二つならまだしも、均一規格の滑車を量産するのは無理だな)
つまるところが弓矢の威力というのは弦を引くエネルギーがどれだけ大きいかという所に集約される。
威力を求めるなら弓は際限なく大きくなり、弦も太くなる。
が、弦の張られる機構に滑車を組み込むことで、比較的ラクに引け、かつコンパクトなのに高威力という究極の弓が生まれる。
問題点は、今、まさにカインが悩んでいるように、構造が複雑化してしまう事だ。
(やっぱ簡単に作れるクロスボウを量産して、コンパウンドは今後の課題としておくべきか?)
カインには戦闘系のギフトが無い。
当然弓術も無い。
つまり、弓はどれだけ練習しても本職のギフト持ちに遠く及ばない。
しかし、クロスボウなら信長の火縄銃が如く、引き金を引けば矢が飛んでいく。
そして矢をつがえた状態で大量にI.B.ストックしておけば、連射速度だけは本職のソレを超えられるはず。
命中精度が求められるシーンであれば、バイポッドを装備したコンパウンドを伏せ撃ちすればそれなりのものとなるだろうし、城塞兵器サイズの超特大ギア巻き上げ式を用意しておけば、超長距離の大威力攻撃手段とする事もできるはず。
なお、この世界にも城塞兵器としてのバリスタは存在するが、弓術ギフトが優秀過ぎるため、通常サイズの弩は普及していない。
散々悩みに悩んだ挙げ句、カインは完全自作を諦め、お世話になっているドワーフ鍛冶師に泣きついた。
ドワーフは種族特性として土属性の上級魔法で、金属の変形を行える者が多い。
鍛冶師を目指すわけでなし、誰かのツテがあるでなし、にも関わらず弓を作る技術を教わりたいという人族の若者を、ナルドは当初相手にしなかった。
そもそも弓は木工分野、それも武器屋が作るもの。武器屋でも無く、金物道具専門のナルドに聞かれても困るのだ。
にも関わらずカインは、ナルドに食い下がった。
下手くそな図面を描き、ナルドを井戸まで引きずって、動滑車が力を倍にする原理をコンコンと説き、工房中のガラクタをアイテムボックスに収納して、採掘に行く際の荷物持ちとしていかに役立つか売り込んだ。
すべての説明が理解できたわけでは無かったが、ドワーフの好奇心がくすぐられたナルドは、もしも発明に成功したら、ナルドも販売する権利を貰うことを条件に、カインの逗留を許したのだった。
(簡単に出来ると思ってたけど、結構時間くっちゃったなー)
滑車の製作を魔法的手法に頼る事にしたカインは、ラティアの言葉を思い出して嫌な汗をかく。
「白金貨一枚分使い尽くすまで、私の躰はカイン様のものです。枯れ行くこの身に独り寝は寂しいですが、どうぞ私の事など気にせず、気が済むまで修行していらして下さい」
現在カインは17歳、ドワーフの町であるダンライザ鉱山に来て半年になる。
レベルも21となり冒険者ランクもEに上がっていた。
(普通の娼館がまぁ銀貨1~2枚。白金貨1枚分っていうと・・・え"っ、5千~1万回?????)
口では「束縛しない」というラティアの強烈なプレッシャーを感じながら、カインはコンパウンドクロスボウを量産してゆく。
カインが試作したコンパウンド機構の性能に愕然としたナルドは、本業そっちのけで大小様々なコンパウンドボウを作りまくった。
脚をかけて弦を引く事が出来るクロスボウよりも、通常の弓の方がコンパウンド化の恩恵は大きい。
追加でカインが教えたスタビライザーとオープンサイトが装備されたソレは、悪ノリした二人によって『カイナルド』と名付けられる。
エルフが誇る長弓よりも長射程高精度な高級弓として、やがてその名を世界に轟かせ、ナルドが勝手に貯えておいたカインの取り分がとんでもない額に膨れ上がって行く事となるなど、この時のカインは想像だにしていなかった。
ようやく百一本のクロスボウを完成させたカインは、別れを惜しむナルドにお礼を言い、エルダーサへの帰路についた。
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